第11話:第一層・記録の牢獄
《神の塔》第一層は、空間がひしゃげたような、歪んだ学園の教室だった。
天井からは黒い血のような液体が滴り、机や椅子は燃えかすのように崩れている。
「ここは……俺が“追放された日”の教室……!」
教室の中央には、かつての担任・水無瀬教師の幻影。
そして──教室の隅にもう1人、見慣れない人物が立っていた。
◆九条ノゾミ(くじょう・のぞみ)
・異能力:『再構築(リビルド)』
・他人の“記憶”を読み取り、それを改変・書き換える力を持つ。
・一見穏やかで無害な雰囲気だが、感情が欠如しており、善悪に無関心。
・「この塔の階層管理者」の1人。
「はじめまして。九条ノゾミって言います。よろしくね、レイ君」
「……お前は“塔の番人”か?」
「ううん、違うよ。私はただ、“物語を編集する”者。
あなたの記憶が、あまりにも“都合が悪そう”だからね……少し、変えちゃおうかなって」
「ふざけるな……!」
九条が手をひらりと振ると、
教室の黒板に“あり得なかったはずの光景”が映し出される──
レイが仲間を裏切り、
アリアを切り捨てた偽の記録。
「嘘だ……! そんなこと……俺はしてない!」
「でも皆がそう“記憶してる”なら、事実と同じだよね?」
レイの身体が膝をつきかけたその時、
隣にいたユナが叫んだ。
「そんな記録、私の“錬金術”で書き換える!」
ユナの腕が赤熱し、錬成陣が広がる。
“嘘の記録”を暴き、本当の“過去”を錬成しなおす魔法。
「レイが誰より人を救おうとしてたって、私は知ってる! 全部見てきた!」
そして──
「……忘れるなよ」
レイが立ち上がった。
「俺を信じてくれる“今の仲間”がいる限り……お前の編集に俺の物語は奪えない!」
拳が黒板を打ち砕いた瞬間、偽の記録は塵と化し、
ノゾミは微笑を浮かべて後退った。
「へぇ……破られちゃったか。
でもこれからの“層”は、もっとエグいよ?ふふ、じゃあね──」
そう言い残し、彼女は記録の霧に消えていった。
そして、塔の次なる階層への扉が開いた──
その名も、
⸻
🔔次回予告:
第12話「眠る少女と無敗の檻(おり)」
──“裏切りの日”から、アリアは今まで何を見ていたのか。
彼女の夢の中で、レイは再会する──“泣きじゃくるアリア”と。
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