第32話
そして学校が本格的に、長期休暇に入って行く姿を横目に。
壮太が思う以上に女優達は一気に動いていく。
「じゃあ行ってくるねっ。今日から2日間ちょっとだけイベント、あとテレビもなんだよ、頑張る~っ!」しかも練習だってしっかり入れて頑張りますからぁっ♥
夏のイェーイなパリピで、日焼け浮き輪女子がリズムに乗るんだ。
しっかり役に入り切る年輪ちゃんだぜ、いぇい!
「は~い♥ いってらっしゃーいっ。でもまるっと大変だねぇリンちゃん、ラジオ苦手だからな~~、ふふふっ。しかも朝が超特急で前乗り、帰ったらまたダラダラだぁ~」
1本は映画のちょい役で無名だったが、もう1本は本格ドラマのゲストで。
まだそのPR段階だった、ただラジオまでが予定に入っていて……。
「あぁ……なるほど、そうか……、休みが固まると仕事が入れやすくなるのか。結構難しい役だって聞いた……もう短時間だけどアレ使うって。これもう2周目をしていた時には決まってたんだね、だからか………」
夏休みの公演をしようなんて事になってるのは。
映画にドラマ、そこに若い俳優が必要で数を求める作品はこのタイミングを待ち構えて撮影に入りやすいらしい。夏休みと冬休みに春休み、これは朝から晩まで駆り出せるチャンス。
当然彼女らにとっては重要な時期になる、この時に2本の仕事をこなしてく輪廻を見てうなずいたんだ。
「ホっとしましたか? 確かにかなり良い役もらってましたからね。それもあるんでしょう、ただ……、もっと純粋よあの子は」
そう言って仙台土産を食べ、各自の仕事に取り掛かる灯火達。何気に輪廻が持って帰ったものは本当に美味かった、1日1つまでと張り紙がある程に。
その夏休みは、思った以上に面白く――。
「ハイ良い現場でした! お笑いの人すっごく楽しかったんだよ、すごい夏だった~」ただいま~。
「あのねあのねぇっ、私はすっごい寒かったぁ~、まるっと雪国感あったよあの映画~。ねぇだからね……カキ氷おごってぇ~~っ♥ 壮太く~んっ」
抱きついて来るコーハイ先輩は、アツい、肉感。でも声優とナレーターの仕事を2本こなして来たらしい、冬公開の映画だそうだ。きっと子供受けすると言って笑い、何より……。
「あぁ~、これでなんとかレッスン料払えるかなぁ~、まるっと十分十分っ、フフフ♥」
「あぁあの、そのレッスン料ってなんですか? コーハイ先輩ってもう仕事もらえてるっぽい気がするんですけど、確か年間30万とかって……、それっていつまで続く感じで……?」
「ふえぇ~? 全然ふつーにまるっと、ほぼ永久的に続くよぉ? 結構キャリアある人でも受けるもん、お金取られ続けるの~~」
とりあえず拾った仕事でまずは負担分を払う、コレを繰り返す新人女優達。夏でも冬でも何度も何度も東京の事務所にレッスン受けに行って、オーディションの為にも電車を乗り継ぎ遠出し……。
「若手にはかなりの負担ですよね……、最悪60万の事務所とかあるわよ。電車代もままならない、オーディションも頻繁なのに1往復で2000円もは――」はぁぁ……やはり田舎住みは嫌ですねぇ~……。
頭を抱える灯火、聞けばかなり頻繁にオーディションを受けているらしい、土日なんかほぼ絶対に受けにいく。壮太が輪廻と放課後帰っている間にも、もう2人はひたすら受けているらしいと……。
「事務所が力入れないってこういう事だよ、これからでもなんとかしなきゃです……」
さっ、仕事仕事っ!
その後、安月給なのでとマイチがお土産のお歌を謡ったのだ。
だがしかし彼女の歌は異様な程に上手かった、3人で聞いて、そして仕事だ。レジゴー、レジゴぉぉおー!ってオンモールのを――。
もう授業もなんか諦めてる風合い、ひたすらに作業作業。セミとの禅問答だ、なんかもう五月蠅すぎるので匂いも飛ぶほどの。
あぁ……、汗が、濡れて。鬱陶しい。
囲まれている、囲まれているぞ――。
最後の関門だと思えるその……。
「あぁ駄目だ。ちょっと……、なんか無いか確かめて来るよ、色々あるからなぁあの部室はホント……」
だが忙しくしていた頃、ふと部室に入ってみるが。ゴソゴソと荷物を漁る人影があってだ……っ!
「んぅーー!? 君は誰かね、何やってるのぉ――!?」
「い、いや、あのっ……それコッチの台詞なんですけど……っ!? アナタは誰ですか、何年の方でしょうかっ? と、とにかく部員じゃない人に色々されるとそのっ……駄目ですよ、ダメだ!」
「あッ、あぁー……………? なるほど、キミが噂の新人君かーーっ」
壮太のその動揺と言葉に目の色が変わり、すごい神妙に寄って来るのだ。
少女がゆっくり吟味して来て、そして――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます