女の子に転生してからのある日のこと、家出したNTR幼馴染の娘を拾いました

アイズカノン

第1話 女の子に転生して、家出少女を拾った話

 それはある日の放課後。

久しぶりにスマホにメッセージがきた時のこと。

付き合い始めてある程度の期間がたった頃のこと。

校舎裏に呼ばれた僕はある光景を見てしまった。

それは、学校で有名なイケメンの先輩と幼馴染が一緒にいる光景。

嫌な予感をした僕の心理を読むように幼馴染は僕に告げた。


『別れましょう。私、先輩と付き合うことにしたから』


 その言葉を聞いた僕は逃げたい気持ちで……いや、逃げた。

情けなく。どうしようもなく。

気がついたらよく知らない街に来ていた。

親には『ここに来てしまったから、遅れて帰ります』と海岸の写真とともに連絡した後、帰ろうとして……、ボールを追って飛び出した幼い少女を見つけて……、身体が勝手に動いて……、それから、それから……、僕はその幼い少女を庇って……、車に……、そこで僕の記憶は、『一旦』途切れた。



 なんで今更こんなこと思い出したのかと考えていたら……そうだ。

目の前で雨に濡れて、うずくまってる少女がどこか僕の幼馴染――市ノ瀬いちのせ夏帆かほに面影――黒髪のセミロングにブレザーの制服――が似ているからだ。


「どうしたの?、そんなところで」

「別に、あなたには関係ないでしょ」

「そうね。でも、私はそういうあなたは見過ごせないの」

「とんだお人好しね。流石『窓際の聖女様』の七瀬ななせみおさん」

「そんな冗談言えるなら問題なさそうね」

「ちょっと何を!?」


 私はうずくまっている目の前の少女を無理やり引っ張って立たせて、強引に連れていく。

「何をするき」って抵抗するけど、流石にここに来る道中で体力をだいぶ消費したようで、私の力でも難なく連れていく事ができた。

仮にこの少女があの子の娘なら見過ごせない。

それはかつて『僕』が置いていってしまったものに対する精算でもあるから。


@


「ほら上がってって。お母さん」

「はーい。あらどうしたの?、その子は」

「ちょっとその辺で拾ってね。ごめん、お風呂沸いてる?」

「うん、一応ね。入っていきなさい」

「ありがとう」


 私は道端で拾った少女を強引に引っ張って、お風呂場まで連れて行いく、問答無用で、こういう時はこういうやり方が良かったりする。


「さっさと脱いでお風呂に入って」

「どうして……、いや、ありがとう……」

「どういたしまして」

「ところで何してるの?」

「うん?、学生証探してる。一応親御さんには連絡しないとね」

「まって……、それは……」

「家出、なんでしょ。下手に補導されて警察から連絡いくよりは多分安心できるとは思うけど」

「っ…………」

「安心して、なんて言えないけど。あなたが困らないようには動くつもりだから」

「うん……。ごめん」

「早く入りなさい」

「はい……」


 少女のカバンから学生証を取り出した。

市ノ瀬いちのせ凛羽りんは】。

それがこの子の名前。

思わず「やっぱり」と呟いてしまったが、特に疑問に思ってないようで安心した。


@


 お母さんに頼んで保護者に連絡して、とりあえず一晩だけ泊まることを伝えた。

そして風呂から上がった凛羽ちゃんをリビングで夕飯の待機とお母さんの話し相手にさせて私はお風呂に入った。


(まさか、同一時間軸に転生するなんてね……)


 最初こそ女の子に転生して困惑したけれど、七瀬澪として生きてもう10数年。

転生前と変わらず良い両親には恵まれた。

理解してもらえる程度には。


 それにしても、まさかあいつの……夏帆の娘と出会うことになるなんて。

僕は思ってもみなかった。

推定:家出の少女。

何かがあった。

そのいったい何があったのか分からない。

こればかりは本人に聞くしかない。


「はぁ……。なんてこったい……」


 とりあえず天井を見つめる。

きっとこの転生にも意味はあるはず。

神の慈悲か、それとも気まぐれか。

だけど僕の心に『復讐』というものは、出てくるは出てくるけど。

目の前で困っている人を放っておくほど私は無慈悲にはなれない。

ならどうするか。

僕は、私は、あの子――凛羽を助けよう。

過去の僕のことなんて関係ない。

それが今の私なのだから。

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