原罪有者は現在勇者

たこ焼きはたこ抜きでおねがい

第一章 星屑の勇者

第1話 現在勇者

太陽が照り、草原が広がる、そんなのどかな光景を壊さんとする勢いで馬を走らせ、一台の馬車が道を駆けていた。その馬車の中には御者を除いて4人組が乗っていた。

「さて、皆聞いてくれ。」

その中のうちの1人、金髪金目の青年が話し始めた。

「今回の騒動が起きた村の付近は魔獣の出没が多い場所だった。本来なら僕たちはその付近で魔獣を相手に訓練する予定だったが、最近になってドラゴンが出没し、集落が襲われる危険性を考え討伐することになった。おそらく原因は…って、お前ら大丈夫か?」

青年が向かいに座った2人を心配した。方や黒目黒髪の14歳の少年、方や金髪碧眼の同じく14歳の少女である。この2人の顔色は酷く今にも吐きそうな様子であった。

「あー、とりあえず袋を出そうか。先に出した方が落ち着きそうだ。」

そう言って青年は2人に袋を渡した途端──

「「オロロロロロロロロロ」」

汚い音が馬車の中に響いた。

「最初は辛いかもしれないが慣れておかないと大変だぞ。エリオ、セラフィーナ、これから馬車に乗る機会なんていくらでもある。特にエリオ、君は勇者として多くの人々を救わなければいけないんだからな。」

青年は、そう2人に告げた。

セラフィーナは少女の、エリオは少年の名前である。そう、黒目黒髪のこの少年が新しい勇者エリオ・リグレットだ。

─────────────────────

「スター、とりあえず俺達が倒すのはドラゴンって事でいいんだよな?」

少し持ち直し問いかける。

「まあざっくりいえばそういうことになる。」

彼の名前はスター・ブライトネス、俺の師匠のような存在だ。俺は勇者とは言え幼いし未熟だ。だから俺がある程度勇者として十分に役目を果たせるようになるまであれやこれやを教える教育係としてきたらしい。

「実際ドラゴンは魔術や奇跡の類が効きづらいって聞くけど具体的な作戦とかはあるの?」

隣に座っていた少女がそう聞いた。

彼女の名前はセラフィーナ・ベネディクト、俺の友人だ。彼女は魔術師でこの国では珍しく、魔術が扱える人間だ。

「確かに効きづらいことには効きづらいけど別に直接攻撃するだけが全てじゃない。やり方はいくらでもあるわ。怪我なんかは私が治すから、安心して色々やっちゃいなさい。」

スターの隣に座っていた緑髪の女性がそう言った。彼女の名前はエンジェリカ・ルクレシス、教会で一番の奇跡の使い手で、聖女と呼ばれている。

この3人が、俺を支えてくれる仲間だ。

「さて、そろそろ目的の村に着くころだと思うが…、」

とスターが言いかけた所で馬車が急停止した。。

「どうかしましたか?」

エンジェリカが御者に話しかけると、慌てた様子でこう返ってきた。

「皆さん、村にドラゴンが出没しています!」

「なんだって!?」

外からは住民の悲鳴や建物が崩れる音が聞こえた。

「ひとまず住民の避難とドラゴンの撃退だ!」

全員が武器を取り、馬車から降りて村に突入した。

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