第3話 お姫様のペンダント
「はぁ……はぁ……はぁ……」
ジュリエッタは必死に走り、王宮を飛び出す。
「うん?」
門番達が焦って走るジュリエッタを不思議そうに見つめる。
「ジュリエッタ様……どうかなさいましたか?」
「た、助けて!レオナールに殺されそうなの!」
「レオナール様がそんなこと……」
門番達が戸惑っていると、レオナールが静かに王宮から歩いてくる。
「待ってよ。ジュリエッタ」
「ひぃ……!」
レオナールと目が合うと怯えた顔になる。
「ごめんね。ちょっと怖がらせちゃったよね?次からは気をつけるから」
「こ、来ないで!」
ジュリエッタの怯えを見て、門番達がただごとではないと思い、ジュリエッタを守るように前に出る。
「レオナール様。ジュリエッタ様に何をしたのですか?」
「ちょっと怖がるところを見られちゃっただけだから。気にしないで」
「そういうわけには……」
その瞬間、一人の門番の首が吹き飛んだ。
「キ、キャァァァァァー!」
胴体が前に倒れると、地面が血に染まる。
「部外者は引っ込んでてよ。これは僕とジュリエッタの問題なんだ」
もう一人の門番が体を震わせながら、レオナールに向かっていく。
「うぉぉぉぉぉ!」
斬りかかろうとした瞬間、門番の胴体はレオナールによって真っ二つに切り裂かれた。
「あ、あぁ……」
あっさり殺された門番を見てジュリエッタは腰を抜かして、膝をつく。
「さて……邪魔者がいなくなったね」
レオナールはゆっくりとジュリエッタの方に向かう。
「おいで。ジュリエッタ」
「こ、来ないで……」
ジュリエッタから見たレオナールは、恐怖しか感じなかった。
以前の優しい
(そ、そうだ……!)
ジュリエッタは首に身につけていたものを取り出す。
(……?
「お願い!私を助けて!」
―――結婚式前日。ジュリエッタは実家でお祝いを受けていた。
「「ジュリエッタ!結婚おめでとう」」
両親がクラッカーを発射する。
「ありがとう!お父さん!お母さん!」
「まさかジュリエッタが結婚する年になるとは……うぅっ……」
「あなたったら。泣かないでくださいよ」
母親のミナがロイズの涙を拭く。
「ジュリエッタは可愛いからいつか結婚するとは思ったけど……まさか相手が
「本当だよ!ジュリエッタは自慢の娘だと街中で言っていたが……さらに自慢できるな!」
両親が嬉しそうな顔をする。
「お父さんお母さん。私、幸せになるよ」
「えぇ!」
「
「上から目線ですよあなた」
「フフッ」
食事が終わり、ジュリエッタが食器を洗っていると、ルミが話しかけてきた。
「ジュリエッタ。ちょっといいかしら?」
「……?」
ミナについていくと、自分の机の引き出しから
「これをあなたにあげるわ」
「えっ⁉でもこれ……おばあちゃんから貰って大切にしてたやつじゃ……」
「ジュリエッタが持っていた方が良いと思ったの。私からの結婚祝い」
「……本当にいいの?」
「えぇ。この
そう言うとミナは、ジュリエッタの首にかける。
「似合ってるわ」
「ありがとうお母さん。大切にするね」
ジュリエッタは嬉しそうに受け取った。
―――「お願い!私を助けて!」
ジュリエッタの叫びに答えたのか、宝石が輝き始める。
「……!これは一体……」
突然のことにレオナールが驚いていると、二人の間に魔法陣が出現する。
すると魔法陣から白髪で、先端が三日月型の杖を持った美青年が現れる。
「……久しぶりだな。
美青年は杖を振り回すと、先端をレオナールに向ける。
「私に殺される覚悟はできているか?」
「……はぁ~」
レオナールがため息を吐く。
「全然ジュリエッタと会話できないんだけど……邪魔しないでくれるかな?」
「ジュリエッタ……お前の名前か?」
美青年がジュリエッタの方を振り返る。
「は、はい……」
「……」
じっと見つめた後、再び顔をレオナールに向ける。
「……助けてほしいと言ったな。そこで大人しくしておけ」
美青年は杖をレオナールに向けると、光を発射する。
「……!」
レオナールは咄嗟に剣で攻撃を防ぐが、防いだところからシューと煙が上がる。
「これ……ここで殺さないと面倒だな」
レオナールが斬撃を放つと、美青年は魔法陣の壁を出現させて防ぐ。
(……!いない……)
レオナールがいない。どこに消えたのか……そう思っていると上空から剣を振るう音がする。
「……!」
上の方を見ると、斬撃がこちら側に放たれていた。
「
斬撃が炸裂した衝撃で、土埃が舞う。
「……!」
ジュリエッタは心配そうな表情で美青年の方を見つめる。
土埃が晴れると、結界が展開されていてその中心に美青年が立っていた。
「結界も使えて……
レオナールは優しい口調で聞いていたが、苛立っていることも伝わる口調だった。
「戦いに関係ない話はしない主義だ」
美青年が手を上に挙げる。
「
すると、満月を背景に複数の光が放たれる。
レオナールが剣で捌くが、攻撃量が多く、体を貫通される。
「ぐはっ!」
攻撃を受けた衝撃で捌けなくなり、次々と光が肉体を貫通する。
「終わりだ」
美青年が杖から光を放つと、心臓を貫く。
「こ……な……こと……」
口から血を吐きながら、レオナールは倒れた。
「……ジュリエッタ」
「は、はい!」
「この国を出ろ。王子が
美青年がジュリエッタの前に立つ。
「……私にできることはここまでだ」
「あ、あの!」
「なんだ」
「助けてくれて……ありがとうございました」
ジュリエッタが頭を下げる。
「よろしければお名前を……」
「……私に名を名乗る資格はない。好きに呼べ」
「え~と……じゃあ……」
ジュリエッタが呼び名を考える。
「『ロメオ』って呼んでいいですか?」
「……あぁ」
ロメオの足元に魔法陣が出現すると、姿を消した。
「……ありがとうロメオ」
ジュリエッタは
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