スキル【憑依】で異世界幽霊ライフ。〜除霊された幽霊だけど異世界に転生!スキル至上主義と聞いて努力したけど魔法至上主義らしいので、幽霊らしくひっそり暮らします〜
富樫モブ
第1話
都内某所
暗い夜道を街灯がうっすらと照らす。
ジーッと機械音を鳴らしながら、その明かりで虫を呼び込む自販機。
その横で何をする訳でもなく、俺はただ呆然と立っている。
『ああ、暇だ……』
──すると、暗がりの向こうから一人のサラリーマンがやってきた。
自販機に立ち止まり財布の小銭を漁りながら飲み物を選ぶ。
「えーと……」
『オススメは──これ! コーンスープ! 最後のコーンがなかなか取れないのよ』
ピッ、ガタン!
俺をガン無視で水を選び帰って行く。
『無視ですか……はいはい』
次に現れたのはヤンチャそうな少年だった。
『いらっしゃいませ〜』
ガムを噛みながらジッと自販機を見つめる少年。何をそんなに悩むのか下から覗き込む。
『何かお探し──』
「チッ! ドクペがねぇべよ」
ガンッ!!
少年の蹴りが俺の頭をすり抜け自販機に当たる。
少年はそのまま文句を吐き捨てながら、夜道に消えて行く。
『またのご利用を〜』
……。
感のいい人ならばお分かりであろう。
そう俺は幽霊である。
自販機横のおっさん地縛霊こと秋庭 優一38才
正直、なぜ死んだか皆目検討もつかない。
都合がいいように一部の記憶だけが欠けている。
事故か事件かは分からないが、毎回気付くと誰かが花を添えてくれている。しかも、ニ束。
なんの未練があって成仏出来ないのかは知らないが、毎晩やることがない。
暇つぶしがてら自販機利用者に話しかけるのが日常になっている。
まあ、大概は無視なんだけども。
そんなこんなでまた利用者がきた。
今度は中年のおばちゃんだ。
「何にしようかしら……なんだか冷えるわね」
『もう6月なのに珍しいですね〜。温かいコーンスープありますよ? 風邪ですか? 大丈夫ですか?』
おばちゃんに話しかけると、不意に目が合い無言の時間が続く。
『おばちゃん……運命感じちゃった?』
徐々におばちゃんの顔色が青ざめ、表情が引き攣って行く。
「ぎゃあぁぁー!!」
おばちゃんは急に走り出して逃げ去った。
……たまに見える人がいるらしい。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎
そんな事が続き、気づけば都内でも有数の心霊スポットになっていた。
やたらと人が訪れるようになる。
カップルで訪れる者。動画撮影に来る者。
性懲りも無く話しかけるも、反応はまちまちである。
辺りを見渡すと、随分と落書きも増えた。
相変わらず花は添えられている。
『治安悪いなぁ』
しかし、それでも稼働し続ける自販機……さては、俺のブームに乗っかってるな? そこそこ利益が出てるのでは?
そんな事を思いながらも、今晩も来訪者がやってくる。
チーン、チーン、チーン。
怪しい鈴の音が徐々に近づく。
『なんだろ? 胸騒ぎがするな……』
カメラを回しながらテレビスタッフと和服の女性がやって来た。
「先生! こちらが今噂の“出る”心霊スポットになります! 何か感じますか?」
「……はい。強い怨念を感じます。これは……女性? 悲痛な叫びを訴え掛けてきています」
残念。おっさんでした。
「それでは除霊をお願い致します」
「かしこまりました……。冥界の門よ、今ここに開け。迷いし魂よ、輪廻の流れに還るべし……はぁっ!」
『あー、ん? なんも感じないけど?』
この流れは今回が初めてではない。それっぽい人が何人も訪れたが、俺は健在している。
女性霊媒師が自販機に奇妙な絵と文字が描かれた、お札をペタペタと貼り始めた。
『こらこら! スタッフさん、流石に自販機は業者の迷惑に──ッ!?』
急に視界がぐらつく。
──これが除霊? 成仏?
いや、こんなに苦しいわけがない!!
徐々に意識が朦朧とし視界が暗くなる。
突然地面が消えて、何者かに足を引かれる感覚が襲ってくる。
奈落の暗闇。
落ちる感覚だけが伝わってくる。
不意に機械音と不思議なアナウンスが鳴り響く。
──ポーン
認証データ確認………。
エラー。
記憶データ確認……。
一部エラー。
肉体情報確認………。
エラー。
緊急プロトコル実施……。
種族〈レイス〉座標固定。
スキル取得条件確認……。
スキル【憑依】取得
スキルブック生成
神界への転生承認を申請中……。
……。
……。
……承認が降りました。
──────────────
名前 :秋庭 優一(あきば ゆういち)
種族 :レイス(希少な霊体型アンデッド)
特徴 :魂を具現化した存在。霊的性質を持ち、通常の物理攻撃を受けない。
特性
•《実体なし》:物理無効、一部魔法有効
•《魂感知》 :特定条件下で“見える者”に認識される
スキル
• 憑依 Lv1(60秒/対象に取り憑き、その能力を模倣)
──────────────
……転生準備が整いました。
……良き異世界ライフを。
──ここで意識が途切れた。
つづく!
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