異世界で妹とヤっちゃう? ー榁町幕府で天下布武ー
五平
第1部:異世界スローライフと義妹いちゃらぶ
第1話 おにい、一緒にイキたいよ
「御鏡流:波紋!」
濁った沼の奥で泡を弾けさせる巨大なスライムに向け、俺は掌底を叩き込んだ。
ヌルリとした粘着質の感触が、鍛え抜かれた掌にまとわりつく。鼻腔を刺激するのは、泥と、微かに甘い薬草のような、そしてどこか生臭い媚薬スライム特有の匂いだ。
水面が小さく波立ち、その中心にいたブヨブヨとした塊が、まるで内部から破裂するかのように「ブチュッ」と音を立てて弾け飛んだ。何度体験しても気持ちいい。異世界に転生して半年、ほぼ毎日繰り返しているこの作業なのに、不思議と飽きないのだから。
「おにい、ダメ。先にイっちゃイヤ。ちゃんと、五十鈴と一緒にイってよー」
背後から、熱を帯びた、それでいて甘えと不満がないまぜになった声が聞こえた。銀髪のポニーテールが湿度を含んだ空気の中で揺れる。小中学生に見えるほど幼い外見だが、その口から放たれるセリフは、とても16歳の少女とは思えないほどに挑発的だ。俺の義理の妹、五十鈴。俺より二つ年下の彼女は、成長が遅いらしく、ちんちくりんという表現がぴったりくる。対する俺も、女顔で声変わりしたかどうかも怪しい声、背も低く、とても18歳には見えないらしい。
「ダメだ五十鈴。イクのは俺だけだ。俺だけで充分だ」
振り返らずに言い放つと、五十鈴が「むーっ」と不満げに唇を尖らせるのが、俺には容易に想像できた。沼地から上がってきたばかりの彼女の服は、媚薬スライムの体液でベタベタになり、肌に張り付いて、幼いながらも女性らしい線まで浮き上がらせている。俺が放った【波紋】の巻き添えを食らうのは、もはや日常風景だ。だが、この娘は、なぜかそれを楽しんでいる節がある。彼女の体温が、すぐ背後から伝わってくるような錯覚さえ覚える。
「五十鈴だって、イキたいのに……。パンツまでベチャベチャなのにイケないなんて……、おにいだけズルい」
ズルい、か。
そんなに色っぽく言われても、この状況ではどうにもならない。だが、五十鈴がこの媚薬スライム討伐を「イキたい」と表現するたびに、俺の心臓は小さく跳ねる。彼女の無邪気な誘い文句が、俺の理性をわずかに揺さぶるのを感じる。
「我慢しろ」
俺の返答に、五十鈴はさらに駄々をこねる。その吐息が、俺の首筋にかかるような気がした。
「我慢なんて出来ないよー。イキたい。イキたい。おにいとイキたいのー」
本当にわがままな義理の妹だ。満足させていない俺が悪いって言うのもあるけど、仕方がないんだ。この媚薬スライムは、討伐すれば破格の金貨をドロップする。一匹で金貨100枚相当の媚薬スライムオイルが手に入り、一日十匹も狩れば、贅沢三昧だ。
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【戦利品】
・水の魔石(大)
・媚薬スライムオイル
《以上はアイテム袋に収納されました》
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この【物理攻撃無効】【魔法攻撃半減】という厄介なスキルを持つ媚薬スライムは、俺の実家である古武道道場で教えられていた御鏡流の仙術、特に浸透勁でなければ倒せない。故に、他の冒険者は手を出せず、俺たち2人パーティーには、都合のいい金策相手になっている。俺たち以外にこのチートモンスターを倒せる奴はいない。だから、稼ぎは独占状態だ。
再び沼の奥から、別のスライムがゆっくりと蠢き始めた。その動きに、いつもより粘液の泡立ちが激しい、微かな奇妙さを感じる。もし、こいつの動きが読めなければ、五十鈴が近くにいる分、巻き込む危険がある。「もし攻撃が外れたら、五十鈴に怪我をさせてしまうかもしれない」――その想像が、俺の胸に凍てつくような焦りを引き起こす。五十鈴の無邪気な笑顔がフラッシュバックする。何よりもこの子の安全を最優先する俺の絶対的な願いが、俺の全身に電気を走らせる。掌に、底知れない力が籠もっていくのが分かる。
次の瞬間、俺は迷いなく踏み込んだ。まるで水面を滑るかのように無音で間合いを詰め、渾身の一撃を叩き込む。
「御鏡流:波紋!」
放たれた掌底は、完璧にスライムの核を捉え、見事な一撃で粉砕した。
ブチュウッ!
肉塊が爆ぜるような生々しい音を立て、スライムは弾け飛んだ。飛び散った体液が、沼の水を激しく叩く。生臭さと甘さが混じり合った独特の匂いが、再び辺りに充満する。
「おし、スキルカードゲット」
さらに【物理攻撃無効】スキルカードがドロップした。これでトータル4枚。俺と五十鈴が1枚ずつ使い、残りは予備と販売用だ。このスキルカードは、物理攻撃を無効化するというとんでもない効果を持つため、王侯貴族が喉から手が出るほど欲しがる代物だ。スキルカードギルドのオークションに出せば、国家予算の半分にも匹敵する値が付くと言われている。
「五十鈴、ちょっと早いけど、帰るぞー」
今日の目的のスキルカードが揃ったからな。日が暮れる前に、亜空間ハウスに戻りたい。五十鈴との甘い夜が待っている。
「うん!」
五十鈴の返事は、普段よりも弾んでいた。彼女も亜空間ハウスでの時間が好きなのだろう。
沼地からの帰り道。水面を渡るため、俺は五十鈴をひょいと抱き上げた。御鏡流の【水蜘】を使えば水の上を歩けるが、それは高度なバランス感覚を要する仙術で、五十鈴はまだマスターできていない。水面に足をつけるたびに、彼女の軽い体重が俺の足に負担をかける。これも、いちゃらぶのうち、と五十鈴は思っているのだろうか。
「五十鈴、じっとしてろ」
俺の言葉に、五十鈴は「はい、おにい」と律儀に答え、目を瞑って唇を尖らせた。「んーーーーーーー」と、何かを期待しているような声が漏れる。こんな時も、エッチな展開を期待しているのが透けて見える。義理の妹と毎日を過ごしていれば、理性も試される。幸いなことに、この異世界にはエッチに年齢制限はないが、俺たちの関係はまだ、そこまで進んでいない。いや、進めていない。俺が、一線を越えることを躊躇っているだけだ。その理由を、五十鈴はまだ知らない。
亜空間ハウスに戻ると、五十鈴は慣れた手つきで【生活魔法:クリーン】と【ドライ】を唱え、泥と水気を瞬時に落とし、まるで何事もなかったかのように身綺麗になる。彼女の肌から、柑橘系の香りが微かに漂ってくる。俺も念のため【白魔法:アンチウイルス】を掛けてやる。沼の水を少しでも飲んで変な病気になったら困るからな。
「はい、終わり」
「おにい、ちゅーがまだだよ。んーーー」
五十鈴が、さらに唇を突き出してくる。その瞳は、期待に潤んでいた。
「ちゅーはないの。ほら、帰るぞ」
俺は彼女の頭を軽く叩いて促す。
「おにいの、いけずぅー」
それでも、どこか嬉しそうな声が弾んだ。彼女にとって、俺の「いけず」は愛情表現の一つなのだろう。
「バカ言ってないで、帰るぞ」
「はーい!」
五十鈴の表情はコロコロ変わって、本当に飽きさせない。異世界転生で来た新しい世界。事故で命を落としたあの瞬間から、俺は五十鈴と常に一緒だった。本当に、もし五十鈴が一緒じゃなかったら、俺はこの世界でどうなってたんだろうか?その考えは、すぐに「五十鈴がいなかったら、この世界で生きていける自信がなかった」という明確な答えに辿り着いた。彼女の存在が、俺の不安を打ち消し、新たな環境への適応を加速させてくれたのだ。
ふと、街道の向こうに目をやった。陽炎の揺らめく彼方に、人の影が小さく、しかし淀んだ熱気を孕んで見えた気がした。遠くから、鉄と革の擦れるような微かな音が風に乗って運ばれてくる。
あれは――街道を埋め尽くすように進む、大名の行軍か。鎧武者の列が、遠い砂埃の向こうで鈍く光る。この世界に来て半年、未だ見慣れぬ光景ではないが、これほどの大規模な軍勢は珍しい。
「おにい、あれ、どこのお殿様だろうね? 京都へ上洛するのかな?」
五十鈴が首を傾げた。その無邪気な問いかけが、この平和なチートライフの裏に潜む、確かな戦国の息吹を俺に感じさせる。俺たちは、まだこの世界の深い部分に触れていない。だが、この巨大なうねりは、いつか俺たちの生活にも影響を及ぼすだろう。
そんな漠然とした予感が、胸の奥で小さく、しかし確かに鼓動を始めた。街道を埋め尽くす武者たちの隊列の先頭には、ひときわ目を引く旗印が風に翻る。その紋には、見慣れた…いや、史実で見たことのある「五瓜に唐花(ごかにからはな)」の紋が、鮮やかに描かれていた。織田家の家紋だ。
織田信長。
その名が脳裏をよぎり、俺の心臓はドクリと大きく鳴った。まさか、本当に、あの時代、あの人物がここにいるとは。そして、この大軍が向かう先が「京都」……。史実の信長上洛の時期が、この世界にも訪れているのかもしれない。俺と五十鈴が、交通事故で意識を失った、あの瞬間。まさか、こんな歴史の転換点に、俺たちが放り込まれるとは。俺の全身に、得体のしれない興奮と、わずかな戦慄が走る。
「おにい、どうしたの?顔が真剣だよ?」
五十鈴が不安げに俺の顔を覗き込む。彼女の純粋で、何も知らない瞳に、この世界の戦国の影を全て見せるわけにはいかない。まだ、この平和な日常を守りたい。
「なんでもねぇよ。ちょっと、デカい隊列だから驚いただけだ」
俺は努めて明るく答える。だが、心の中では、既に明確な違和感が、胸の奥で熱を帯びた塊になり、膨張していた。この世界は、単なる異世界ファンタジーでは終わらない。史実の知識が、俺の強い願いを揺さぶり始める。「五十鈴とのこの平和な日常を守る」――それが、俺の揺るぎない願いだ。しかし、この大いなる歴史のうねりを、見過ごすわけにはいかない。史実通りに進めば、この世界も大きな混乱に巻き込まれるだろう。
俺たちの、新たな異世界生活。どうやら、いちゃらぶチートだけでは済まされそうにないらしい。この平和な日常は、脆く、儚い。すぐにでも、戦乱の波に飲み込まれるかもしれない。五十鈴の無邪気な笑顔を守るため、俺は胸の奥で決意を熱く燃やす。この世界の歴史を、ただ傍観するだけでなく、俺たちの手で、より良い方向へ動かしてやろうと。それは、ただ守るためだけではない。この世界に御鏡流を、そして俺たちの御鏡家を、盤石なものとして確立するための必然なのだから。
信長の旗の向こう、砂埃のさらに奥に、わずかに金属が反射する奇妙な光が見えた気がした。それは、この戦国時代にはありえない、精密な機械の光のように思えた。
ひょっとして、あれこそが、「輝け輝きの旅団」の――?
俺は何も言わず、その方向へ僅かに目を向けた。
……風の音だけが、やけに耳に残った。
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