スキル【キャンセル】で学園無双!~異世界転生をキャンセルして獲得したスキルは、あまりにも万能すぎて逸般人が通う学園生活も余裕だし、学園島ランキング攻略も余裕なので【世界の覇王】になります~
第29話『キャンセル界隈的にキャンセルしたい』
第29話『キャンセル界隈的にキャンセルしたい』
キャンセル界隈的にキャンセルしたい。
いや、この至福のときに対して思っているのではなく、明日からのことである。
「どう、かな。作ってみるの2回目だから、自信ないんだけど」
少し照れくさそうにもじもじしながら俺の反応を窺っている
そう、今は緋音の部屋に訪れていて例の晩御飯を作ってもらって一緒に食べている。
何が自信なさそうにさせている要因かというと、口の中にニンニクとショウガの香りが広がっていき歯ごたえのある、生姜焼き。
「凄くおいしい」
「ほ、本当? チューブとかタレで作る簡単なやつは使うだけで美味しくなるけど、ニンニクとショウガを摩り下ろして作ると分量が合っているのか自信がなくて」
「ご飯が進んで仕方がない」
言葉にしてもなお表情を気にしているものだから、茶碗をカッカッカッと音を立てながらご飯を口の中へ運びまくる。
それを見てやっと安心したのか、
「個人的には穏便な展開が好ましいけど」
「まあ、第一印象的には無理だと思う」
「あの人、通常時とスイッチ入ったときの差が凄いよね」
「俺に対しては、最初からスイッチ入っている状態だったけど」
「そうなの?」
「うん」
凄い形相で詰め寄ってきた、というわけではなくても、最初から敵対状態だったことには変わりない。
もしかして人を見て対応を変えているタイプなのか? それとも、
「まあ、個人的に試してみたいこともあったから、ちょうどいいと言えばちょうどいい」
「勢力調査とか?」
「頼む、そっち系の話にもっていかないでくれ」
「ごめんごめん」
そのノリ、この先も続く感じなのか……?
「でも明日から早起きしなくちゃだね――あ」
「ん?」
「そういえば私たち、
「あ」
「あっちゃぁ~」
言われてみたらそうだ。
いろんなことを考えたり変な話題に逸れたりして、そこまで頭が回らなかった。
「まあ一応、通学路の途中は知ってるから大丈夫だと思う」
「うわっ、連絡先も交換していなかった」
「あー……まあ、明日で大丈夫でしょ」
今となっては楽観的に捉えるしかない。
こちらがあっちの家と連絡先を知らないように、あちらもこっちの家と連絡先を知らないからどうしようもないんだから。
一応は、「デカい敷地の家」というヒントはあるから上空に行って確認したらわかりそうだけど、たぶん該当する家は数件ほどありそうと予想できる。
その一軒一軒を確かめていられるほど夜の時間は残されていないし、家に居るならとりあえず大丈夫だろうし、今は考えても仕方がない。
「マナー違反だから、相手の能力を言っていいか悪いか悩んでる」
「判断は任せるよ」
「対策を考えるなら言わないと話が始まらないから難しい」
「強いて言うのなら相手は既にマナー違反済みだし、なんだったらルール違反というか法律違反している可能性が大いにある、とだけ」
「だよね、そう考えるなら悩んでいることがバカバカしいよね」
卑怯だ、と言われたとしても、どの口が言っているのかと返せる。
しつこいストーカー行為に加え、拉致目的の追跡行為も行っているんだから、もはや捕まったとしても文句を言える立場じゃないだろう。
「じゃあ言っちゃうね。彼のスキルは岩石や鉱石を主に出現させて戦うの」
「なんかどこかで見たような憶えがあるな」
「あのコンビニでぶつかった人が、似たようなスキルだったよ」
「あー、そういえば」
「それで厄介なのが圧倒的な防御力。生成物で籠城されたら、もう勝てない」
「熱々にしてサウナ状態にしたらダメだったの?」
「それもやってみたの。でも、全然ダメ。枚数を重ねられたら、手も足も出ない」
展開的に、岩とか鉱石を熱で溶かしたとしても、また新しいものを出されるということだな。
そして出したら休憩できる
苦戦を強いられるのは容易に想像がつくし、勝ち目を見出すこともできない。
「極めつけは、防御しながらでも攻撃できることかな」
「ほう?」
「生成物で自身を囲み、地面から離れているところに攻撃することもできるの」
「うわ、印象通りに性格悪っ」
「勝つためだもの、私はそこまで言わないけど――でも、正々堂々とは言えないのは事実ね」
でもその理論だと、全てスキルによる影響が出ている。
だったら俺のスキルで全て解決できるだろうが――それをやってしまうと、いよいよ言い逃れができなくなってしまう。
全ては状況次第だけど、そもそも任された囮役を完遂するためにはスキルを使用しなくちゃいけないし、隠すことに限界が来たと割り切ってしまおうか?
学園長からのストップがかかっているから、状況を見極めた方がいいのは間違いない。
「それにしても、ご飯も炊いてるんだよね」
「うん、そうだよ。ちょっと硬いか柔らかかった?」
「いやいや、全然そんなことはない。食べやすくて」
「そう言ってもらえると嬉しい」
「日に日に料理の腕が上がっているの凄い」
「まだまだこれからだよ。卵を扱う料理系は1回も手を出していないから」
「想像しただけで難しそう。俺がやったら、間違いなく焦がすだろうな」
挑戦の機会はこれからいくらでもあるけど、少なくとも実家で生活していたときは目玉焼きすら作ったことがないぐらいだしな。
学業に料理に生活に。
やらないといけないことばかりだけど、なんでも挑戦したり楽しんでいる姿を見ると見習わないとって気合が入る。
「皿洗い、全部やらせていただきます」
「いいよいいよ」
「いや、俺も何かできることが1つずつ増やしていきたいんだ。今まで親に頼りっきりで何も手伝ってこなかったから」
「わかりました」
「ありがとう」
「じゃあ、ついでにお米の研ぎ方もやっちゃおう」
「おぉ」
「そして、明日のお弁当はそのお米を使って作ります」
「えぇ!? いいのぉ!?」
お弁当予約宣言きたぁああああああああああああああああああああっ!
うおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!
やったぁああああああああああああああああああああっ!
「もちろん。これも勉強の1つだよ。しゃばしゃばになったり、ぐにゃぐにゃになったりもするからね」
「はい! 覚悟して慎重に挑みたいと思います!」
「後は1人暮らしのお供、パスタもソースは買ってくる前提で茹でるだけでも練習したいね」
「仰せのままに!」
これ本当にいいのかな、同級生女子の部屋にお邪魔する口実を、
俺からしたら願ったり叶ったりで嬉しさが有頂天でウルトラハッピーだけど。
こんなに嬉しいことがあると――不幸が訪れる前触れみたいな、そんな感じがするけど……まあ、スキル【キャンセル】でどうにかなるでしょ!
「私も練習になるから、いろいろとやっていこー」
「おーっ!」
どうにか幸せすぎて気持ち悪い笑みを浮かべないよう注意し続ける時間はもう少し続け、今日といういろいろあった日は終わるのであった。
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