第20話 放課後の、買い物
学校が終わった後、澪は友達のルナ、ジュリ、ノアと一緒に買い物へ出かけていた。
「まずはリンゴ飴が食べたい」
電車を降りてすぐ、ノアがそう提案した。
そのままコスメを買いに行くと思っていた澪は目をぱちくりとさせる。
「ノアは好きだねえ」
「じゃあルナは摘み食い禁止ね」
「それは無しじゃん、一つちょうだいよ!」
ルナ達がなれた様子でリンゴ飴の店に向かうのに、澪は後ろからついていく。
ノアがカットされたリンゴ飴の大サイズを受け取ると、すぐにルナとジュリが一つずつ摘む。
「はい」
そう言って、ノアは自分が食べる前に澪にカップを差し出した。
「えっと、いいの?」
「みんなで食べたほうが美味しい。そのための大サイズ」
ノアに勧められて、澪は「いただきます」と言って一つ口に運ぶ。
「んー!」
昔お祭りの屋台で食べたのとは違う、優しいあまさと共にシナモンの香りが鼻から抜ける上品な味だった。
「美味しい?」
ノアの質問に澪は勢いよく頷くと、ノアは嬉しそうに笑って自分もリンゴ飴を食べる。
「次はとりあえずタピオカかな?」
「え?」
「ほら、行くよ!」
ルナに手を引かれ、澪の寄り道はまだまだ続く。
「澪はどれにする?」
3人が頼み終えた後、そう質問されるが、澪は何があるか分からない。
「甘いのと、そこそこの。それかいちごとか抹茶とかのがいい?」
ジュリが助け舟を出してくれたので、澪は「じゃあ、そこそこのやつで」と返事をした。
「それじゃあ澪は鉄観音烏龍ミルクティーだね!」
「え、なに、鉄観⁉︎」
「大丈夫、美味しいから!」
ルナが注文してくれた聞いたことがあるようで無さそうなドリンクを受け取ると、澪はジッと見つめる。
「烏龍茶なのに、牛乳?」
「大丈夫、私もたまに頼むし美味しいよ」
ジュリに背中を押され、澪は一思いにストローを吸った。
次の瞬間、口の中に丸い粒々が大量に侵入してくる。澪はビックリして口を離すと、頬を膨らませたまま目を大きく開いた。
その様子を見て、ルナとジュリが爆笑している。
澪は少しずつ飲み込むと「ふう」とため息を吐いた。
「ちょっとびっくりしちゃったけど。私これ好き」
甘い烏龍茶は不思議な感じがしたが、あっさりした感じで澪の好みだった。
澪の言葉を聞いて、ルナとジュリはハイタッチをしている。
その後は、タピオカ片手に目的地であるコスメショップまで話しながら向かう。
「ねえ澪、今度料理を教えてくれない?」
その道中、話の流れからジュリがそう澪に頼んだ。
「私なんかで良かったら」
澪が了承すると、ジュリが嬉しそうに笑う。
その様子に、ルナが目を細めながら口を挟んだ。
「ジュリもかれぴに作ってあげんの?」
「まあな」
ジュリが肯定すると、ルナは「あー熱い熱い!」といってチャチャを入れる。
「ルナも作ってあげればいいでしょう?」
「無理! 私はもう別れたから!」
「早くない?」
ルナが彼氏と別れた話は初耳だったのか、ジュリが呆れるように驚いた。
「アイツは体目的のクズだった! なんで私は男運がないんだー!」
「だから私は言った。よく知りもしないのにOKする方が悪い」
頭を抱えるルナに、ノアがとボソリと呟いた。
「まあ、ルナはそれでいいんじゃない? 緩いより身持ちは硬い方がいいよ」
ジュリが苦笑している横で、澪は少し大人な話に顔を赤くして黙り込んでいる。
「私も身持ちは硬い。この中で大人なのはジュリだけ」
そう言って、ノアがタピオカを飲みながらピースすると、ジュリは「そんな事はいちいち言わなくてもいい!」とチョップを入れた。
「ほら、澪はこんな話慣れてないんだから。それにさ、ルナ。料理できるようになればいい男の胃袋が掴めるかもよ?」
「私の胃袋もすぐ掴める!」
ジュリとノアがルナを励ますように言うと、ルナは顔を上げて澪の肩を掴んだ。
「澪頼む! いい男を捕まえれる料理を教えてくれ!」
必死な様子のルナに、澪は苦笑するしかない。
「それは私には分からないけど、料理はおしえるね」
ルナに納得してもらい、後日料理教室を開くことが決まった。
その後、コスメショップでは意外と時間がかかり、外に出ると日が沈み始めていた。
駅に向かう途中で、澪のスマホが震えたので歩きながら確認すると、碧からメッセージが届いていた。
「暗くなってきたし駅まで迎えに行こうか?」
駅から碧の家までそこまで遠くないのだが、いつも通り過保護な様子に澪は思わず口元が緩む。
「おやおや、男ですかな?」
「澪をこんな顔にさせるのはどこの誰なのかな〜?」
ルナとジュリに揶揄われ、澪の顔は赤くなっていく。
「優しい?」
ノアのピンポイントな質問に、澪は顔を真っ赤にしながらもゆっくり頷いた。
「「「へ〜〜〜〜」」」
澪の反応に、ルナ達はニヤニヤとしたのであった。
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