【私ぬき小説】
今回は【私ぬき小説】――「私」が出てこない一人称小説の話です。
日本には「私小説」というジャンルがあります。「私は――」という書き方をする一人称小説で、たいていが作者の実体験に基づいて内面を語るものです。
実体験に基づいてかなり写実的に描写するものですから、これは作者自身の話ではないかと錯覚するくらい(実際に作者がモデルの場合もあるようですが)リアリティがあります。
これが登場したときの衝撃は凄かったでしょう。「私は――」「私は――」と語るものですから「
当時、「私は――」と語らない一人称小説はたくさんあったと思われます。
志賀直哉『城の崎にて』を読んでみて下さい。「私」が登場しません。(「自分」ということばはあります。)しかし内面を描く一人称小説だと思います。いや――これはエッセイだろというひともいますが。
実は人称代名詞を日本語はあまり使いません。「私は――」は英語圏では当たり前の語り方ですが、日本語ではそうした主語はしばしば省略されます。
「昨日、映画を観に行ってきた」
「誰が?」
「私」
「誰が?」なんて訊いたら変なヤツだと思われるでしょう。「私」に決まっているからです。だから「私」は省略。
ついでに「あなた」も省略されます。
デートをすっぽかした男の子に対して女の子が言うセリフ――
「どうして来なかったの?」
もしこれを「どうしてあなたは来なかったの?」と英語風に主語をつけると大変なことになります。他の人が来たことになってしまいます(笑)
「どうしてあなたは来なかったの? …………山田くんは来たのに」
「あ? 山田と行ったのかよ!」
けんかになること間違いなし。
ついでに言うと「彼」も「彼女」も日本語会話にはほとんど出て来ません。
「――と先生が言ってたよ」
「課長がおっしゃっていた――」
「先生」も「課長」も英語圏では「彼」、「彼女」を使うでしょう。
英語圏では「先生」ですらHeとかSheにします。
「――と彼が言うのですよ」
というセリフを言うのはアメリカ帰り?
日本語会話文では「彼」「彼女」はたいてい交際相手のことです。
話がそれてしまいましたが、「私は――」と語らない一人称小説。探すとカクヨムでも見かけます。
私も志賀直哉『城の崎にて』を真似して書いたことがあります。
ズバリ――
『長崎にて――』 はくすや
https://kakuyomu.jp/works/16818093084913713516
これ、小説じゃなくて紀行文だろ! エッセイだろ!
という声が聞こえてきそうです。
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