『先生、好きすぎて困ってます!』
みずきるい
第1話 片思いのスパイラル
高校2年生の彩花(あやか)は、今日も朝から心臓がバクバクしていた。理由はただ一つ――3年B組の担任で、数学教師の佐藤悠真(ゆうま)先生、28歳。学校中の生徒から「イケメンすぎる」「優しすぎる」と大人気の彼に、彩花は本気で、ガチで、めっちゃくちゃ恋していた。
「はぁ…今日も先生の授業、3時間目か…!」
彩花は鏡の前で、制服のリボンを何度も結び直しながら自分を鼓舞する。「よし、今日こそ先生とちょっとでも話す! 『あの公式、ちょっとわからなくて…』って質問しに行こう!」
でも、心のどこかでわかっていた。そんな普通のアプローチじゃ、佐藤先生の“オキニ”になんてなれない。だって、先生は全校生徒のアイドルなのだ。質問しに来る女子生徒なんて、毎日行列ができるレベル。彩花のライバルは、ほぼ学校中の女子。
佐藤先生の数学の授業は、彩花にとって「聖なる時間」だった。黒板に数式を書きながら、先生が時折見せる優しい笑顔。生徒の質問に真剣に答える姿。チョークの粉でちょっと白くなった指先まで、彩花には全部がキラキラして見えた。
「よ、よし…今日こそ!」
授業後、彩花は意を決して先生のデスクに近づいた。手に持ったノートには、わざと間違えた(でもバレない程度の)問題が書かれている。
「せ、先生! この…二次関数の問題、ちょっとわからなくて…」
佐藤先生はメガネを軽く直しながら、彩花のノートを覗き込んだ。「お、彩花ちゃん、いいところに目をつけたね。この問題、ちょっとコツがいるんだよ。一緒に解いてみる?」
「い、一緒に!?」
彩花の頭の中はすでに花火大会状態。先生の声、先生の匂い、先生の…全部が近すぎる! なんとか平静を装いながら、彩花は必死に頷いた。
その後も、彩花は小さな作戦を積み重ねた。授業を真剣に聞いて、廊下で会えば「先生、おはようございます!」とちょっとだけ明るく挨拶。時には「先生、この前おすすめしてた本、読みました!」と、さりげなく話しかける。でも、心の中ではいつも葛藤していた。
「こんなんじゃ、先生の特別にはなれない…。でも、気持ちがバレたら、先生に迷惑かけちゃう…!」
ある日、彩花の小さな幸せに暗雲が立ち込めた。同じクラスの人気者、リサが佐藤先生にグイグイ話しかけているのを目撃してしまったのだ。
「先生~、この問題、放課後じっくり教えてくださいね♪」
リサのキラキラした笑顔と、先生の「ハハ、いいよ、リサちゃん」と答える声。彩花の心は一気にジェットコースター状態に。
「うそ…リサ、先生のオキニ狙ってる!? いや、でも、リサは誰にでもフレンドリーだし…でも、でも、先生がリサのこと好きになったら…!」
その夜、彩花はベッドでゴロゴロしながら悶々と悩んだ。「私、もっと目立たなきゃ…でも、先生に気持ちバレたら終わりだし…。どうすればいいの~!?」
そんな彩花に、転機が訪れた。ある日、図書室で本を探していた彩花は、偶然、佐藤先生とばったり遭遇。先生は手に分厚い数学の専門書を持っていた。
「彩花ちゃん、こんな時間に図書室? 熱心だね。何か面白い本見つけた?」
「え、えっと…! 実は、先生がこの前話してた『数学の美しさ』って本、探してて…」
本当は偶然見つけただけだったけど、彩花は咄嗟にそう答えた。すると、先生の目がキラッと光った。
「へえ、彩花ちゃん、数学の美しさに興味あるんだ? じゃあ、これ読んでみなよ。ちょっと難しいけど、面白いよ」
先生が貸してくれたのは、先生自身の本。ページの端には先生のメモ書きまであって、彩花の心はまたもや大爆発。
「せ、先生の…直筆メモ…! これ、宝物じゃん!」
それから、彩花は少しずつ佐藤先生と話す機会を増やしていった。本の感想を伝えたり、授業の後に「この公式、めっちゃ面白かったです!」と熱く語ったり。先生も、彩花の熱意に少しずつ反応してくれるようになった。
「彩花ちゃん、最近ほんと数学にハマってるね。なんか、教えるの楽しくなってきたよ」
その言葉に、彩花は心の中でガッツポーズ。まだ“オキニ”には程遠いかもしれないけど、先生の笑顔が自分に向けられる瞬間が増えただけで、彩花の毎日はキラキラ輝き始めた。
でも、彩花にはまだ大きな壁がある。先生への恋心は、どんどん大きくなっていくのに、15歳の年齢差と「生徒と教師」という関係が、彼女の心にブレーキをかける。
「先生、私のこと、ただの生徒じゃなくて、ちょっとでも特別って思ってくれる日、来るかな…?」
彩花の片思いは、まだまだ始まったばかり。ライバルのリサや、他の生徒たちの熱い視線をかわしつつ、彼女は自分なりの「先生のオキニ」になる方法を探していく。時にはドキドキ、時にはハラハラ、そして時には笑える小さな事件が、彩花と佐藤先生の間に起こる予感。
果たして、彩花は先生の心を掴めるのか? それとも、片思いのまま、青春の甘酸っぱい思い出として胸にしまっていくのか?
このラブコメの結末は、まだ誰も知らない―
つづく...
みずきるいからの一言
青春の片思いを描いたこの物語は、彩花のドキドキと成長を丁寧に表現しました。佐藤先生との関係は、教師と生徒の枠内で純粋な日常の一コマとして描いています。フィクションですが、恋心の輝きが皆さんの心に響けば幸いです。彩花の冒険をこれからも見守ってください。ありがとうございました!
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