第12話 ギルドダンジョン③ ─《再現》─
「う~ん、あれ、なんだったのかしらね~」
ミーコさんが疑問を投げかける。俺達のクリアを阻んだ、パーティが壊滅状態になってしまう現象。これの正体を探らなければならない。
「シキくんが耐えとるってことは、即死ギミックやないんやろけど……」
リックさんの言う『即死ギミック』は、特定の条件でキャラクターが強制的に倒されるもので、仮にそれだった場合はいかにタンクの耐久を積み上げていようと関係ない。つまり、単純に非常に高威力の何かを食らっているわけだが……
「何してきてるか分からないってのは困りますね」
【NMO】において「何で倒されてるか分からない」現象は、あまり多くない。
強力な攻撃には相応の前兆があるし、そうでなくとも攻撃自体のモーション・エフェクトが視認できないことはまずない。主観視点ゆえに見えていないことはあるが、今回は5人で戦っているから、見落としということはないだろう。
「このボスもでっかいだけでメインクエストの使いまわしなんすよね?私も見覚えはあるっす」
「そうだな。だが、こういう攻撃はしてこなかったと思う」
他の可能性としては最高レベルのギルドダンジョンの特別仕様として何か攻撃やステージギミックが追加されていることなのだが……
かつて最前線で攻略を行っていたときでも、こうも糸口が掴めない攻撃はちょっと覚えがない。正直に言えば、理不尽に感じる。【NMO】の開発が意図的にこういう調整をするとは考えにくいが……
「うーん、ここまでで諦めとく?一応、報酬はギブアップでも出るで」
リックさんが提案するが、できればそれは避けたい。最終エリアをクリアしているか否かは、報酬への影響があまりにも大きい。どうにかして正体を掴んで攻略したいところだ。
「バグじゃないっすか!?運営に報告しましょーよ!」
クロネが膨れ面で不満を漏らす。確かにバグの可能性もあるか。
バグ、不具合。想定外の挙動。
待てよ?あのボスには、本来まだ特殊な攻撃のパターンがあったはずだ。
俺は、指にはめた指輪のことを思い出す。
正体のわからないものを突き止めるには、うってつけの手段がある。
「……とりあえず、もう一度挑戦してみませんか?」
俺の提案に、みんなは快く頷いてくれた。
▲
再びギルドダンジョンに入り、俺達は最終エリアまで問題なく進む。
そしてボスが登場して、きっかり25秒経過した時。先ほどと同じように、俺以外のメンバーは謎の攻撃によって壊滅してしまった。
だが、先程と違ったのは……俺は、そのタイミングを予期して、「
俺はスキルの詳細を確認する。スキル名「オーラバースト」。
「わかった!やっぱりそういうことか!」
俺が叫び声をあげると、みんなが(倒れたまま)こちらを見る。
「もう1回、挑戦するチャンスをください。正体も、対策も、わかったと思います」
▲
みたび最終エリアに突入した俺達は、まず敵が出現するまえにエリアの端まで移動した。
最終エリアに壁はないように見えるが、しばらく一方向に移動すると半透明な壁が出現し、エリアの端であることを示すアラートメッセージが表示される。
「たぶん、距離は足りると思うんだよな……」
本来、エリアの端で戦うことは忌避されている。この透明な壁はプレイヤーだけを阻むもので、敵はエリアの外側からも湧き出すし攻撃もしてくる。単純にこちらの行動だけが制限されてしまうのだ。
やがて雑魚が湧きはじめ、俺達は戦闘を開始した。ボスの出現までは何も憂うことはない。しばらくした後、問題のボスが登場する。
先ほどと同じように俺がボスのターゲットを取り、攻撃を耐えつつその時を待つ。
「よし、今だ!」
俺が合図を出すと共に、他の4人はいっせいにエリアの反対側に向かって駆け出す。雑魚モンスターたちはそれを追うが、ボスはターゲットが俺なのでその場に留まったままだ。
「……あ!あにき!あったっす!」
クロネが大声で叫ぶ。予想は当たっていたらしい。
俺はギリギリまでその場でタイミングを見計らい、『残影』を使って全速力でみんなの後を追う。
少し移動すると、遠くに紫色の半透明な壁が見える。
「急いで!ボスも移動してるから抜けても気を抜くな!」
「了解っす……わわっ!」
壁の少し手前で、クロネがつまづいて転びそうになる。
俺は慌ててクロネの元に『残影』で追いついて、ひょいと抱きかかえてそのまま壁の外まで駆け抜けた。
直後、紫色の壁はバチンと弾けて消滅する。これが俺達を壊滅させていたものの正体だ。
「オーラバースト」。ボスからドーム状にエフェクトが出現、一定時間後にその中にいると致死的ダメージを受ける、という攻撃である。これ自体は比較的メジャーなものだ。
しかしどうやら、ボスが巨大化したのに応じて、この攻撃のサイズも十数倍に膨れ上がってしまった。結果、エフェクトが自分たちの視認できる範囲よりも外に出現してしまい、何もされていないのに大ダメージを受けたかのような挙動になっていたらしい。──設定ミスだろ!それは!
「あ、あにきぃ……」
「っと、緊急だったからな、変な所触ってたらすまん」
俺は慌てて抱えていたクロネを下ろす。
「ぜ、全然大丈夫っす!……あにき、いつもありがとっす」
「お、おう」
クロネがはにかんだ顔で俺を見つめてくる。
……そんな目で見られると、俺も照れてしまう。
「おふたりさーんイチャイチャしとらんで戦ってや~!」
「「い、イチャイチャはしてないです(っす)よ!」」
すでに追いついてきていた狼型の敵と交戦しているリックさんに囃し立てられ、慌てて戦闘を再開する。
しばらくするとボスもこちらまで追ってきたが、あのボスがあの攻撃を実行するのは1回きりだったはずである。俺達は陣形を整え、ボスのHPをガンガン削り取っていく……
▲
幸い、特別仕様で複数回使用してくる……なんてこともなく、しばらく攻撃し続けてボスを撃破することに成功した。
[ボスモンスターを撃破しました!MVPはクロネさんです]
次の瞬間、俺達はギルドダンジョンの入口へと強制テレポートされた。
「わわっ……あ、宝箱!」
「報酬は、この部屋に出現する宝箱から受け取るんだ」
「今回は
「……いいんですか?」
他の3人を見回すが、どうやら構わないらしい。
パーティで狩りをしたときは、一度誰かがすべての獲得アイテムをまとめて持ち、それを換金したり等分したりして精算する。高額なドロップがあった時などは、この時に持ち逃げなどのトラブルもある。
ギルド狩りなら、通常はギルドマスターが取りまとめるはずだ。あえて俺に任せたのは……信頼、というか、やはりどうしても俺を引き込みたいという意思表明に感じる。
「わかりました。じゃあ、拾いますね」
俺は宝箱を開封し、一気にアイテムをインベントリに流し込んだ。
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