第9話

第九話 無職、情報屋ぬえと営業バトル


ぬえは、ふらりと茶屋に現れた。

狐の面、男とも女ともつかない声。

本当に正体不明。


「君さ、未来人営業って名乗ってるらしいけど――営業、甘くないよ?」


「いや、俺そもそも営業経験ないし!」


「ふーん。じゃあ、“実績”で勝負しようか。どっちが多くの町人に“未来商品”を売れるか」


俺は断る間もなく、江戸のど真ん中に立たされた。


テーマは「未来の商品プレゼン対決」。


ぬえは“しゃべる木の板”(偽スマホ)を披露し、

俺は……なぜかカップ焼きそばを売ることに。


「お湯を入れて、待つだけです!!」


「胡散臭いわ!」「ぬえ様の方が賢そう!」


だが――


「う、うまい……!!」

「これは、天ぷらでもそばでもない……!」

「未来は……腹に優しいんだな……」


爆売れした。


「嘘だろ…たかが焼きそばで……」

ぬえの目が揺れた。


その夜、ぬえはこうつぶやいた。


「……君、案外すごいかもね。いずれまた、会うことになるよ」


風のように去っていったぬえ。


就活ライバル、攻略フラグ立ったかもしれない。

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