蜜より甘い罪に堕ちて~義妹はお兄さまを取り返したい~

鵺野かげり

1.ねぇ、お兄さま……あの人のどこがいいの?

 お兄さまったら、もう……さっきから、お仕事のことばっかり。ねぇ、少しくらい可愛い義妹……真姫のことを見てくれても、よろしいのではないですか?


 ふふ、そんな顔しないでください。怒ってなんか、いませんよ……ちょっと、寂しいだけです。

 だって、わたくし……今日はお兄さまの好きな和牛の赤ワイン煮を作って、お帰りをずっと待ってたんですからね。

 お兄さまが『美味しい』って言ってくれたら、それだけでわたくし……うふふ、なんでもしてあげたくなっちゃいます……なんでも♡


 ……でも。でもね、あの人──あの“婚約者”のお話になると、急に真顔になるの、ずるいです。まるで……まるで本当に、好きみたいな顔して。


  ……違うんですよね? 家同士が決めただけだって。そう言ってましたよね?


 でもわたくし、見ちゃったんですよ?

 携帯端末に保存していた、あの女とのツーショット。

 あんな顔……私には、見せたこと、ないのに……。

 真姫だって……お兄さまに、たくさん笑ってほしいのに。


 ねぇ、お兄さま。ちょっとだけ……肩をお借りしてもよろしいですか?

 えへへ……ん、あったかい……お兄さまの匂い。とても落ち着きます……


 ふふ……こうやって耳元で囁くと、くすぐったいですか?

 お兄さまの反応、すぐ顔に出るから、わかりやすくて……かわいい♡


 ねぇ、見て……真姫の指がお兄さまの髪を撫でてるの、気づいてます?

 こうやって、誰にも触らせたくないくらい、特別に大事にしてるのに……それなのに、あの人が婚約者だなんて……ねぇ、ずるいと思いませんか


 ……今、困ったなって顔しましたね?

 だめですよ。逃げないで。


 だって、真姫のほうが、ずっとお兄さまを見てきたもの……一緒に暮らして、隣で笑って、泣いて……そうやって心も体も、ずっと寄り添ってきたんですもの。


 あの人に、お兄さまを満たすことができますか?

 ねぇ、お兄さま……真姫のこと、どう思ってるの?

 可愛い妹? 家族? それだけ?

 もしそうなら……このまま、耳元に唇を近づけて、囁いたりなんて、できませんよね?


 あら……お兄さまの鼓動、速くなってますよ?

 ふふふ……やっぱり、わたくしだけは知ってるんです……お兄さまの本当の心。


 くすくす……今日はこれくらいにしてあげますね。

 だって、焦らすのも楽しみのひとつなのですから。


 おやすみなさい、お兄さま……甘い夢を見てくださいね?

 わたくしの声で……いっぱい、包んであげますからね……♡

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