第2話相談所

結論だけ言うと。お兄さんは見つからなかった。それもそうだ手がかりがお兄さんの立ち去っていった方向のみなのだから見つからないに決まってる。



周りを見るとどうやら先程いた大通りから外れてしまったようだ。

大通りにあった商業施設の裏口や室外機、飲食店換気口からの不愉快な温風が肌に当たる。それらから少し離れると骨董品屋や、昼間でまだ開業してないカラオケバーといった、私の年の人間が到底近寄らないであろう場所に辿り着いてしまった。



そんな場所まで来てしまった私は諦めて交番か先ほどのお店に届けようと思ったが、改めて拾った封筒を見る。


その時、私は思いついた。この封筒に書かれてる「久我相談所」って場所をスマートフォンで調べたら場所が分かるのでは?なんなら下にさらに小さく番号も書いてあるんだから連絡すれば良いのでは?と思った。

そもそもこれがあのお兄さんのものだと言う確証はない訳だし、だったら、この封筒に書かれている場所に連絡するが一番て手っ取り早い。そう思い、スマートフォンに番号を打ち込むが一瞬手が止まる。

もしも、この連絡先が自分が関わるには危険すぎる存在だったら?と言う考えが頭によぎる。そう思うと番号押す指が止まってしまう。

一度、ネットでどんな場所なのかを調べても遅くないと思い、その場でネットにて検索をかけてみる。



検索結果は久我相談所なる場所はちゃんと存在した。サイトもあった。


サイトに飛んでみるとクリーム色の背景に黒字で大きく久我相談所と書かれたホーム画面が出てきた。法律事務所かな?と思った。

しかし、どこかが変だったのだ。サイトのどこにも法律事務所などの記載がなかった。ましてや具体的になんの相談をする場所なのかの記載がなかったのだ。あまりにもシンプルを通り越した不思議で怪しいサイトだった。端にはメニュー欄があり、メニューには料金と予約メールとアクセスしかなかった。しかも料金のページには「内容により変動あり」と書かれており、「三千円〜」としか書かれてなかった。


「うっわ。怪しすぎる…。」


思わず心の声が漏れてしまった。

それでもちちゃんと事務所はあるようだったので場所を調べてポストなり、入り口なりに追いて置けばいいや。

私はアクセスのページに飛び、場所を確認しで愕然とした。


今、現在私がいる場所のすぐ近くというか、すぐ横の古めかしく、コンクリートで出来た外壁には蔦植物が根を張っているような雑居ビルがあった。そのビルの一角にその事務所があったのだ。

恐る恐るその雑居ビルの入り口に近づく。


すると、中のエントランスがあり、そこには案内板があった。上に「すめらぎビル テナント一覧」と書かれてあり、各階にあるテナント入ってる店舗の案内が書かれていた。

ビルは五階建てであり、その五階に「久我相談所」の文字があった。

 早速その久我相談所に向かおうとするが、この雑居ビルにはエレベーターがなく、階段で上階に行くようだ。少し、いや、大分面倒だと思ってしまったがここまで来たのだから先程飲んだカフェオレ分のカロリー消費だと思って私は階段を上る。


 階段を上ると、外観とは裏腹に内装は古めかしながらも綺麗に保てれていた。先ほどのエントランスの案内板にもいくつかの店舗が入ってるのを思い出す。意外と管理は行き届いているようだった。


 五階にある相談所には思いの外早くついた。


五階には二つの扉が左右に分かれてあった。

一つはよくあるスモークガラスが上半分に嵌め込まれたスチールか何かで出来た扉。スモークガラス部分に「久我相談所」と書かれていた。は反対側の扉も同じ作りだがスモークガラスの先は暗く、張り紙で「関係者以外立ち入り禁止」と書かれていた。


 私は目的地の相談所までたどり着いたので当初の目的の拾い物を扉の前に置こうとした瞬間、その扉が勢いよく開け放たれた。その時、扉に私額が勢いよくぶつかってしまった。


 「あだっ!」


 あまりの痛みに額を押さえてその場で蹲る。

我ながらもう少し女子らしい声をあげれないものかと思ったが、この時の女子らしい声とは逆に何なんだと自分に突っ込んでしまった。


 「んあ?…あ、君は…。」


 呑気な声と共に聞いたことのある声が聞こえた。つい先程聞いた声だ。

 額の痛みを堪えながら声の主を確認するとやはり、喫茶店で会ったお兄さんだった。


 「どうしてこんなところに?」


 先に扉をぶつけた事について謝れよ。と思いつつ持ってきた封筒を差し出した。

「この封筒。お兄さんのでしょ?さっきのカフェで落としていきましたよ。」

そういうと、お兄さんの涼しげな目が少し見開いた。

「わざわざ届けに来てくれたのか?」

と言うので私は頷いて答える。


「…っはは。これは丁度いいや。お礼を言うよ。中に入って。まぁ、今来客が来てるが気にしないで。」

そう何か含みのある様な笑いと物言いをしてお兄さんは親指で後ろを指すようなジェスチャーをする。


 私は警戒心剥き出しにしながら中を少し覗く。

 中は内装は床も壁もコンクリ剥き出しの内装で、玄関入ってすぐに室内の全体が分かりそうだが、目の前にいるお兄さんでそれが叶わない。お客さんの姿も確認できなかった。


「おい。客が待ってるんだから早くしろ。それに警戒せずとも君みたいな子どもなんかに手ェ出さねーよ。」

 「なっ…!!わかりましたよ!!」



 自分の目の前でウロウロとする私に苛立ったのか、お兄さんは煽って催促をする。私はその喧嘩を売られたような発言にカチンと来てしまい。、まんまとお兄さんの口車にのって相談所の中にお邪魔させていただく事になった。



 

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