第6話 魔獣という生き物
「ガアアアアアアア!」
竜の口から火球が放たれる。
「セラフィーナは後ろに下がって援護を頼む!」
マントで火球を弾きながら前に詰め、竜と相対する。近くで見ると顔だけでも俺の身長くらいはありそうだ。その上竜の鼻息を体で感じる。あの鱗で守られた身体にどれだけのダメージが通るかは分からないが、首元を狙って剣を振るう。
「…マジか。」
結果、その斬撃は傷一つつけることなく終わった。反撃と言わんばかりに目の前の敵を引き裂かんとばかりに腕が振り上げられる。
「
「ガッ!?グルルルルル!」
すかさず氷の矢が竜の目に突き刺さる。寸前で目を閉じたようで目を潰すことは出来なかったが、相手の反撃は潰せたようだ。その隙に一度後ろに引く。
「近づくのは不味そうだな。」
斬撃が通じず相手の攻撃も一撃でやられかねない以上接近戦は避けたほうがいいだろう。ここは地の利を生かす!
「森の中から攻撃して撹乱しよう。セラフィーナの魔術で気を引いているうちに俺がデカイ一撃を叩き込む。」
「分かったわ。」
二手に分かれて茂みに飛び込む。その間の遠距離攻撃はセラフィーナにしか出来ない。
「
セラフィーナが属性を変えて撃ち込んでいたが、そのどれもが利いているように見えなかった。ただ攻撃を打ち消しているわけじゃなく、単に鱗で弾いているだけのようだ。つまり、魔術自体は当たっている。なら、
「
剣に岩を纏わせ、大きな岩の大剣にする。取り回しが悪くはなるが、この質量ならあの鱗を叩き割れるかも!
「セラフィーナ!動きを止めてくれ!」
「任せて!
さっきよりも大きな氷の矢が、竜の足元に突き刺さり、竜の身体を半分ほど凍らせて動きを封じた。
「ハアアアアアアア!」
そのまま竜の側面から、胴体に岩の大剣を叩きつけた。すると、パキンという音とともに鱗の一部が割れた。
「よし!」
行ける!と思った次の瞬間、
「ギャアアアアアアアアアアアアア」
竜がすさまじい雄叫びを上げながら、口にありったけの空気を吸い込み始めた。急に悪寒が走る。そして口から先程狼を俺達ごと焼き払おうと放たれた業火が放たれた。その熱気で拘束していた氷は溶け、しかもそのまま時計回りに身体を動かし始めた。おそらくこのまま纏めて薙ぎ払うつもりなのだろう。
「セラフィーナ!こっちに回ってくるんだ!」
「う、うん!」
おそらく俺がブレスを弾いたのをみていたからか、セラフィーナの方を優先して狙っている。反対側にいた俺も反時計回りに走り、セラフィーナと合流する。
「早くマントを!」
「わかってる!」
素早くマントを外し、広げて前に突き出す。しかしさっきとは打って変わってそこまで長く耐えることはなく一瞬で熱は過ぎていった。どういうことだ?とマントを下ろす。すると、
「なっ、なんだと!?」
「これは!?」
森の木々が辺り一帯焼き払われており、辺りは開けた地形になっていた。拘束を解きつつ纏めて焼き払う二重の策だと思っていたが、どうやらさらに地形を変える三重の策だったらしい。
「これで奇襲は出来なくなったわけか。」
「ガアアアアアアア!」
そのまま竜が突っ込んでくる。流石にあれを受けるのは無理だ。ある程度引きつけて、セラフィーナからの援護を待つ。
「
再びセラフィーナが拘束しようと魔法を打ち込む。
「ガア!」
しかし、竜は小さなブレスを打ち、魔術を打ち消した。
「「えっ(何)!?」」
二人して呆気にとられてしまった。竜がこれだけ頭の回る存在だったなんて思っていなかった。これが、魔獣か……。まだ、戦いは続きそうだった。
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