トラック1 カノさんのアロマオイル耳マッサージ前編

時と場所 午前中/現実世界ではない和室の中


()内 ト書き

//SE SEの指示


(現実世界ではない、和室の中)

(主人公、その部屋の畳の上に寝かされている)

(カノ、何かを探し回っている)

//SE パタパタと歩き回る足音、右後ろから右前方に移動

「あれ~、どこだったかなあ」

「ここにあると思ったんだけどな~」

(主人公、目を覚まし、起き上がる)

(カノ、主人公に気づく)

「あ、起きた~? おはよう~」

(カノ、主人公の元に駆け寄る)

(カノ、右方から主人公に話しかける)


「気分はどう? 悪くない?」

(主人公、「大丈夫です」と答える)

「大丈夫そう? それは良かった~」

「たまにさ、この世界に来て具合悪くなる人間もいるんだよね~」

(主人公、ここはどこかと尋ねる)

「ん? ああ、ごめんごめん。まだ教えてなかったか」

「ここはね、君が元いた場所じゃない世界」

「見てごらん、外の景色」

(カノ、左方に移動する)

「ほら、何か気がつかない?」

(左方からカノの声)

(主人公、外の景色を見て昼であることに気づく)


「うん、正解。今、外の世界昼でしょ?」

「さっきまで私たちがいたとこ、夕暮れだったのにね」

(外ではセミが鳴いている)

//SE セミの鳴き声

「ここは……うーん、なんて言えばいいのかな?」

「現実世界とは似ているけど、ちょっと違うし、反対のことも多い世界」

「カタカナの言葉であったよね? こういう世界を意味する言葉」

(主人公、答える。「パラレルワールド?」)

「あ~、それだ! ぱられるわーるど~」

「ここでは時間が現実世界と真逆に流れているんだ」

「君がいた世界が夕方なら、ここはまだ昼間」

(主人公、呟く。「もしかして、ここが……」)

「うん、そう。ここが、私が普段住んでいる世界であって住処だよ」

(外で風が吹く)

//SE 風が吹く音


「ようこそ、私の世界へ」

「縁側もあるし、意外と悪くないでしょ?」

(主人公、呆然と頷く)

(左方の縁側で、風鈴が鳴る)

//SE 左方から風鈴が鳴る音、数回

「……と、無駄話はここまで」

(カノ、右方に移動)

//SE 足音

「……う~ん、どこだったかな」

(カノ、引き出しを何か所も開け閉めしている)

//SE 木製の引き出しを開け閉めする音

(主人公、尋ねる。「何を探しているんですか?」)

「ん~? あれだよ、あれ……」

「『あ』から始まるあの……あ、あった!」

(カノ、何かを取り出す)

//SE 引き出しで物を物色する音

「これこれ!」

(カノ、再び主人公に駆け寄る)

//SE 右方から近づいてくる足音

(カノの手にはアロマオイルの瓶)

(右方からカノの声)


「薬草とかの良い匂いする油? みたいなやつ」

「人間はこれでさ、しんどいところをもみほぐしたりするんだよね。違ったっけ?」

(主人公、尋ねる。「……アロマオイル?」)

「そうそう、あろまおいる! 私、カタカナ言葉苦手でさ~」

(主人公、尋ねる。「それを何に使うんですか?」)

「何って、これで君のお耳をもみもみするんだよ」

(にやりとして)「ふふふ、私は何でも知っているんだぞ、少年」

「君が仕事帰りで全身疲れ切っているということをね……」

(主人公、身体のだるさに気づく)

「ほらほら、もう一回横になりなさいな」

(優しく)「ここではぼんやりしていても、誰も怒らないんだからさ」

(主人公、横になろうとするがカノが止める)

「あっ、ちょっと待って」

「せっかくだし、私の膝を枕にしてみる?」

(主人公、戸惑う。「い、いいんですか?」)

「いいよ~。少年一人分の頭ぐらい平気、平気」

「さあ、お姉さんのお膝へおいで~」

(カノ、正座した膝をぽんぽんと叩く)

//SE 膝を叩く音

(主人公、カノの膝の上に横になる)


「よしよし、素直にごろんできていい子だね~」

(カノ、アロマオイルの瓶の蓋を開け、オイルを手に取る)

「ちょっと待ってね、準備中~」

(カノ、オイルを手に伸ばし、温めている)

//SE オイルを手に広げる音

「はい、準備完了」

「いくよ~」

(カノ、両耳マッサージ開始)

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