赦し


もう、許すことにした。


そう言った君の顔は、とても晴れやかだった。最初はなんのことだかわからなかった。

君が何に対して言っているのか。

僕にはわからなかった。


だって、君はいつだって笑顔で誰にでも平等に優しくて、人々を笑顔にしていた。

本当、ドラマに出てくる主人公のように太陽のように暖かくみんなを包んでくれていた。


だから、君が誰かを嫌いになっているところや、誰かに対して本気で怒っているところも見たことがなかった。


それは、時には誰かのために叱ることや、諭すことはあったけれども、それが原因で誰かとトラブルになっている様子もなかった。


だから、僕はいくら考えてもわからなかったんだ。


君がその言葉を告げてから、地元に帰ったその日まで。

僕は君が昔、虐待を受けていただなんて想像もできなかった。

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