1章 かくて熱砂の国は戦争に至る

【伝聞】オルキデ女王国建国記

 かつてこの土地で、万物の巨狼きょろう絢爛けんらん天空鳥てんくうちょうが争ったという。巨狼の血は大地をけがし、天空鳥はそこに生きるものを狂わせた。ゆえにこの土地を支配する流水の大蛇は彼らに制裁を与えんと、幾日も続いた争いに終止符を打つべくその尾を振り下ろした。

 結果大地はひび割れ、元は地続きだった場所は断崖絶壁により行き来がままならぬものとなった。

 流水の大蛇の怒りはそれだけでは収まらず、断崖絶壁の向こう、天空の絢爛鳥の支配領域の中でも最も豊かな土地へと向いた。流水の大蛇は大地に流れる大河の水をすべて【死の水マハト・マー】に変え、地下に流れた水は干上がらせ、飢えも乾きも潤せぬ土地へと変えてしまった。


 これを哀れんだのが、大地の堅牢亀けんろうきである。


 しかし大地の堅牢亀には水をどうにかしてやることはできない。けれど別の土地から水や食料を人々が手に入れる一助になれと、地下にいくつもの鉱脈と鉱床を生み出した。こうしてこの土地は、富めども飢える土地となったのである。


 かつてここには悪魔がいた。悪魔は人々の欲望をあおり、意のままに操ったが、ある時西から美しい青銀色の髪の少女がやってきた。

 彼女は名を、ファムルフート・ルフェソーク。金の竜シャムスアダーラと銀の竜カムラクァッダを連れた彼女はこの地に巣食う悪魔を追い払い、悪魔に追いやられていた神々を神殿に招いた。

 ファムルフートの訪れは、シャムスアダーラの託宣によるものである。彼女はシャムスアダーラに導かれてこの土地を救い、そして初代女王となった。シャムスアダーラは太陽と正義の神に、カムラクァッダは月と裁きの神に、そしてその他の神は元の場所へと戻り、こうしてオルキデ女王国は建国されたのである。


 ファムルフートが最期に言い残したことがある――「いつか青銀の玉座が血に染まる時、報いを受けるのでしょう」と。

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