ルッコラ王国興亡記
@komugiinu
第1話
1
「ルルナ、申し訳ないが婚約を解消してくれ、
俺と王女様は、昨夜結ばれたんだ!」
なんですとーっ!
「身分差があるから、結婚はできないけど
日陰者でもいい
俺は一生、姫様のお側にいることにした。」
ライナスの目つきは明らかにおかしい
ああ、あの噂は本当だったのだ。
ルッコラ王国の王女様は自由奔放というか奇人変人で有名だった。
毎日男をとっかえひっかえという行動を忠実に実践なさっているお方だ。
何でも王女様に見つめられると、男は熱病のように恋に落ちるらしい。
ライナスの所属する宮廷騎士団の中でも、
見てくれの良い者は、半数以上そういう関係になっているのではないかと噂されていた。
対処法は簡単だ、
暫く姫様と会わせなければいい、
風邪をひいたと届けを出して、2.3日家に監禁しておけば目が覚めるという。
ルルナはそうしなかった。
ライナスがこうなる以前から姫様に憧れていたことを知っていたからだ。
無理矢理拘束して、正気に戻しても
結局また元の状態になるだけだ。
トランス状態になっているこのバカ野郎は、今が最高に幸せなのだ、
何を言っても無駄だろう。
(勝手にすれば)
「いいわよ、解消しましょう。」
こうして2人は婚約を解消した。
「私にもプライドがあるわよ、」
2
案の定
3日経ったら、憔悴しきった様子でライナスがやって来た。
「前言撤回します、許してください。」
ライナスはボソボソと喋り出した。
「国王の狩りに付き添って、泊まりがけで護衛に行っていたんだ、
姫様に会いたくて仕方なかったけど、仕事だからしょうがない。」
「ふうん、それで?」
「仕事が終わってから、大急ぎで姫様の所に向かった、
会えなくて寂しかったよって、
そしたらー」
「姫様はなんて言ったの?」
「ああ、おまえはもう要らない、
鬱陶しいから、私に付き纏わないで」
ルルナは吹き出しそうになった。
(ひと晩で飽きられたんだわー)
「その言葉で俺も目が覚めた、
ルルナになんてことを言ってしまったんだろうって、」
私には言い訳にしか聞こえなかったが、
ことのいきさつをライナスは喋り出した。
「仕事が終わって帰ろうとしたら、
姫様に呼び止められたんだ
私の部屋でお茶をしませんかって」
「憧れの姫様だものねー
行っちゃうわよねー」
ライナスは恨めしそうな目つきをした。
「2人でお茶を飲みながら喋っていたら、
その、おかしな気分になってきて、
堪らなくなってきて」
「で、そのままいたしちゃった訳ですか。」
「いたしちゃいました、
本当にごめんなさい!」
ライナスは騎士のくせに土下座してきた。
元々、たいして裕福でもない男爵家の親同士が決めた婚約者で、
友だちみたいな関係だった。
「もうきみ以外の女性とは絶対にあんな事はしない
王女様には近づかない、
娼館にも行かない」
「あなた娼館になんて行ってたの?」
ライナスはまた大きな身体を小さくした。
(しょうがない、
これで懲りたでしょう)
「じゃあなんでもひとつお願いを聞いてくれたら許してあげる。」
私があっさり許したのには、訳があった。
話を聞いているうちに疑問が湧いてきたのだ、
(もしかしたら、お茶に薬を盛られた?)
3
そうは言ったものの、ライナスはまだ王女様が忘れられないようだった。
向こうは1度くらい夜を共にした男の顔など、とっくに忘れているのだろう。
姫様が通るたびに、チラチラと目で追うライナスはむしろ気の毒に思えた。
まだ、多少のわだかまりがあるものの、このまま穏やかに時が解決してくれるだろうと私はたかをくくっていた。
1年くらい経っただろうか
私が寝ている2階の寝室の窓が、ドンドンと叩かれた。
「ライナス?」
慌てて鍵を開けると、彼が凄い勢いで飛び込んできた。
「ルルナ、頼む、
抱かせてくれ!」
なんですとーっ!
彼はいきなりベッドに押し倒してきた。
「我慢できない、
エッチさせてくれ!」
何言ってんの?
おまえはサルか!
「約束しただろ、きみ以外は抱かないって、
させてくれないと、俺はこれから娼館に駆け込むぞ!」
「そんな所、事前報告してから行かないでよ!」
「だったら、おまえとやるしかないだろう!」
何だ、その理屈は?
ライナスはハアハアと荒い息をして凄く苦しそうだった。
「優しくするから、優しくするから」
そう言いながら、無理やりネグリジェを脱がせて、下着を剥ぎ取った。
「大丈夫だから、大丈夫だから」
呪文のようにそう繰り返しながら
自分は大急ぎでズボンを脱ぐと、
もう1秒も耐え切れないかのように抱きついてきた、
「おもーっ!」
「うっしゃー!
よっしゃー!」
リミッターが外れたとはこういう状態を言うのだろう、
どこが優しくだ?
思い切りがっついてるし、痛い痛い!
「た、たんま!」
「うおー、止まんねー!」
痛いんだってば!
放せ、くっそエロ猿が!
攻防戦は朝まで続いた。
いつの間にかくたびれて果てて、寝てしまった私が目を開けると隣にライナスがいた。
「おはよう、昨夜はステキだったよ、
マイハニー」
(こいつバカか、強姦じゃねーか)
「昨日は強引に求めてしまって悪かったね」
(だから何よその余裕は? 犯罪だよ)
強姦魔はふてぶてしく笑った
「これには訳があってね、
きみとの約束を守るためにしょうがなかったんだ。」
「え、どういうこと?」
「騎士団の先輩に、面白い所に行かないかと誘われて、離宮の地下室について行ったんだ。
そこでは変な匂いの香が焚かれていて、
おぞましいものを見てしまった。
ベッドで王女様と数人の男が一緒に絡み合っていたんだ。
先輩が俺にもまざらないかって、
でもそんな事は気持ちが悪くてできないと断わったら、
何だつまんねえ奴だな
じゃあここで酒でも飲んでろって言われて
出された酒を飲んだら、急におかしな気分になってきた。
姫様の部屋でお茶を飲んだ時と一緒だ。
これはヤバいと思って、その場からは逃げ出したんだけど、
どうしても下半身の方が収まらなくて、ルルナの所まで走って来たんだ。」
「王宮からうちまでって、
5キロくらいあるよ。」
「うん、でも約束しただろう、
ルルナ以外は絶対抱かないって。」
“偉かったでしょう”
そう言わんばかりに
ライナスは鼻高々で斜めから見下ろしてきた。
はいはい、分かりました、
こいつは律儀な下半身サルだったんだ。
4
「しかしこうなったからには責任は取る
ルルナ、結婚しよう!」
「婚約者ですけど」
「だから、なるべく早く結婚しよう。」
「エッチしたいだけで言ってるんじゃないでしょうね?」
ライナスはちょっと躊躇った。
「実は、以前から王女様に憧れていたんだ、
でも昨日の有様を見たら、気味の悪い魔女にしか見えなかった。」
「あなたが、ずっと王女様のことが好きだということは知っていたわよ。」
「でも、さすがにあれはダメだ、
もうついていけない
目が覚めた、俺にはルルナしかいない、
結婚しよう!」
「だから婚約者ですけどー」
「朝食の用意ができましたよ」
メイドのばあやが呼びに来た、
朝からヨレヨレの私たちの姿を見て
「おやまあ、これはー
ごめんなさいね。」
と言って逃げてしまった。
(ああ、もうこれは後には引けないわー)
ライナスも私も、親に迷惑を掛けないように、自分たちで結婚資金を貯めている。
ライナスは下級貴族の次男坊が一番手っ取り早く爵位を手に入れる方法、
宮廷騎士団に入って、すでに男爵を拝命している。(ただし領地はない)
軽いようだが、結構頑張り屋さんなのだ。
私は学校を出てから、貴族相手の高級ブティックで売り子をしている。
現代で言うパワーカップルだ。
うちのブティックにも王女様は突然やってくる。
侍女を何人も引き連れて、それこそ家が一軒建つくらい、手当たり次第に買っていく。
大切な太客だが、機嫌を損ねると店内のディスプレイは徹底的に破壊される。
引きちぎられて床に散乱したアクセサリーを片付けながら、いつも不思議に思っていた。
(どうしてこんな人をライナスが好きだったのかしら?
やっぱり胸の大きさかしら、エロ猿だから)
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