第2話

「あれ……、あぁ――?」



 白の無の空間、だけどその中でも1つだけの確実な存在感は笑う「君……誰? ここ……入れたんだ……? でも大変だねぇ……ふぁぁ~ぁ」

まぁでもココは大丈夫なのね……。


「え……――エぇッ――!? なんで俺……、こんな所へ、ココどこ、多分どっかの空き教室だよねぇっ?あぁあの………、でも君も部活かな?何かの部活なの? なんか演出で……―」


「うぅん。サークルでも同好会でもね、部活でもない。誰も来ない場所――」


 そこは全然何もない、殺風景な場所、不思議な感覚だ、全く音がしない―――――。


 足元をノックした、何も響かない。堅いのも怪しくなるほど。ただただそこでは寂し気に笑う彼女だけだ、時間軸は完全にさっきから地続きだが、それでも……。


「あぁ……、出たいの? じゃあバイバイ。必要だと思ったのに――」

でもなんでも良いから会いに来てね……。もうそれだけだよ……。


 がらら……。あっさり開く扉。


――――――――――――。


「ねぇ、それだけだよ、嫌?」



 本当に良く分からないのだ、一瞬でテレポートしている、そして何よりその少女の異変。


 白い無の空間で彼女は……。


「だってきっと必要になる……。あの五月蠅い子達も変えられるよ、必要になると思ったんだけど……」「え? あぁ……、まだ助けて……くれるの? そっか、でもなんで君は僕を……」


――。


―――――。


「だって……、だって思った以上にね、心がおかしかったよ……――。中学の頃はすっごく悲しかったから、もう一人でって……、そう思ったのになんで」


ここはでもとてもとても1人っきりで、1人きり過ぎたんだ――


「お願い……っ、お願いなの……っ。私今必死なの、なんでか分からないけど急いでるの。なんとか人が来ないとこ確保したよ、あとは私をね……それを引き受ける何かが欲しいよ、姫プです……――」

良い感じで地味な姫プできるスクールライフが欲しいんですっ

「心から姫プしたい――五月蠅くないのが良い。そんなに変わってないよ? ちょっとカチンと来ると永遠とハッシュタグをつけさせる程度だよ、大丈夫だから! つぶやいてもつぶやいても鬼滅は面白くないってタグづけするだけだからァア!」



ソレえらいこっちゃでェ……すんごい湧きそうよ。

色々と。あとはだからちょうど良い度量と良識ある男子と2人が良いっ、2人っきりになりたいのぉおおっ!


あぁ~……んー~……、ごめん――――。いや、もうええんちゃうかな。


 ダ女神様とも遭遇し。俺はそうとしか言えない気がした、これを男として放置するのは本当に偲びない。


 外へ出て、その不思議部屋の少女を脇にしっかり抱いて、迫って来る圧力に再度その身を投げ出すのだ。


 あぁその子、人消すよね~~、なんて言ってる皆に向け――。


「分かった、分かったよ……、もう平和になろ。とりあえずどこかに入るから……、ね? 色々と相談にも名義貸しにも乗るから」


『よっっしゃあああアアっ!』「分かってくれたかっ、良い心意気だぁっ! じゃあ再会を祝してオンモールしようぜぇえっ!」「あぁそうだよなっ、この為なんだよなぁっ! はぁ……はぁ……それであの地域振興の塔だ……その為に作られた塔だよ、人数分だけ登れる塔に行こうぜぇ!」


「あぁ……この為にがんばったんだよなァっ……。1人増える毎に一層がアンロックされんだ、コレでもしかしたらお宝フィーバー部屋に入れるかもなぁあっ!?」ヒャッハー♥


 黒幕はお前か……。


 そびえ立つ白亜の塔。そんな貸し出しやってんのかよ、いや、本気でなんなの、こんな田舎じゃなかったよねぇ……?


 モールが全てを変えてしまった、そういう事なんだろうか、全てはオンモールの為に仕組まれた戦いだったんだ。


 あそこ……私でも唯一ハッキングできないの、気をつけて――。う、うん……。

 隣で300分の1モールフィギュアを持ったロリ教師(捕食者)が、俺に微笑んでいる。


「あぁ~~……、いやぁ、うん――。どこにしようかなぁ」


 完全に帰宅部予定だったが、まぁ無理だ。


 それはヤル気になってしまったという事だ、適度で適切な青春への道、それを感謝すべき事案か。色々と話し合う。名前を聞いたり、知らない人に熱心な言葉を聞かされて。


 ただそこでふと、僅かな風が――。


 ぱさっ……――。「あっ? あぁ、えぇーと……? 大女優のマネージャーになれる券、絶賛販売中!! ……? えと、コレは……?」


映像部って一応あるけど――。


―――――――――――――――――。


 その居並ぶ文字に、どっかの握手券アイドルのような姿が眼に浮かぶ。手を上げるのを待っていて。


「あぁいやッ……、それは止めといた方が良いぞ、うん―――――」それはかなり深刻そうな顔をするのだ、全員が何かこう……、鬼気迫る。


「あれだけは唯一の不参加だからな」「でもさぁ……、この高校最大のセンシティブにさ……、アレに出会っとくのって必要じゃない?いや……本当に」「それは確かに良心だよな……、うん、分かるぜ、分かる――。さすがになぁ……――」


 うーーーーー……ん。



 そして全員がうなずく。


 無言で歩き出す、獲物であるハズの戸北 壮太に背を向けて。その背中は語るのだ。


 なんかもう同調圧力に染まり切っていた彼は、自然とその現場へと歩き出すしかなかった。多分なんか仕掛けられてるんだろうなって――。



「まぁ……うん。でも全部悪い気はしなかったしな~、ふふふ。ちょっと奇抜で強引な勧誘だったけど、全部面白かったし、俺は受け入れられそうだし……―」


 軽い気持ちで開けるその扉、映像部の入り口。



 だがそれが、取り返しのつかない、人生を懸けた扉であるとはこの時――。

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