第18話 がっかり半分

どうやらコーヘイさんとレオさんは料理が結構得意らしい。

 

 朝食はパイ生地に粒あんと小さく切ったお餅を包んでホットサンドメーカーで焼いたものだった。

 サクサクの食感とお餅のモチモチがたまらなくて、

「こんなのコンビニにこれ売ってたら絶対買うのに」

なんて思った。

 

 昨日の夜ご飯のハンバーグも湯煎の温度、焼き方等拘っていて、まるでお店の味だった。

ウチのキャンプは料理は適当なんだな、と思う。

簡単な物が多いし、レトルトもよく使う。

今度私もちょっと手の込んだ物作ってみようかな。

 

レオさんはひとつお餅パイを余分に作って4等分した。

てっきり「おかわりかな?」とちょっと期待してしまったけれど、レオさんはお隣に持っていった。

…自然にこういう事が出来る人なんだ。尊敬する一方、ちょっとがっかり。

隣の夫婦は中国語でレオさんにお礼を言い、子供達はSUPをやりたいとせがんできた。

子供達は2人とも初めてとの事だったので、私とレオさんが1人ずつ子どもを前に乗せて浅瀬を行き来して遊んだ。

私の前に乗った子は小学4年生の男の子。

最初は緊張していたけど、すぐに慣れてパドルを持って膝立ちで漕げるようになった。

会話が続かずに困って

「日本語も中国語も喋れて凄いね」と言うと、

「まーね。じいちゃん、ばあちゃんもそうだけど、母さんも日本語出来ないからね。物心ついた時から自然に話してるだけ。」

と、照れながらもドヤ顔をしている。

「でもあっちのお兄ちゃんヤバいって。あの金髪の方。日本語、中国語、英語にドイツ語、あとなんかも喋れるって言ってたぜ。じいちゃんと昨日中国語で話してた。なんか言語の研究してるって言ってたし。」

 驚いた。そんなに喋れるんだ。

レオさんて、実は凄い人なのかな。

めっちゃチャラいけど。

「あれ彼氏?」

「違う違う。友達のお兄ちゃんの友達。」

私とレオさんは結構な年の差だと思うが、子供から見れば大差ないのかな。

テントに戻る頃には昨日悪口ばっかり言ってた子供達が、近所の可愛らしい子供達になっていた。


 

 少し休憩したあと、撤収作業に取り掛かった。

今回は調理関係や食材を持ってきていないので、撤収作業は私がダントツで早かった。

1番物量の多かったのはレオさんだけど、昨日のうちから片付け初めていたんだろう。

スムーズに片付けをしてSUPを返却しに行った。

 私も葵兄弟の撤収作業を手伝って、レオさんが戻ってくる時には大体片付けが完了した。

 

ここの景色は素敵過ぎて、何だか後ろ髪を引かれるような気持ちで私たちは帰路についた。

 




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