第7話 回転寿司

 佐藤陸が初めて合コンに参加してから2日後の日曜日の夜、彼は現在、春風心優と夕食を共にする約束していた回転寿司屋に来ていて。


 佐藤陸が店の前に辿り着いてから数分後、春風心優も店の前に現れて、彼女と一緒に店内に入り、2人は座背に机を挟んで向かい合って座ると。


「えっと、春風さん、今日は夕食に誘ってくれてありがとう」


 そう言って、佐藤陸はその場で頭を下げると。


「気にしないで下さい、何度も言いますが、これは佐藤くんに助けてもらった事に対するお礼なのですから」


 春風心優はそう言ったので。


「いや、まあ、そうだけど、一応奢ってもらう以上これ位は言わないといけないと思ったんだ……ただ、今更だけどやっぱり自分の分のお金は俺が出そうか?」


 佐藤陸が改めてそう聞くと。


「いえ、大丈夫です、今日は私が全額奢るので佐藤くんはお金の事は気にせずに好きなだけ食べて下さい、そうしないと私の気持ちが収まりませんから」


 春風心優はそう言ったので、


「分かった、それじゃあ春風さん、今日はご馳走になるな」


 佐藤陸がそう言うと。


「はい、ご馳走になって下さい」


 彼女は笑顔でそう答えた。


 その後、佐藤陸は注文パネルを手に取ると、寿司を何皿か注文してから、春風心優にパネルを手渡すと。


 彼女もパネルを受け取って寿司を注文すると、それから暫くして寿司が乗った皿が届いたので、2人は自分たちの分の皿を手に取ると。


「それでは佐藤くん、どうぞお召し上がり下さい」


 春風心優はそう言ったので。


「ああ、いただきます」


 佐藤陸はそう言って、最初にマグロの寿司を箸で取ってから醤油を付けてそれを食べると。


「佐藤くん、お味はどうですか?」


 春風心優はそんな事を聞いて来たので、佐藤陸は、


「……ああ、美味しいよ、春風さんも食べたらどうだ?」


 彼女に向かってそう言うと。


「そうですね、いただきます」


 春風心優もそう言って、イクラの寿司を箸で掴むと醤油を付けて、小さな口で寿司を半分ほど食べると。


「久しぶりにお寿司を食べましたが、すごく美味しいです」


 満面の笑みを浮かべて彼女はそう言ったので。


「そうか、それならこの店を選んでよかったな」


 佐藤陸がそう言うと。


「はい、そうですね、佐藤くんもお寿司を美味しく食べられている様ですし、このお店を選んで良かったです」


 彼女はそう言って、残り半分のイクラの寿司を食べていたのだが、


「……春風さんって可愛いよな」


「っつ!? ごほっつ」


 彼女の姿を見ていた佐藤陸がそう呟くと、彼女はその場で少し咽せてから慌ててお茶を飲んだので。


「えっと、春風さん大丈夫か?」


 佐藤陸がそう聞くと。


「……ええ、大丈夫です、ただ、佐藤くん急に何を言うのですか、びっくりしたじゃないですか」


 少しだけ不機嫌そうな表情を浮かべて春風心優はそう言ったので、佐藤陸は、


「悪かったって、ただ、寿司を美味しそうに食べている春風さんは何と言うか小動物みたいに可愛かったので、つい口に出たんだ」


 彼女に向かってそう言うと。


「……もう、何を言っているんですか、佐藤くん、私は別に可愛く無いですよ」


 そう言って、彼女はその場で少し俯いたので、


「いや、そんな事は無いと思うけど……確かに今の春風さんは地味な格好をしているからあまり目立って無いけど、眼鏡を外してちゃんとオシャレをすれば普通に可愛くなると俺は思うけどな」


 佐藤陸はそう言ったが、春風心優は顔を上げると満面の笑みを浮かべながら。


「佐藤くん、折角お寿司屋さんに来ているのですから私の容姿の話しより、もっと別のお話をしませんか?」


 春風心優はそう言ったので、


「えっ、ああ、そうだな……」


 佐藤陸はそう言って、彼女とどんな話をしようか少し考えてから。


「そういえば春風さん、この前の合コンの時に少し気になる事があったんだけど、聞いても良いか?」


 佐藤陸がそう聞くと。


「はい、良いですよ、何ですか?」


 彼女はそう答えたので、佐藤陸は、


「春風さんは一昨日の合コンではずっとお茶を飲んでいてアルコール類は一切頼んで無かったけど、酒とかは苦手なのか?」


 少しだけ気になっていた事を彼女に聞いてみると。


「苦手かどうかは分かりません、私はまだ二十歳になっていないので、お酒は一度も飲んだ事がないのです」


 彼女がそう言ったので、


「成程な、そういう事なら仕方がないな」


 彼がそう答えると。


「はい、正直に言うと飲んでみたい気持ちはあるのですが、後数ヶ月の辛抱なので我慢します」


 そこまで言うと、彼女は一度言葉を切ってから。


「ただ、佐藤くんも昨日はずっとチューハイを飲んでいて、ビールは飲んでいませんでしたよね、ビールは苦手なのですか?」


 彼女はそんな疑問をぶつけて来たので、佐藤陸は、


「まあ、そうだな、少し前にビールを飲んだんだけど、正直、滅茶苦茶苦くて何が美味いのか俺には全く分からなかったな、だから春風さん、二十歳になってもいきなりビールは飲まずにまずはチューハイとかから飲み始める事を俺は勧めるよ」


 彼女の質問に答えつつ、佐藤陸がそうアドバイスをすると。


「ふふっ、そうですね、私も苦い味のモノはあまり得意ではないので佐藤くんの言う通りにしてみます、因みに佐藤くん的にはチューハイはどの味がお勧めですか?」


「えっ、ああ、そうだな……」


 そんな感じで2人は適度に雑談を挟みながら寿司を食べて、それなりに楽しい時間を過ごした。

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