前世✖️現代 蘇る源平合戦の記憶と今

はる❀

第一話 因縁の相手

「お互い、寝首をかくのはなしね」

「……そんなん、当たり前じゃろ。お前とは違う」

「ははっ、それはよかった」



 何がよかったのか。まさかの遠征ペアとなってしまったこいつは、眞城ましろ九郎くろう因縁の相手である。

 小柄で色白、さらりとした黒髪と凛々しくもはっきりとした目元に長い睫毛、そして意志の強そうな整った眉は、悔しいことに世間一般で言う美少年だ。年は十三の割に、小柄であるからなのかやや子供っぽく見える。楽しそうな様子の眞城は、「じゃあさ、」と、声変わりがするかしないかの中性的な声を俺に向ける。



「明日の魔物討伐。共闘は?」

「なしで」

「了解」

「……ほんまにわかっとるんか?」

「わかってるよ。僕と朝霞くん、どっちが先に魔物を討伐できるか競争ってことでしょ」



 楽しそうに言う眞城は、どこまでも謎の余裕が感じられる。

 そして……今眞城が言った『朝霞』というのが、俺の苗字である。



「そういうこと」

「明日、魔物討伐がんばろうね」

「……ほぉじゃな」



 お互いの前世が前世だというのに、眞城のこの飄々としたような友好的な感じは、やや調子が狂う。俺は小さくため息をついていると、眞城は「明日早いから、おやすみ」と言って早々に眠ってしまった。



 ……



 ……。



 ……いや、寝首はかかんと約束はしたけれど。

 とはいえ、無防備すぎやしないか。



 俺は朝霞あさか国成くになり。前世に平教経たいらののりつねの記憶を持つ。

 平教経なんか聞いたことないって思ったそこの人。平安時代末期に起きた、源平合戦くらいは聞いたことがあるだろうか。


 この戦いは単純な源氏と平家の戦と思われがちだが、ここには色々と深ーい因縁がある。今回その辺りの話は省略するが、平教経というのは平家随一の武将で、平家最強とも謳われた武士だ。

 だがそんな平教経を含む平家一門を壇ノ浦にて滅亡へと追いやったのが、源氏……源義経みなもとのよしつね。まさに戦の天才とも呼ばれたこの男に、壇ノ浦にて最期まで挑んでいこうとしたのが、俺の前世、平教経でもある。


 だが、なぜ挑みかかろうとしてあきらめなければならなかったのか。

 それは義経が、約二丈六メートルも離れた船に飛び移り飛び移り、逃げ遂せたからである。これがのちの世に言う『義経の八艘飛び』。

 ……信じられるか? あの重たい鎧兜を纏った人間が、六メートルもの大ジャンプをして逃げ遂せるのだ。

 これには俺の前世もあきらめるしかなかったと思う。だから仕方なく、教経に挑みかかって来た他の者共をがっしと掴み、『死出のお供をしろ!』と言って諸共入水したのだ。



 ……前世。前世ながら、物凄い猛将だと思う。誇り高く、最後まで果敢に挑んでゆく、最強の戦士。平安時代末期なんて最早相当過去の歴史の出来事だけど、俺はそんな平教経を尊敬しているし、現代でも、もっと知られていてもいいのになって、思う。



 そして、今。目の前で静かに眠ってしまったこいつ……眞城こそが、源義経の記憶を持つ、いわば生まれ変わりである。

 向こうを向いて丸まって眠る眞城は、なんとなく猫っぽい。飄々としていて、自由な感じだからかもしれない。それでいて、純粋。


 ……。


 ……はぁ。

 俺は小さくため息をつく。



 よりによって、なぜ眞城と遠征ペアになってしまったのか。それは半日ほど前に遡る。




 ◇




 ― 京・院の御所 ―



長門国ながとのくに・壇ノ浦に魔物が多数出現したとのことであるが」



 仰々しく言うは、法皇様である。

 俺のように前世の記憶を持つ者は世界でも少数であるらしいが、その中でも『武士』の記憶を持つ者は、こうして天皇家に仕え、魔物を討伐するという役割が与えられる。そのために俺たちは佩刀が許され、時折こうして招集され、任務をこなす。

 今日は法皇様からのお達しで、俺たち……天皇家にお仕えする侍従じじゅうたちが集められたというわけだ。



「壇ノ浦に詳しい者はおらぬか」



 壇ノ浦。まさに、俺の前世でもある平家一門が散った海である。詳しくないわけがない。だけど……また行きたいかと問われれば、それは話が別である。

 だが、平家の記憶を持つ者の考えは殆どが同様、あまり行きたいと言い出す者はいない。俺はちらりと辺りを見回した後、決意を固めた。



「 「は。壇ノ浦でしたら―……」 」



 そこまで言ったところで、誰か別の者の声が重なっていることに気が付く。

 はっとして声のした方を振り向くと、そこにいたのが眞城九郎……つまり、前世に源義経の記憶を持つ者だったのだ。しかも、眞城のことは知っている。現世であっても、。それほどの因縁の相手だ。



 うっわぁ………こんなことなら名乗り出なければよかった……そう思うも、もう遅い。法皇様は満足そうな笑みを浮かべながら俺たちに視線を遣る。



「ほっほ。源と平を前世の記憶に持つ者同士であれば、さぞかし壇ノ浦に詳しいことであろうな。では眞城、朝霞、両名に、壇ノ浦の魔物討伐を言い渡す」



 だが、こうなってしまっては、もう、引き受けないわけにはいかない。



「 「承知仕ります」 」



 言葉まで、タイミングまで重なる合いっぷり。残念なことに俺は、こうして眞城と討伐遠征ペアを組むこととなってしまったのである。



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 この度は本作をお手に取って下さり、誠にありがとうございます❀

 本作に出てくる朝霞と眞城ですが、彼らの声は現在声劇ボイスドラマとして動画化しております^^

 彼らの声で再生して頂くとよりお楽しみいただけるかと思いますので、ぜひこちらも一緒にご覧ください✿


https://www.youtube.com/watch?v=pTGo8dRbAj8&t=37s


 またどうぞ、小説の方も引き続きお楽しみください!

 よろしくお願いいたします❀

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