アイツら曰く、私はVRMMOのNPCらしいのだが、何を言っているのか全然分からない。〜無貌の冒険者モエギは、異世界人と邂逅する〜

八咫巻

第一章 邂逅編

第1話 無貌の冒険者

第一話はモエギとは違う別人の視点で始まります。

───────────────────────




 ―――

 

 アカツキは今、自身が置かれている状況を振り返っている。

 ギルドからの依頼でモンスターを狩るために、仲間を三人集めて臨時パーティを結成、森の中に入って暫くした頃。目の前にいる彼女、白髪碧眼はくはつへきがんの冒険者モエギと出会った。


「君達はこの近くの街の冒険者かい?もしそうなら街がどの方向に在るか教えてくれない?少し迷ってしまってね」 

 

 白銀の髪は腰まで届くほど長く、右目を覆い隠す前髪が特徴的な彼女はそう言って照れくさく微笑んだ。


 自己紹介をして、近くにまだモンスターが潜んでいるかもしれない、一人では危ないだろうという事でパーティメンバーのダインが一緒に行動したらどうかと提案した。


「アカツキ、周りにモンスターが居ないか確認して来てくれ」


 斥候として一人で森の奥に進むことになったアカツキは、周囲を警戒していた。

 暫く時間が経ったその時、仲間の叫び声が森に響いた。


 パーティの元に走ったアカツキの目に飛び込んできたのは異常な光景。


 武器を抜きダインに向けているモエギ。だが驚くところはそこではない。

 モエギの顔が黒い何かに覆われて認識できない。


 普段なら綺麗な青い色の眼が、髪に隠れていない顔の左側から見えている。だが、目の前にいる彼女の顔は、その表情どころか顔の起伏すら分からない。


「なっ…何なんだその顔は―――お前は一体何者なんだ!」


 ダインは狼狽えながら、彼女の持つで切り落とされた腕を押さえ、声を荒げていた。今この場所にいるのはアカツキと、腕を切り落とされたダイン、刀を構えたモエギの三人だけだ。他にも二人、ダインの仲間が居たが、既に彼女によって真っ二つに切り捨てられており、その体は徐々にになって消えている最中だ。


 たとえと分かっていても、痛みがないわけじゃないし、デメリットが無いわけじゃない。何とかしてこの危機的な状況を乗り越えなければならない。幸いな事はアカツキの体は無事な状態で、今はモエギと明確な敵対をしていないという事くらいか―――


「クソがっ!冒険者を狩って楽に強くなる筈だったのに」


 ダインは後ろから来たアカツキに気が付いていないのか悪態をついた。

 斥候で離れている間に残りの三人でモエギに襲い掛かったのか?

 そう考えていたら彼女の姿が消える。一体何処に―――

 カチン、という音が聞こえたと思ったら、いつの間にかダインの背後に納刀したモエギが立っていた。


「は?」


 何が起こったか分かっていないのか、そんな声を最後にダインの身体は切り裂かれ地面に倒れながら光る粒子になり消える。 

 

 張り詰めた空気が身体に伝わってくる。依然、彼女の顔は黒いもやに包まれているようで、その表情は分からない――ずっと見ているとその深い闇に引きずり込まれる錯覚さえ覚える。じわりと嫌な汗が背中を伝い、思わず身震いをして足元の枝を踏み抜いてしまった。『パキッ』っと音がなり、しまったと思った時にはもうモエギの姿はなく、代わりに冷たい何かが背中に添えられているのが分かる。


「動くな。君もなら死んだところですぐに生き返るだろうけど」

 

 邂逅者かいこうしゃ、アカツキ達の様な死んでも生き返る存在をこの世界の人達はそう呼んでいる。見分け方は傷を負った時に血が出るか、代わりに光る粒子が出るからしい。


「君もダインの仲間かとも思ったけど、少し違うみたいだし――質問に答えてくれたら内容によっては見逃してあげるよ。まぁ、嘘をついたと思ったら容赦なく切るけど」


 どうやらまだ、辛うじて首の皮一枚の所でアカツキの命は繋がっているみたいだ。

 両手を上げて降参の意を示したいところだが、下手に動けば切られてしまいかねないので、心の中だけにしておく。


「まず一つ目、君とダイン達との関係は?」

「…ギルドで依頼を受けた時に臨時でパーティを組んだ、軽い自己紹介をしたくらいで相手のことは詳しくは知らない。あの三人は顔見知りの様だったけど」


 本当のことだ、そこでふと、あの三人が顔見知りなら他にも今回のように、他の誰かを襲っているかもしれない。


「二つ目、君は人を、君達で言うところの現地人を手にかけたことはある?」

「無いよ、現地人どころか邂逅者相手に戦った事もない。」


 邂逅者の中には好んで他の邂逅者と戦う者もいる、だがアカツキはモンスターと戦って地道に強くなれば良いと思い、ひたすらギルドで依頼を受けていた。

 背後にいるモエギに切られないか不安に駆られながらも、アカツキは事実を話すことしかできない。


「じゃあ最後の質問。私に協力する気はある?」


 背中に押し当てられていた冷たい感触が消え、カチンという音が聞こえアカツキは思わず振り返った。その先には刀を鞘に納め、髪の隙間から青い瞳を覗かせたモエギがニヤリとした表情で立っていた。



――――――――――――――

あとがき

初めて小説を書いたので色々と変な所があるかもしれません。

あと次の話はちゃんとモエギ視点になる予定です。



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