第10話
そして次の日、1日経ってもフラフラだった。
もう返って来ない返事。
グループも退会してある。
それでもひたすら考えたあの事象、あの笑顔、あのときめき、そして何よりもあの演技の浴びるような圧力――。
「夢の中って奴だろう……、煌びやかな世界で、さっきまでアレと手を一緒に繋いでて……。それであの女優ってのは何より増して輝くわな~フフ。なぁそうだろ、戸北……。それで墜ちてきてやっと俺らの事も思い出せたか?」
彼を慰めて笑顔のクラスメイト達。あのカノジョとの毎日が奪った……、たった7日で骨抜きどころか血肉まで吸われて、脳みそに支障をきたして覚えてこなかった。
そんなクラスメイト達。
健闘を称えられ、この後藤田 聡郎(ごとうだ さとろう)に快方されてやっと思い出してきた所だ。
それは赤髪をおっ立たせ、比較的静かに男が笑う「じゃあやっとようこそだなぁ、ここは日留高校(ひどめこうこう)だぜっ――!」
「あぁうん、すまない……、後藤田、それに他の人も。全然何も覚えて来なかったわ、昨日はありがとうな……。アレ聞いてなかったらまだキレてたろうなって――」
「良いさ、ふふっ。でも入学初日からもう8日だろ~、全部全部が吹き飛んじまったよな~って……。でもまぁ、当然か、あの義臣 輪廻だもんな、あの姉ちゃんが悔しがってたわ~」
聞けばどうやらあの空から落ちてくる少女は、これの姉だったらしい。
なかなか健闘したと言っておいてと頼む、ただ前からのRide Onッは危ないとも……。
「でもでも良いさっ……、なぁ良いだろ、なぁ戸北よぉっ。また探してどこかに入れよ、ココからまた始まるぞ壮太! むしろアレ忘れる為には部活しかねぇわっ、はっはっ!」
元気なくうなずく、確かにそうしか言えないだろうか。
約束だったし、それにやはりこの学校、聞けばなかなか本気な部活だ、楽しそうに思えたのは間違いなかったんだ。
「あぁでも、俺は室外系は無理かなぁ……って。こういっちゃなんだけど、運動系はずっと苦手だったからぁ」
「じゃあ俺はさ、オマエに案外声楽部がお勧めなんだよ。アレ五月蠅いけど迫力あるからさぁっ、どうだぁっ!」
そこはやっぱり引く手あまただったが、ヤリたいかまでは決められない。
結局は帰宅する事を選び続けた人間だ、もっと様子を見たいので練り歩く校内。それに付き合ってくれる後藤田。
ついでに教えてもらわないといけない事が山ほどあって。そして2個か3個に決めたならばもう、明日には決める運びになっていた。
雰囲気は上々だったその部活にワクワクするが、ただ、そうして見やるその紙は――。
「――」
ソレは不動に見えた。悲しくて悲しくてたまらなかった。
悔しくて涙が出そうで、そして理不尽に思え……。
「やっぱり俺、ごめん……――後藤田ごめん……――」
走って行く、1人。
あぁ~……――「そうなぁ……。アレは特大過ぎる地雷なんだよ。だってあんなに飛びぬけて可愛くなきゃって……。あんな笑顔じゃなきゃ、あんな声でなければ、そして義臣 輪廻じゃなけりゃ、な……」
「ねぇ……、あの人はもう、諦めれたかな――?」
「どうでしょうね……? 確かめに行ってみたら良いんじゃないの、自分で」
「でも昔っから諦めは悪いかもだよぉ~。まるっと全然別の方法探してるかもぉ~……」
――。
―――――――――。
「ねぇ良かったの……、本当に。待ってたんじゃ、でもこれじゃきっと……」
なんとなく今は、その匂いが懐かしい。
部活の無理やりな勧誘に揉まれていた、あの時が幸せだったとさえ思える。
「もう、俺はいない匂いになっちゃったんだよな――」
あの紙さえ気にならなければもっとずっと高校デビューは順調だったんだ。それは触れるべきではなかった宝石だった、心を吸い取る光だったんだと――。
「あぁ……、やっぱり来たのね……。まぁ、それも私達の仕事ですか、良いんですけどぉ……」ふぅ………。
眼鏡をかけ直して本から目を移し、その少女が薄笑いかけてくる。
見れば十分な美少女だ、今だからこそそう思う。
それは確か灯火と、そしてマイチ先輩と。
「でもどうせ昨日言った通りです……。あの子の心の中にはもうアナタはいないわ、影も形もなくなったのよ。疑問はおありでしょうけどね……、それは今までずっとそうなんですよ」
その噂くらいは多々、聞いたハズよ。
「うん……、そう。あのリンちゃんはもういないよ~……。まるっとね、終わったの。今はアイドリングの時期だから彼氏くんもいらない」
「じゃあ……、それでもあの……。俺はもう一度立候補する事って、できるのかな。記憶がないならむしろ大丈夫なんだよね、機会があって勇気があればってさ……っ」
「あー……、えぇ。言い渡す事があるのだわ。それはもう一度と言って、リハビリだとか、あの子に無理に思い出させようとするのは一切無しですから。そういうのするなら直ぐに追い出しますよ――」
「いや……、でも俺は単純に……、もう一度彼女の専属の友達になればって……。それで何度でもなればもしかしたらって―――。なぁ、もし俺が毎回まっさらな俺なら、あの子は悲しまないかな。人の集まりは悪いんだろうっ……だったら――」
「どうでしょう………? 私はあの子のナカに、そんな勇気があるとは思えないけど。戸北 壮太―――」
真っ直ぐ見つめる視線に、彼は……。
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