江里 伊織(えり いおり)

オアシス

暑く枯れた 砂の波を漂い

いき続けようともがく

海の乙女

永遠を夢見た

乙女よ、海の乙女よ。


彼方に響く海鳴りを遠く

聞き続けて、なお。

故郷(くに)に帰ることも出来ぬまま

今朝もまた、海に戻る望みを胸に

今宵を夢見て砂を渡る


さらば

沈んでいった思いよ

砂の中に

切なさを沈めよ

そして


漂うそのさきに視えるは

塵のように浮かぶ星

月は

天空に浮かび、願いの星々が希望への

扉を開く


涙と共にたどり着く

にじんだ夜の、この先に広がる砂原のなかに

ぬばたまのこの黒髪をなびかせて

眠ることのなきまま、はるかに見える水場にたどり着く

望み、安らぎ、そして乞い願ったあの場所に


………彼女はいのちを振り絞り

   水に己を浸そうと

   いたんだ足を進ませば

   そこは、夢かまぼろしか

   冷たき水が足先に

   

   乙女よ、今宵は安らかに休みたまえ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る