第3話『カウントダウン』
放課後の教室。
もうすぐ帰宅部タイム、世界が静寂に包まれはじめた頃。
僕はいつものように、誰にも気づかれずに、誰にも気を遣わずに、息を潜めて帰ろうとしていた──その時だった。
「──お前は、あと100時間後に死ぬ」
その声は、あまりにも唐突で。
しかも、なんかちょっと──高めで、可愛かった。
「は?」
振り返ると、そこには──黒いフードの少女が立っていた。
銀色の髪。深紅の瞳。身長は小柄、制服の上から羽織った黒のマント。
そして、手には……鎌。
……待て。
「コスプレ……?ていうか、誰?」
僕が戸惑うと、彼女は涙ぐみながら言った。
「やっと……やっとお前が私を見てくれた……!」
「……え?」
涙がぽろぽろと、頬を伝って落ちていく。
その姿は儚く、美しく、そして──なによりも、めちゃくちゃ怖い。
「見えるようになったのだな。ならばもう大丈夫。これからの余生、我と共に──」
「ちょ、ま、余生って言った今!?」
「お前は、余命あと100時間。私はその死を見届ける“死神”である」
「うわぁ、言い切った!?軽っ!」
「とはいえ、突然のことで困惑する気持ちは分かる。まずは……久方ぶりに名を呼んでくれ」
「え、何?俺お前のこと知ってんの?」
「当たり前であろう?我ら、長きにわたって共に眠っていたではないか」
「な……!?」
中学の頃から続いていた、毎晩の金縛り。
寝ている最中、のしかかるような重みと息苦しさ。
通学中、妙に背中に感じる圧迫感。ノートに浮かぶ謎の文章。
──全部、お前のせいか!!
「“オマエガシヌマデソバニイル”……中二の頃、ノートに勝手に書かれたあの言葉……あれ、お前のプロポーズかよッ!!」
「そうである♡」
「♡じゃねえよッ!!!」
その時、彼女は顔を近づけてきて、ぽつりと呟いた。
「さあ、お前の寿命が尽きるまで……私を、犯し続けても良いぞ?」
「な……っ、えぇぇぇぇぇぇぇぇッ!?」
「べ、別に、やましい意味ではないぞ?ただその、永遠に一緒に……とか、思っていただけであって……その、な……?」
──無理だ、無理すぎる。この死神、思ってた三倍やべぇ!!
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