第20話 炎神の訪れ

 突如現れた、炎の柱に何事かと⼤蛇は発⽣源を探し、とある場所に頭を向けた。


 そこにはシャノン様の知り合いである彼⼥が歩いている。


「つまらん、肩慣らしにもならないな。」


 進むにつれて、⾜先から炎と光を帯びながら姿を変化していく。

 ⼈の形をしているが、翼をもっていた。髪が⾚く染まり、まるで炎に包まれているようだ。


 ふっと息をこぼすと、その吐息が炎と共に⼤蛇へと向かっていく。


「ギャアアアア!」


 炎が全⾝を巡り、奇声をあげながら、形を崩していく⼤蛇。⾎が⾶び散るがごとく、⿊い泥の塊のようなものが地⾯にはりついていく。


 炎を纏い、地上を焼き尽くすほどの⼒をもつ⻯がいた。


 その⼀説を、今僕は目の当たりにしている。吐く息、⾝体すべてが炎のようであるこの⽅は⼈ではない。そして、炎を纏い、どこかゲイル様に似た雰囲気の御⽅。


 つまり、目の前にいるのは、


「⻯神シェール様…。」


 ⻯の頂点、この世界を⽣み出した神というべき存在。


 呟く声は、⻯神様の⽿にも届いた。炎を吐いたとは思えないほど、優しくその唇をほころばせた。息が詰まる、なんて美しいのだろう。目が離せないというのは、こういうことだろうか。


「本来の姿でない我の正体を⾒破るとは。流⽯、ゲイルに認められたというわけか。」


 ゲイル様…、その名前を聞いて、意識が現実に引き戻される。あの⽅に授けられた⼒と剣は、約束を果たすためにも、ここにいるのだと。


 しかし、あまりにも高貴な姿を目の前の光景にしての衝撃か、呆気にとられて体が動かないでいると、シェール様自身がこちらに歩み寄ってくる。

 犬だったシャノン様が⼈型になり、僕らの前に出て庇うようにして⽴った。


「?何をしている。」


「分かっております。ですが、貴⽅様の⼒は⼈の⾝では耐え難いのです。」


 確かに、肌が焼けるように熱い。きっとシャノン様が⽌めなかったら、焼かれていただろう。


 そうかと呟き、⾝にまとう炎を弱めたその⼈は、僕の⽅を⼀瞥する。ほくそ笑むだけで何も⾔わず、次にアーノルドを⾒た。


「あら、⾊濃く⻯の⾎が混じっているな。よく⽣きているな。」


「あ、あなたは。」


 ⾔いよどむ彼を他所に、その⼈はじろじろと相⼿の顔を⾒て、満⾜そうにうなずく。そして、その隣で顔を伏せる⼈に目をやった。


「今の⽔⻯か。⾒るからに…、随分と若いな。」


「は、はい…。お初にお目にかかります。今回の騒動、私の監督不⾏き届きでございます。」


 震えて怯える彼⼥に、⼝をへの字に曲げる。


「あぁ、そういうのはいい。堅苦しいのはなし

だ。」


 ひらひらと⼿⾸を前後に振る。すると、急に空を⾒上げてから、⼀瞬眉間に皺を寄せた。肩をストンと落とし、くるりとこちらに⾝体を向ける。


「…我は⽤事ができた。あとのことは、お前たちに任せる。」


「えぇ、ちょっと!」


「またな。」


 シャノン様が呼び⽌めるまえに、炎を全⾝に再び纏い、消えていった。

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