第13話:角煮



「イケメンさんって、突然現れると驚くのよねぇ!」

「そうかしら?少なくとも私は時雨に驚くことはないわ」

「リリちゃんも、もっと歳の近いイケメンさんに会えばきっとそうなるかもしれないわ!」

「イッセイもイケメンだとは思うけど、見慣れたからかしら。もう驚く事はないわね」




 リビングでイッセイが鏡を直し、おばあちゃんが夕飯の支度をしておりリリが手伝っている。そして・・・




「こ・・・、の度は、あの、最上さんの指示の元、改めてキキさんの監視役と、なりました神風 時雨と申します」

「キ・・・!キキと申します!!!」


「自己紹介はもうとっくに済んでるでしょ。改めていうのは監視役として決まった事だけで良いでしょ」

 リリがツッコミを入れる。

「初々しくてみてるこっちが照れちゃうわぁ〜!美男美女ですことっ!」

 そしておばあちゃんは喜んでいる。



「あ、神風さん!お楽しみの所本当に申し訳ないんですけど、巨大機械メカの方に動きはありました?大丈夫です?」

「「まだお楽しみじゃないっ!!」」

 神風とキキが同時に否定した。


「(どうみても楽しそうだけど・・・こんな事態なのに・・・)」

「あの気持ち悪い巨大機械がいつ動き出すかって時に、関係者がぽやぽやとピンクの空気を纏ってて良い気なもんだわ」

 チクリと心に刺さるような刺々しい言葉をリリが吐いた。しかし、そこまで強くいう気はないが、意味的にはイッセイも同意で納得だった。その言葉に神風も我を取り戻し咳払いを一度してから話し始めた。


「んんっ!!巨大 機械メカは動きなしです。目視でも特に動いた形跡も、何か電気系統が回復した兆しも今の所見られません。防壁は周囲へと運搬終了しました。あとは組み立てるだけです」

「今ちょうど19時だから・・・夜中も作業したとして見込みで朝の3時ごろには囲い込みが完了しそうですか?」

「ちょうどそのくらいの時間です」

「まぁ近くにはじいちゃんの廃工場もあるから、防壁がダメでも最悪は工場に追い込むっていう手もありかな。ありがとうございました。では続きをどうぞ。キキの監視なんですよね?」


 自分の聞きたい情報をもらえたらイッセイはすぐに作業に戻る。



「あっ・・の。それで・・・!監視をするのですが。この家ではなく機関がホテルの一部屋準備します。そこに来ていただけますか・・?」

「それって・・・私一人部屋ですか?」

「何アナタ、時雨と同室とでも思ってるわけ?」

 リリのツッコミが本日は鋭い。


「そんなわけないでしょ?!でも監視って事は!隣の部屋にはいてくれるとか・・・さ?」

「アナタは危険人物認定されてるのよ」

「リリちゃん酷いっ!!」

 キキとリリの会話がヒートアップした時だった。



「うぬぅー・・・っは!!ココは寝てしまっていたデスか?!」



 寝ていたココが目を覚ましたのである。

「ごめんなさいね!うるさかったわね!まだ寝てて良いわよっ!」

 リリがココに近寄り撫でた。

「・・・先ほども視界の隅に写ったのですが・・・そちらは・・・?」

 神風が驚いた顔でココを見た。そうだろう、猫に似ているがこの世界の生まれの人間は知らないであろう”狐”の姿をしているのだから。


「ココと言います!キキ様の”精霊せいれい従者じゅうしゃ”、精従せいじゅうデス!!」


「精霊・・・?!」

「狐よ」

「キツネ・・・?」


 神風がココの存在、狐を理解していないのに事態はまた変わる。


「じーちゃんが帰ってきたぞーー!!」


 玄関ではなく裏扉から家主が帰ってきた。










「太郎は娘の監視役になってぇ?!太郎は狐を知らんでぇ?!ホテルに娘と住むとぉっ?!なんの話しとるんじゃ!」

「「めちゃくちゃ」」

 イッセイとリリが冷静に突っ込んだ。


「さぁ!昨日から仕込んでた角煮もできましたよ!はい、どうぞ!」


 夕食の時間だった為、おばあちゃんが神風を夕食に誘った。リリは帰ってから母の作った夕飯があるので軽く摘む程度だ。しかし・・・

「角煮っ!!!・・食べたいわっ!!・・・あ、そんな事じゃないのよ!おじいちゃん!時雨しぐれが監視役になったのは確かよ。パパが言ってたもの。念の為機関には連れて行かないけど、ホテルをとって、隣同士の部屋で時雨が監視するって事よ。出かけるにしても何するにしてもずーーーっと時雨と一緒。あ!おばあちゃん!角煮持って帰っても良いかしら?!」

「ダメじゃ!!」

「なんでよこんなにあるのに?!?!」


 

 リリの話しを聞いて、イッセイは安心と納得をした。最上はちゃんと取引を守ってキキを機関を近づけない。しかし、野放しにはしないという事で今回ホテルでの監視を提案したのだろう。



「でも私、おばあちゃのご飯凄く気に入ってるし・・・この家なら色んな機械とかあるし、そもそもイッセイに色々私の事情も話してあるから相談とか協力してくれるだろうし・・・」

「飯が先かっ!」

「それは・・・その相談の役目は私じゃ務まらないんですか?」

「そういう訳じゃなくて・・!!でもぉ・・・言って良いものかどうなのかぁ・・・」


 複数の異世界の存在や、この世界が”核”がある為に狙われていること、他にもまだイッセイには話すつもりはあるが言ってない事が沢山ある。自分の元いた世界の為に話をスムーズに進めるためにもこの家を離れるという選択肢は無かったのである。

 そう思い、キキは困った顔でイッセイを見た。


「・・・この状況で俺の顔を見るのは良くないな・・・」

「この人、煽りの天才なのかしら。時雨が柄にもなく嫉妬してヒートアップしそうよ。可哀想ねイッセイ、馬に蹴られそうよ」


 キキの視線の先がイッセイだとわかった神風は眉間に皺を寄せた。キキに好意があることすら自覚できていないのに嫉妬心が爆発している。その顔を見たイッセイが両手をあげた。



「・・・馬に蹴られたくないから降参。キキ、最上さんには言わない事を約束に、神風さんに全部話すと良い。そうすれば、神風さんが上手く最上さんにも言ってくれるだろう。神風さんの事はこちら側に抱き込んでおいた方が良い」

「ちょっ!!何言ってるの・・!?抱き込むとかっ!!!」

「キキ様!解釈が違うと思われるデスっ!!」

「狐、お前大変じゃな」











「と、いうわけよ。時雨、理解できたかしら?まぁ貴方頭良いから一回聞けば十分でしょうけど」

「理解はしましたが、現実味がないので小説とか物語の話でもされたのかと思う程ですね・・・」


 一通り、イッセイ達も知ってる事を神風にも伝えた。


「まさか、この環境汚染もその”核”が原因だったなんて・・・」

「もちろん全部じゃないわ!でも9割は核の影響でこうなってるって思ってる」

「それを取り合う為、卑劣な魔法を使う輩もいると・・・」

「・・・それに関しては。その世界の常識とかで変わってくると思う」



 同僚を失った神風が、人を傷つける魔法を使う者がいる事へ怒りを露わにした。



「私の世界は、この世界の人たちになるべく迷惑を掛けないで核を持ち帰ることを優先してる。でも、他の世界では一刻も核が欲しくて、世界を荒らしたりしても良いから早く核を持って帰りたいとしている世界もあるから」

「ウチはエンゲル係数に迷惑掛かっとるぞ」

「な・る・べ・く!!」



「でも、キキちゃんがいるとおうちが華やかになだから、いないと寂しいわねぇ?」

「おばあちゃん!私がいるじゃないのっ?!」

「可愛かったり綺麗な女の子は多ければ多い方がいいわぁっ!」

「おばあちゃん欲張りね・・・」

「そうだわ!太郎さんがウチにいればいいんじゃないかしらっ!」

「なにぅぅをぉぉおお?!?!」


 おばあちゃんがいい案を思いついたとばかりに嬉しそうに言った。



「エンゲル係数!!」

「それなら私もこの家の泊まれる口実が出来たわっ!!」

「出来とらん!なぜそうなった?!」

「時雨がいるんだからパパだって安心でしょ?!」

「毎朝来て夕方帰っとるのに?!」

「今!!角煮が食べたいの!!!」



「角煮への執着心!!」

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