第5話 鬼ごっこ開始!

「着替えましたね?じゃあ、またがって。いきますよ…」

黒いローブを着込んで、フードを目深にかぶった男が、手を挙げる。

「鬼ごっこ…スタート!!」

会長の声にあわせて、ピィィーッと音がして、startの赤い文字が空に浮かぶ。

『1,2,3,4,5,6…』

刻一刻と、余裕が減っていく。とにかくフィールドのぎりぎりまで離れてやろうと、ひたすらホウキを飛ばす。ローブの裾が風になびく。フードが脱げてしまう。フィールドの結界付近に、滝川がある。滝の裏側に入って、ばれたらすぐに逃げられる、地上に上がる穴付近に陣取る。…さすがに、いっきに魔力使いすぎてちょっと疲れた。あと、とばしまくるとまっすぐ飛べないからちょっと酔った。うぇぇ…。

『57,58,59,60』

ブワアッッ――――!

フィールドを、強い風が駆け抜けた。…鬼ごっこ、スタートだ。

まあ、いくら会長といえど、フィールドの一番遠いはじっこにくるのは、きっと何分かかかるはず。どこに行ったのかすら、あっちは知らないんだから…

「見っけた」

髪から水滴を垂らしながら、会長が滝の裏まで来た。近づいてくる。

「…うわァあァァあッ!」

大急ぎでホウキを急発進させる。全速力でまこうとしても、会長は半径2m前後でぴったりはりついて、全然まけない。

「なんで居場所が分かったのか不思議なようですね!追いかけつつ、教えてあげますよ!」

「ウワァアァァァア!あっち行けぇ!」

意味不明な状況。ひたすら逃げる。魔法で姿を消して、自分にスピードアップかけたり、逆に会長に減速かけたり。けど、間は開くけどまけない。腹の立つことに、会長は悠々とおしゃべりなんかしている。

「すぐ近くにいることは分かってますよー。どこに行っているかもね。だって…魔力の痕跡、だだ漏れてますから」

会長の言葉に、ホウキを止める。…魔力の、痕跡…!?

「うそ、そんな…」

そんな初歩的なミスを、私が?後ろを振り返ると…ピンク色の、キラキラした…魔力の跡。消すの、忘れた…?いやいや、私はちゃんと最初に消した!魔力をホウキの中に押し込んで、痕跡が残らないように…

「なんで痕跡が残ったのか、分かりませんか?」

いつの間にか、会長がすぐ近くまで来てた。しまった…!あわててホウキを動かす。

「スピード出しすぎは良くないですよ~。そんなに魔力使ってると…」

逃げる。ひたすら。もう一度、姿を消したまま林の奥の洞窟に逃げ込む。すぐにホウキを手に取って、魔力を…押し込む。綿を詰め込んでいくイメージで…

「また隠れるんですか?芸がないですねえ、あなたも…。おや」

またしてもすぐ隠れ場所を見つけた会長が、さっきのように入ってくる。痕跡が消えたことに気づいたのか、目を見張って…目を開けた。綺麗な、透明感のある、アクアマリンの瞳。美しい、という言葉がこんなにも似合う人、初めて見た。

「…魔力の跡、消したんですね…入り口で消えている。どこにもない」

床を凝視ぎょうししている。

「あ~あ、これじゃもうどこに行ったか分からないじゃないですかぁ。教えるんじゃなかったなぁ」

はぁあ…と大きなため息をついた。会長が下を向いた隙に、向こう側の出口穴から飛び立つ。前進全力!!

「いた」

ほぼ同時に、会長が飛び立つ。いや、なんで!?

「居場所はバレバレでーす。無駄な抵抗はやめなさーい」

いつのまにかメガホンを手に持って、警察ごっこする会長。めっちゃ遊んでてムカつくわ~!警察はもっと大変だろうに、私にも警察の人にとっても失礼!

「仕方ない…魔力全部ぶっこむか」

どうせ居場所はばれる。姿を消したって意味ない。残り時間は…あと、2分。あと少し逃げ切れば…私の勝ち!ホウキを持つ手に力をこめる。いけ…!

シュ――――ッ!今までとは段違いのスピード。会長もついてきてない。よかった、これで、勝て、る…

瞬間、目の前が真っ暗になった。

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