きもだめし

平 遊

プロローグ

 田貫町墓地たぬきまちぼちの片隅にて。


「じゃあ、作戦通りに。みんな、明日の夜はよろしくね」

「わしらに任せておきなさい。みな、配置は覚えたな?」

「私……ちゃんとできるかしら」

「大丈夫、野々村さんはそうしているだけでみんな怖がるから」

「ちょっと、それどういう意味かしら?」

「俺は? 驚かした方がいいか?」

「ダメダメ。椎名さんも黙って立ってるだけで十分怖いから。驚かすとか、やりすぎ」

「じゃあ僕は?」

「そうだなぁ、根本さんは……無駄にイケメンだから、ちょっとくらい驚かしてもいいかも?」

「こんな感じ?」

「わっ! そうそう……その首の角度、やっぱりアリエナイから怖いね」

「では今夜もう一度練習をしておくかの。慶、お前はもう帰りなさい。ご両親が心配するぞ?」

「うん、わかったよ、住職……じゃなくて、田中さん」


 ヒソヒソ声が止まったかと思うと、ひとりの少年が墓地から出て来た。

 少年の名は、安村 慶やすむら けい

 田貫町出身で、田貫小学校に通う小学6年生だ。


「楽しみだなぁ……明日のきもだめし。内藤さんと一緒に回れるといいなぁ……内藤さん、『怖い~』とか言って、抱き付いてきたりして。ふふふ~」


 慶は、墓地から家へと続く暗い道の中を、飛び跳ねるような足取りで家へと向かった。

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