第20話
夏休みが明け、陽介との関係を知った華蓮と美咲の間に、微妙な緊張感が生まれた。そんな中、文化祭が開催され、打ち上げの席で、陽介は長谷川萌、桜井若葉、藤原雫と出会う。
文化祭の熱気と喧騒が遠ざかり、俺たちの高校生活は、再び日常へと戻った。秋風が心地よく吹き抜ける、ある週末の放課後。俺は、長谷川萌から「週末、映画に行かない?」と誘われた。
「え、映画!? 行く行く! 陽介くんと一緒に行きたいな!」
俺の誘いに、萌は満面の笑みで答えた。彼女の明るい茶髪のショートカットが、俺の心を軽やかにする。
そして映画デート当日。俺は、華蓮や美咲と会うときと同じように、少し緊張していた。俺は、彼女たちのことを、大切に思っている。だが、俺は、俺自身の決意を貫きたい。
映画館の前で、萌は、いつもと変わらない、派手なファッションで俺を待っていた。だが、その瞳の奥には、どこか寂しげな光が宿っているように見えた。
「陽介くん、お待たせ! この映画、すごく楽しみにしてたんだ!」
萌は、そう言って、俺の腕に、そっと自分の腕を絡ませた。彼女の身体からは、甘い香水の香りが漂ってくる。俺は、萌の腕の感触に、少しだけドキリとした。
映画は、恋愛映画だった。主人公の二人が、様々な困難を乗り越え、結ばれていく物語。映画が終わると、萌は、俺の顔を、じっと見つめた。その瞳には、涙が浮かんでいる。
「……陽介くん。……私、誰かに、必要とされたい。……誰かに、愛されたい」
萌の声は、震えていて、弱々しい。いつも明るく、クラスの人気者である彼女が、こんなにも弱っている姿を、俺は初めて見た。
「長谷川は、いつも明るくて、皆の中心にいるじゃないか」
俺がそう言うと、萌は、フッと寂しそうに微笑んだ。
「そう。でもね、本当は違うの。……私、一人になるのが、一番怖いんだ。だから、いつも、派手な振る舞いで、それを隠そうとしている。……でも、本当は……誰かに、ありのままの私を受け入れてもらいたかった」
萌の言葉に、俺は胸が締め付けられた。彼女が抱える孤独と、誰かに必要とされたいという強い願望が、痛いほど伝わってくる。
「長谷川。俺は、長谷川の派手な外面の下に隠された、孤独な内面も、すべて受け入れたい」
俺がそう言うと、萌は、俺の顔を、じっと見つめた。その瞳の奥には、去年の夜、美咲が流した涙と同じ、強い感情が渦巻いている。
「……日高くん。私……もっと、日高くんのことを知りたい。そして、私自身も、日高くんに知ってほしい」
萌の言葉に、俺の心臓が、ドクリと大きく脈打った。
萌の情熱的な内面が、俺の心を突き動かしている。
このデートが、彼女にとって、単なるデートではない。
彼女の抱える孤独と、情熱が、今、俺の心を突き動かしていた。
俺の決意が、この萌の心の闇を、どう照らしていくのか。
俺たちの関係は、このデートを機に、さらに深いものへと変わっていく。
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