第4話

 修学旅行二日目の夜。俺たちは、ホテルの一室に集まっていた。部屋割りは男子四人。昼間の沖縄の強い日差しと、海水浴で疲労困憊した身体は、すぐにでもベッドに横になりたがっている。だが、俺たちの興奮は、疲労を上回っていた。


 男子たちとの談笑の中、俺はふと、美咲と華蓮のことを思い出す。昼間の美咲の問いかけに、俺は明確な答えを返せなかった。華蓮への想いは、幼馴染として、家族として、そして一人の女性として、複雑に絡み合っている。それを、美咲にどう伝えればいいのか。


 そんなことを考えていると、部屋のドアがノックされた。

 ドアを開けると、そこには華蓮が立っていた。艶やかな茶色のボブヘアが、照明の光を浴びて輝いている。

「陽介、ちょっといい?」

 華蓮の声は、いつもより少し小さく、どこか緊張しているようにも聞こえた。


 俺は、華蓮に連れられて、ホテルの屋上に向かった。そこは、誰もいない静かな空間だった。夜空には満月が輝き、月明かりが二人の間を照らしている。


「どうしたんだ、華蓮。こんな時間に、二人きりで」

 俺がそう尋ねると、華蓮は、俯いたまま何も言わない。


「華蓮?」

 俺がもう一度声をかけると、彼女はゆっくりと顔を上げた。その瞳は、満月の光を宿して、キラキラと輝いている。


「陽介、あのね……昼間、美咲ちゃんと何を話してたの?」

 華蓮の言葉に、俺はドキリとした。美咲との会話を、彼女はどこかで見ていたのだろうか。


「……別に、たいした話じゃないさ」

 俺がそう答えると、華蓮は、寂しそうに微笑んだ。

「嘘。なんか、二人とも、真剣な顔してたもん」


 華蓮は、ゆっくりと俺に近づいてきた。俺たちの間にあった、わずかな距離が、一瞬でゼロになる。


「ねえ、陽介。……私、陽介のこと、好きだよ」

 華蓮の声が、震えている。俺の心臓が、ドクリと大きく脈打った。


「陽介にとって、私はただの幼馴染? それとも、もっと特別な……」

 華蓮の言葉の続きは、俺の唇が、彼女の唇を塞いだことで、途切れた。

 華蓮の唇は、少し冷たく、だが柔らかかった。俺は、優しく彼女の唇を吸い、そして離した。


「……陽介?」

 華蓮の瞳が、驚きと、そして期待に満ちている。俺は、彼女のボブヘアを優しく撫でた。


「華蓮は、俺にとって、一番大切な存在だ」

 俺の言葉に、華蓮は、泣き出しそうな顔で俺に抱きついた。俺の胸に、彼女のC65の柔らかい胸の感触が、はっきりと伝わってくる。


「陽介……大好き……」

 華蓮の言葉に、俺の心は温かい感情で満たされる。俺は、彼女の背中に、優しく腕を回した。


「ねえ、陽介……キス、もっとしたい」

 華蓮の言葉に、俺は再び、彼女の唇を塞いだ。今度は、先ほどよりも深く、情熱的に。彼女の柔らかい唇が、俺の唇に絡みつく。


 俺たちのキスは、月明かりの下で、静かに、そして熱く、続いていた。華蓮の身体が、俺の腕の中で、微かに震えている。


 彼女の純粋な恋心は、性的な好奇心へと変わっていく。

 そして、俺の決意は、現実のものへと変わる。


 この修学旅行の夜が、俺と華蓮の、新しい関係の始まりとなる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る