第19話
第19話「タイムマシン、最後の出発」
未来都市の空に、ふたたびタイムマシンが浮かんだ。
俺とお銀、そしておばあちゃんは、静かにその機体を見上げていた。
「……本当に、最後の旅になるかもしれないな」
そう呟いた俺の声に、お銀がうなずいた。
「そうだね。今度こそ“ちゃんとした就職”を目指す旅だもんね」
この物語の始まりは、ただの“面接逃避”だった。
タイムマシンを使って過去へ逃げ、未来へ転がり、
その先々で“自分じゃない何か”になろうとして――
でも、ようやく気付いた。俺は、俺のままで、やっていくしかない。
「で? 行き先は決まったの?」
おばあちゃんがカチャリとスロットを起動する音とともに聞いてきた。
「決まってるさ。あの時代だよ、昭和――」
「昭和ァ!? 今さら!?」
「だって……俺の履歴書、まだ昭和のタイプライターで作ってたから、面接官にウケるかなと思って……」
「理由しょぼいなオイ!!」
タイムマシンがエンジン音を唸らせた。
この時代の燃料はもう“パチンコ玉”ではない。
“決意”だった。
俺が握りしめたのは、未来のパチンコホールでおばあちゃんからもらった「就職お守り」。
裏面にはこう書かれていた。
『働きたい時が働きどき』
「便利な言葉だな……」
「でしょ? パチ屋のトイレに貼ってあった名言よ」
と、おばあちゃん。
「いや、出どころそこなの!? 深いようで浅いな!!」
***
「ほんとに行くのかい?」
出発の直前、おばあちゃんが珍しく真顔で言った。
「私のタイムマシンで未来も過去も見てきたあんたたちが、
それでも“自分の時代で頑張る”っていうなら……もう何も言わないよ」
「ばあちゃん……ありがとう」
するとおばあちゃんは、照れくさそうに言った。
「……ついでに、面接で言いなさい。“祖母は未来でパチンコ無双でした”って」
「絶対落ちるわ!!」
タイムマシンの扉が閉まり、エンジンが加速する。
俺とお銀は最後にもう一度、未来の空を見上げた。
「じゃ、行くか――昭和に!」
「……うん!」
ギュィィィィン――!!
光に包まれて、タイムマシンは次の時代へと跳んだ。
***
――昭和62年。東京。
スーツを着た俺とお銀は、企業の受付に立っていた。
受付嬢が優しく声をかける。
「面接の方ですね? お名前をお伺いしても?」
「はい……鈴木 拓志(たくし)です。えっと……履歴書、こちらです」
「え? この履歴書、紙が……すごく古い?」
「昭和純正品です(ドヤ)」
「え、ええと……では、面接室へどうぞ」
俺は、お銀と目を見合わせた。
「……来たぞ。人生の本番だ」
「うん。ちゃんと“現代”で勝負しよう」
俺たちは未来でも過去でもなく、“今”に立つ。
面接室のドアが開いた。
「さあ、行こう――働くための冒険は、ここからだ!」
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