第2話 素直になろうよ
「ひめちゃん的に、私のどこが負けヒロインだと思った?」
「そうだね。まあ正直、挙げるとキリがないんだけど――」
「えっ!? 嘘。そんなに?」
「もう言ってしまえば、生き様が負けヒロインだと思ってるし」
「相当じゃん」
「相当だよ。だから、克服しようって提案したんだし。じゃないと、言わないよ」
「そっか。ひめちゃんはいつも優しいね」
「そんな。優しいわけじゃないよ。これも自己満みたいなもんだし」
「それでも私なんかのために手を尽くそうとしてくれるのは嬉しいし、優しいなって思うよ」
カフェの席で私たちは向き合いながら、真剣に話し合う。
親友である足軽こよみの負けヒロイン属性について。
負けヒロインの脱却を目指すには、負けヒロイン属性を掻き消すことがなによりも重要であると思った。
「とりあえず負けヒロイン属性を打ち消す必要があるよね」
「そしたら将生を私のものにできるかな」
「できるよ絶対に! なんていう無責任なことは言えないけど。でも可能性はうんと上がると思う」
こよみは突然私の手を握ってきた。まるで包み込むように。
綺麗な手だ。しっかり手入れされている。傷もシミもシワもない。まるで赤ちゃんのようなすべすべは手。改めてほんと綺麗な人だなって思う。正直、私が檜山将生であるのならば、問答無用でこよみを選ぶ。きっと、親友贔屓なんだろうけど。この世の誰よりも一番可愛くて綺麗だと思っている。
「ひめちゃん、神」
「神ではないが? 私は普通の人間だが?」
なぜか神扱いされたので首を横に振って否定する。神なんてそんな大それたものではない。よっぽどこよみの方が神だろ、と私は言いたい。
意味のわからない水掛け論が始まりそうなので、その言いたい気持ちは心の中に留めておく。
「あーあ」
こよみは私の手を包み込んだまま、こてんと机に顔を伏せる。額を机に擦り合わせる。
「なに?」
「もしも私が男だったらさー、こんなに恋煩いしなくて済んだのかなって」
「またあまりにもイフな話だね」
「だってもし私が男なら、ひめちゃんのことが好きで、ひめちゃんに告白してたし」
唐突な愛の告白。
大胆不敵なセリフはヒロインさんの特権である。
「そんなもしもの話を語ったってしょうがないよ。こよみか私が急に男になることは無いんだから」
「わかってるけどさー」
むっと不満げに頬を膨らませながら、顔を上げた。
その表情でさえ様になるのは本当にヒロインの特権。というか、顔のいい人の特権。
「まあ真面目な話だけどさ、こよみはまず素直になるところから始めたらいいと思うんだよね。負けヒロイン要素は沢山あるよ。びっくりするくらい。こよみは負けヒロインのデパートなんだけどさ」
「言い過ぎ」
「事実だから。負けヒロインの擬人化が足軽こよみ」
「言い過ぎ」
ぎぎぎと睨まれるが、間違ったことは一切言っていない。
負けヒロインの要素を片っ端から掻き集めたのが彼女だ。
「ただじゃあ今すぐ改善出来ることはどれだけあるかって言われると、正直少ない。髪色とかは無理だし、幼馴染という関係性を今更崩すことだってできない。声を変えることもできないし、スタイルだってそう簡単に変えられない。胸を大きくしろって言ったってそんなのできるならとっくにしてるだろうし。色々考えると、素直になってツンデレとおさらばするのが一番手っ取り早くて、効果的だと思うんだよね」
「今私さらっと罵倒された気がする。気がするんだけど……」
こよみは胸に手を当てて、目を細める。
気にしてるかなって思ったからさらっと流したのに。
「というかなんで効果的だと思うの?」
胸に手を当てたままのこよみは不思議そうに問う。
「え、だって、私に対するこよみめっちゃ可愛いから」
素直になれないことを思い悩む素直なこよみ。
可愛すぎるからね。
「…………」
なぜか言葉を無視して、俯くようにストローを咥え、ちゅるちゅるとナントカチョコカントカバニラナントカフラッペを飲んでいた。
「だから、素直になろうよ」
◆◇◆◇◆◇あとがき◆◇◆◇◆◇
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