第4話
''東西南北 風まかせぇ''
歌は続く。ペダルを踏んで勢いを付けます。
で、ペダルを踏んで飛び上がりフレームにシューズを乗せてピョン立ちに。左右に開いていた両手を前に伸ばして体は少し前に倒すの。そして前に伸ばした手を思いっきり回りたい方向へ振り出すのね。
車輪が大きな弧を描いて内側に円を描きはじめるので、腕を思いっきり回すと、クルクルクルと回ってくれます。立ちピルエットって言うの。脇を締めていくと回るスピードを速くなっていく。
ルルルルッと回って、回転が止まるときには忘れずに両手を開くのね。ピシッて決まります。次の技にいくのに繋がりがよくなるんだって。
やったあ。軸もぶれずに回れたよ。この技も上手に出来たんだ。今日は調子いいかもね。
自分の顔か笑顔になっているのがわかります。今日の私はいつもと違う。何故かって、
実はね、
お化粧をしてるんだよ。小学生なのに、なんでと思うでしょ。だって今日は一輪車の大会でドレスまで着てるんだよ。一世一代の晴れ舞台。お化粧をして綺麗な私をみんなに見てもらいなさいって、お母さんが言うの。
とは言っても私一人じゃできないでしょって、お母さんが私にメイクをしてくれました。
顔に乳液を塗って保湿。そして下地のプライマーをつけて伸ばしてく。
更にスポンジにリキッドファンデーションをつけて肌で伸ばしていくの。
顔の中心から,外に向かって。あっ艶肌になったよ。出来たらフェイスパウダーを軽く叩いて、綺麗に仕上がりました。顔の中心のお鼻の線にハイライトを入れてお肌は終わり。
そうしたら、お母さんはバレットを出して、アイメイクを始めたの。ブラシを使ってアイブロウ。ああ、そんな派手な色にするのって大丈夫。私,小学生なんだよ。お母さんは、いいじゃないとアイシャドウを瞼に乗せた。そしてアイライナーペンシルを使って瞼の線を際立ださせて、目の輪郭がはっきりとさせました。
もう,成すがままって感じなの。
そして、そしてですよ。ビューラーってハサミみたいなのを持ち出して,目に近づけるの。
怖いって思ったらまつ毛をギュッ、ギュって挟んだのね。
なんとまつ毛がクリクルンとなってしまいます。お目目パッチリなんです。
ちょっと顎上げてって言うから言われた通りにすると、今度は唇に何か塗られました。リップクリームなんだって。更に,その上にルージユまで。
唇が,もう,艶々。最後に上唇の窪んだところのキューピットボウに濃い色のルージユを乗せてくれたの。
で、笑ってと言うもんだから,無理やり,顔の筋肉を使って笑顔らしくすると頬の高い位置に赤めが強いものを塗って来たんだ。チークっていいんだ。目元にラメまで乗せられて、キラキラしています。
お化粧って大変。こんなに沢山お肌に色々塗ってブラシやビューラまで,たくさんの道具を使うんだ。大変なんだね。
一通り終わって、あ母さんはコンパクトを開いて。中の鏡で私を映してくれました。
貴女はだあれ。別人な私が鏡に写っているの。
本当に驚いたぁ。別人なんだのもの。大人びてる私がいる。思いっきり背伸びしてるけどね。
お母さんは、いつもこんなことをしてるんだ。私も覚えないといけないのかな。大変すぎてめげそうです。
あっ、でもお父さんには近くで見せてあげない。一緒に会場には来てるけど。恥ずかしいもの。
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