尿管結石の治療体験記 日本医科大 ➡ 帝京大

@ft2e

第1話 結石が詰まる

3月。日曜の午後4時過ぎだった。


昼寝の途中で、突然、膀胱のあたりに激痛が走り目覚めた。

ぼくはすぐに分かった。尿管結石だ。


過去に何度も詰まっている。最後の入院から5年。いつ来てもおかしくはない。

ある意味、慣れてはいた。だが、今回は違った。痛みが強い。重い。


そして膀胱あたりというのが不思議だった。

尿管の途中を通過するときに激痛が走るのが常で、その場合は腰が痛むはずだ。


腎臓と膀胱を結ぶ尿管には、2~3箇所、狭いところがあり、そこを結石が通り抜けるときに特に痛みが強いことも知っている。

しかし今回は、膀胱に近い。

なぜそこなのか。疑問を抱きながらも、痛みに耐えるのが精一杯だった。


とにかく病院へ行かなければならない。だが今日は日曜。通常の外来は閉まっている。行けるのは緊急外来。選択肢は:


・関東労災病院(近い。診察が丁寧。感じが良い)

・日本医科大学付属病院(少し遠い。診察は普通。検査項目多め。5年前入院)


家族にタクシーを呼ばせ、関東労災に受け入れ依頼するように言う。

マンションのエントランスに這うようにして辿り着いた。

部屋着のままだ。痛くて、着替えができない。


5分後、タクシーが来た。


「関東労災までお願いします」


呼吸を荒げながら、後ろの座席に何とか転がり込む。出発。関東労災はどうだろうか。病院までの半分くらいまで来た。

おい受け入れてくれるの? 早く返事くれよ。

ようやく家族からの電話


「関東労災、断られた。他の患者で手が一杯だって」


「すぐに日医に電話して聞いて!」


そして運転手に叫ぶ。


「すみません、行先変更おねがいします! ニチイです。日本医科大学 武蔵小杉病院!」


タクシーはハンドルを切り返し、大きく道を戻っていく。

揺れる車体の中で、膀胱付近をえぐるような痛みが続いていた。

額からは汗が滲み、視界がかすむ。

病院に辿り着けるのか──ニチイ頼む──ぼくはただ、それだけを考えていた。


そして家族から着信。


「日医はOK。外来のオモテの入口から入れだって。」



10分後、日医に到着。この時、痛みは限界に達していた。


タクシーの後ろドアが開く。片足を外に踏み出したまま、激痛で体が硬直して足が動かない。


「だめだ…」


「ちょっと……大丈夫ですか?」


運転手に肩を担いでもらい(ありがとうございます)、病院入口までの数メートルを進む。受付の姿を必死に探す。


「佐野さんですね。」休日の受付職員が呼び止める。


「はいぃ…」


そう言いながら、入口を入ってすぐの、絨毯の上に四つん這いになってしまう。新築の病院。床はきれいで、このままここで寝て休ませてもらいたいくらいだった。だが激痛! 逃げ場がない。


「泌尿器の先生は今日はいません。内分泌の先生に診てもらいますので。」


職員はそう言い、車椅子を持ってきてくれた。

救急処置室へと押し込まれる車椅子。

強い痛みで吐きそうだ。喉にこみ上げるものを必死に押し戻した。



救急処置室は広く、2列に4個、計8個のベッド。カーテン仕切はあるが、開け放たれていて患者たちが丸見えだ。ベッドごとに高価そうな機器が配置。ぼくはベッドの一つに横たわる。


ぼくは、実は処置内容も大体分かっている。尿検査して血尿が確認できれば坐薬処方だ。CTに行くかもしれない。5年前の入院も日医だったのだ。


「…とりあえず、早く坐薬…」ぼくは強い痛みで潰れそうになりながら医師を待った。


待つ間にも、救急搬送の患者が2名来た。無言の人と、痛みで騒ぎ立てる人。看護師は氏名、住所、生年月日、年齢、身長、体重、電話番号を聞き、大声で復唱、テキパキPC入力する。周りの患者にも聞こえるが、プライバシー云々言ってる場合ではない。


ようやく、ぼくのところにも看護師と医師が来た。医師はキャスターに乗せたPCで過去履歴をチェックしているようだ。PC画面から目を離さずに言う。


「お待たせしました。えーと、佐野さんは前にも来てますね? また結石ですかね?」


30代中盤の女医さん。


「あの……痛くて ……坐薬ください」


「下腹部が痛いんですよね?

尿検査しましょう。あとレントゲンとCT。坐薬は少し待ってください。

他の疾患との判別が済んでからです」


「トイレまで行けるかな……痛くて立てないんです」


「じゃあ寝たまま尿道カテーテル入れて取ります?」 ──脅し文句ともとれる。絶対に嫌だ!


「あ…、いや…、何とか頑張ってトイレ行きます…」


検査が始まった。

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