世界にはダンジョンが必要だと天使が言った
九十九
プロローグ 世界にはダンジョンが必要だと天使が言った
プロローグ 世界にはダンジョンが必要だと天使が言った
地球環境は最悪で、いつまでも戦争が各地で発生している現代
大気温の上昇、海水温の上昇による異常気象が頻発する現状、
そして、その中で変わらず紛争を継続する国家、団体
もはや地球は滅亡に瀕しているのではないだろうか
人々がそのように考えたとして、必ずしも間違いとは言い切れない
現在の状況はそのような状態であった
突如、大空に天使が現れた
「地球は死に瀕している、これを救済するため神は聖断をくだされた
世界を救済するため神は、ダンジョンを創造することをきめられたのだ」
天使曰く、ダンジョンから搬出される魔石には、エネルギーがありこれを使えば、自動車を動かし飛行機を飛ばすことも可能だと言う
この魔石により地球環境は過二酸化炭素状態から救われるだろう
同時に、大量の石油燃料を使って飛ぶ飛行機は墜落する頻度が増すだろうと
これらは、神の聖断であり異を唱える者どもへは天罰が下るであろうと
天使曰く、
魔石は、ダンジョン内で産出される
多くは、魔物を倒して得ることになるだろう
しかし、階層を進めば鉱床を発見することもできるであろう
人間どもよ、しかし魔獣を倒すことは難しい
汝らの武器は、ダンジョンの内では威力を発揮することはないと
天使に予言されたように、ダンジョン内では電子を使った兵器はすべてが使用不能になった
しかし、銃は使うことができた、しかしその場合は大幅に威力が減殺されたのである
弓矢の威力の方が高いことがのちに実験で検証されることになる
天使曰く、
人間たちよ、魔獣を倒すことに躊躇してはならない、また逃げることも許されない
なぜなら、ダンジョン内には、魔獣が生まれ出るそれを倒さず放置すればいずれそれはあふれ出るであろう
ダンジョンが生まれて放置されたダンジョンはやがてあふれだしたのだ
その場合、既存の武器がある程度効果を発揮し、何とか殲滅することに成功する
(地上に出てくれば、兵器も効果を発揮することができた)
しかし、街がほろんだ
某国では、この性質から、戦略爆撃機によるバンカーバスターを使用したダンジョン攻撃を実施しようとした
これで、本当に魔石がとれるのかどうか不明だが、彼らは合理的な考え方を好むのだ
発進した戦略爆撃機は、突如天から降る光線により撃墜された
このような作戦はその後行われることはなくなったという
一機2000億円の爆撃機を謎の攻撃で落とされてはたまらないだろう
こうして人々は、わが身を盾にダンジョンに潜ることになっていったのである
天使曰く、
人間たちよ、恐れず迷宮に挑めば、祝福を得ることができるであろう
これは、汝らへの祝福である
神から与えられるという祝福(スキル)は、劇的にその人間の戦闘力を上げることになる
世界いやでも変化していくことになった
ダンジョンから齎される魔石は、確かにエネルギー革命をもたらした
当初、この魔石はどうしようもないものであった
魔石からエネルギーを取り出すことができなかったからである
だが、のちにファウスト博士(ドイツの科学者だという)という人物が魔石を精製し魔晶に錬成しエネルギーを安定的に取り出すことに成功したのである
電動自動車はすぐに魔晶自動車に置き換わった
相変わらず飛行機は燃料による飛行を続けていたが、墜落事故の頻度は明らかに有意に上昇していた
謎の光は計測不能、予測不能である
件の戦略爆撃機も護衛戦闘機の目の前で撃墜されている
光の速度で発射される謎の兵器を止めることなど不可能であった
世界は、このように徐々に転換しつつあった
そしてその変化を決定的にしたのは、神の祝福を受けた者達が現れ始めたことによるっことだった
ダンジョンエクスプローラー、シーカー、トレジャーハンター、冒険者、探索者などいろいろと呼ばれる彼らだったが、スキルを手に入れた彼らの戦闘力は圧倒的に上昇する傾向があった
それは人間としての限界を超えるような場合もあったのだ
ダンジョンができて20年
世界は変わった
ダンジョン第2世代の登場、スキル獲得者の子供には、スキルが遺伝する場合があることが発見される
ここにおいて、スキル保持者は、スキル保持者との婚姻を優先的に行わせる制度が各国で作られた
さらに、望むものには、多重婚も許された
この政策の裏には、ダンジョンによる複数の犠牲者が存在する
ダンジョン冒険者の多くが命を落としたのだ
だが、日本のような少子高齢化国家には、良い影響もあった
命が簡単になくなる世界になった所為で、多くの子供をうむ必要性が論じられるようになった
遺伝子レベルで脅威を感じるのであろうか
一人っ子はなくなりつつあった
そして、学校制度も大きく変わった
冒険者訓練学校の登場である
優れた冒険者を養成することは国の急務となった
特に資源のほとんどを輸入する日本にとっては絶好の好機到来と考えることすらかのうだった
エネルギーが自国のダンジョンで発掘できるのだから
エネルギー自給率問題を自ら解決する好機到来といえたかもしれない
多くの問題をはらみつつも時は過ぎていくのだった
聖歴2050年4月
国立冒険者学園大学付属第一中学校
国家冒険者を養成するための学校が作られた
冒険者は、エネルギーを採掘するため、国家資格を必要とする
それは、ダンジョン内で起こる事故を予防するための免許制度でもあった
だが、実際の現場では、監視が存在しないためどのようなことが起こっているか知る者は、現場で働く冒険者にしかしることはできない
この4月、この学園の受験を合格した者たちが訓練館に集められていた
武術系冒険者(物理科)、そして支援系冒険者(支援科)、さらに、非常に貴重ではあるが魔法系冒険者学科(魔法科)の合格者たちである
星積(ホズミ)類(ルイ)はその非常に貴重な魔法系冒険者学科の新入生
その見た目は、そこら辺のテレビのアイドルを軽く凌駕した美少女である
黒目黒髪日本人らしい見た目だが、顔立ちは明らかに白人系のハーフであるかのように際立って白く凹凸がはっきりとしていた
正に天に瞬く星の美しさという表現がぴったりとくる
澄ました顔で佇んでいると声をかけることが憚られるほど美しさといえばいいのだろうか
その魔法科(すでにそれだけで相当貴重な存在であるが)のマドンナ、天使、高嶺の華と決定している
魔法科の歴史は浅い
なぜ浅いのか?それは術者が極めて希少であり、最近までは現役冒険者にしかそのスキルが発現しなかったからである
彼女の場合は、スキル(魔法だが)の遺伝で発現した第一世代となる
彼女の両親特に、母に魔法スキル(水魔法)が発現しそれが遺伝したのであるという
現在の日本でこの特殊な人物の価値と一言でいえば『国宝』クラスであろうか
故に、周囲の人間は、決してこの学校を進めはしなかった
冒険者などになれば命がいくつあっても足りないのだから当然である
この遺伝によるスキル継承が行われた事態は、この娘も子供に遺伝的に魔法スキルを継承させる可能性を大きく物語っているのだ
簡単に言えば、優秀な冒険者を婿に迎えて子を産むだけで国に貢献できるということである
そう、そういう意味で彼女は国の宝、国宝である
魔法を使える冒険者は希少である、それを数多く産むことができるとすれば・・・
まるで、三冠牝馬のような話であるが、この血統(いわゆる牝系)は絶対に繁栄させなければ日本の今後に禍根を残すことになるような、重大事である
そういう立場の彼女がなぜこの学校に進むのか
(それ自体は止められてはいない)
ダンジョンについて学ぶことは今後の人生においては非常に重要であることはいうを待たない
かといって、学ばなくても多くの護衛に護られて生活する彼女にとっては必ず必要というわけでもない
人の命に貴賤はないと少し前までの世界では言っていたが、今は彼女の命こそ、他の有象無象のそれよりもとても重要になっているのだ
これから後、星積の血は千代に八千代に栄えていかねば日本が危ない、そのような貴重な血統となったのである
そういう意味でも、魔法系スキルの母子遺伝はほかに発生してはいなかった
数多く発生すれば、その貴重度も下がっていくのかも知れないが
「本日はこの国立冒険者学園大学付属第一中学校への入学おめでとう、しかしこの入学は始まりにすぎません、君たちは自らの技術を磨き、日本国の未来のために、冒険者として活躍していっていただかないといけないのです」
校長の挨拶が行われている
「勿論、本日特別入学を嘉された、星積さんは特別な存在でありますれば、そのようなご苦労はしていただくことはございません」
終止厳しめの訓示をしていた校長はこの時だけ、一人の少女に遜った
「では、皆さんも星積さんのようになれるように全力を尽くすように望みます」
『国宝』級の星積は校長と同じ壇上で一人高級な椅子に座り聞いていた
その後ろで、ひっそりと執事のように立つ少年、彼もまた特別に入学を許された新入学生である
冒険者科(物理系)、支援科(補助技能主に盗賊系スキル、まれにバフ・デバフ系魔法)
そして魔法科。
すべてに入学試験が存在するのだが、非常に厳しいものである
この国立冒険者学園は、授業料免除などの特典が満載であるため、非常に人気があり枠に対しての受験者が多く倍率が非常に高いため難関となっている
(特典満載にしないと命の危険を冒すうま味がないためそのように誘導されている)
そんな中、第一中学では、『国宝』を是非とも手に入れるため、星積の家とタフネゴシエーションを行っていた
この『国宝』の母校の名は、全国の他校に先んじる絶好の機会であって決して放置できるものではなかった
星積の家は渋った
勿論、前述の牝系理論を実践すれば星積の家はまさに輝くばかりに発展することは紛れもなかったからである
しかし少女は冷然と言い放った
「お父様、私がかわいいのなら、好きにさせてください。それに、もしも皆が考えているようなことが可能だとしても、私の子供がそのように強いスキルを引き継げるかどうかはわかりません」
スキルは引き継げても、弱くなっては意味がない
それは確かにそうである。この世界では、遺伝による魔法スキル引き継ぎの初の例であるため、他の事象は存在しない。例がないためわからないのである
他国には存在するかもしれないが、当然他国でもそのような情報は管制下に置かれており秘匿されているに違いなかった
彼女は自分を磨いてこそ、その力は強くなり、そしてそののちに引き継がれると考えているのかもしれなかった
「さすが聖女のような素晴らしい考え方をお持ちですな」一校の校長がここぞとばかりに阿ってくる
「類さまはぜひ我が第一に入学されるべきです、全力で我々はあなたの成長をサポートいたしますので」
ここで成功すれば自分の栄達も可能とここぞとばかりに校長は押していた
「ありがとうございます、ですが試験を受けねばならないでしょう」
「そんな必要はありません、あなたのスキル水魔法は、何にもまして有用な魔法なのです、こちらからお願いしても、試験を受けろなどと傲慢も甚だしいでしょう」
まさにその通りなのかもしれなかった
水魔法保持者はほかにもいる(現役冒険者か元冒険者)が、学生が保持していることはない
スキルが発現するための特徴(統計的には)は、冒険者が何らかの機会に発現するというものである
ダンジョンに入ったこともないものがそのように発現することはないのだ
「そこまで言っていただいては、わたくしどうしたらよいでしょうか」少女は困ったように愁いを浮かべる、そしてその顔は、父親でなく、傍に立つ執事のような少年に向けられていた
父親は苦虫を嚙み潰したような苦い表情を浮かべる
そうこの娘は何にしても、この執事の少年に頼るのだ
貧しい家の息子で金がないから生活できるように使ってやっている少年なのだったが
「お嬢様、わたくしは今までお嬢様にお仕えできて幸せでした、しかし、やはり冒険者になるべく精進したいと思います」少年は決意も明らかな表情で少女を見た
しかし、決意もむなしく今年度の入試試験で不合格なっていたのである
彼は病弱な妹の治療費に多額の金を必要としていた
青目黒髪の日本人であった、その瞳は何故青いのか、しかし今はそんなことはどうでもいいことだった
彼の体つきは、割と細めだった
そう、彼のような肉体では冒険者学校の物理(学問の物理とは無関係)科は無理である
それ以外には支援科であるが、残念なことに彼には、鍵開けや気配察知などのスキルはなかった(発現しそうなほど器用さが足りなかった)
そのために試験では不合格であった
よりいうなら実技試験で不合格であった
座学では試験内でもトップクラスの成績であったのだが・・・
「校長先生」
「この少年は実技で不合格であったとか」
「そうではないんです、彼は本当にすごい実力を持っているんです!」
この美しい少女にしては珍しく興奮気味であった
座学だけであればトップ合格もあろうかという成績ではあったのだが、このような世界になってからは、物理的な力が選好されてしまうのである
しかし少女はそうではないのだと言っているのだが、ここにいる大人には通じることはない
自分の好みの男の子を推したいと考えているとしか取られない
彼の実力の結果は、すべて能力測定器という新たな機械で表示されているのだから
そう、人間の能力を測定する魔法のような機械が開発されていた
そう、またしてもファウスト博士によって
いわゆる彼女のスキル水魔法もこの機械の測定により発見されたものである
ただし、この機械の内部はブラックボックス化されており誰一人開発者以外の内部の仕組みを知る者はいない
某国では分解を試みたが、機械が自爆し兵士数名が爆死した
その後、新しい機械の購入の打診を行ったが、断られているという
「勿論、星積様の願いを無下にするわけにはいきませんので、特別合格枠ということで処理したいと思います」
校長は、試験の結果など気にしていなかった
この少女を取り込み栄達するためには、一人や二人不正に入学してもなんということはないのだ
それに、彼は少女の従者のようなもの
かつての騎士たちには、従者はつきもの
当然騎士に対する特権はあって当たり前
故に、彼一人従者として入校させ、授業を受けさせることなど何の問題もない
ただし、成績はひどいものになるだろうが
しかし、そのような落ちこぼれはいつの年も存在する
それに力なく国家冒険者の資格をとってダンジョンに入ってもそのものが死ぬだけである
何の問題もあるまい
校長の頭の中ではこのように理論が構成されていく
死ぬのは落ちこぼれだし、すべての卒業生が活躍しているわけでもない
全く何の問題もあるまい
校長は心の内でそのような計算をしながら、笑顔を浮かべ続けるのだった
斯くして、試験には不合格となったが特別合格枠により合格したその執事のような少年は椅子の後ろに控えていたのだ
一応、支援科に席を置いているが、魔法科の教室に付き従うことになるだろう
なぜなら、従者は主人のそばを離れてはいけないのだから
それに、少年には支援科の授業は必要のないものなのだ、才能がないからだ
さらに言えば、魔法科の授業など全く必要ないだろう、無駄である
そう、才能がないからだ
だがそれがどうした文句があるか、この『国宝』の少女を我が第一中学校に入れることに比べれば全く何の問題もなかった
すべては国のため、そして私の栄達のためなのだから
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