第2章 知らされる過去-2
(前回までのあらすじ:マフヌの村に暮らす少女・リルには、五年前、両親とこの村にやって来るまでの記憶がない。星エルフの女性レイリスが訪ねてきた晩、父・ルトから驚きの真実が告げられる。リルは、太陽の秘宝の国・ルミニーの王女だったのだ。両親はリルに、今まで隠していた過去を語り始めた。)
その昔、太陽の秘宝の国ルミニー国と月の秘宝の国グルミニー国のはざまの小さな村に、ひとりの少年が暮らしていた。
母親は彼が小さいうちに病気で亡くなり、父親もいなかったので、
叔父夫婦は少年を大切に扱おうとした。にも関わらず、彼の心は貧しく、意地のわるい嘘つきだった。
そのため、はじめはその
少年が七つになった頃、叔父夫婦に双子のおんなのこが生まれた。
ふたりは可愛らしく、幼いながらに賢く思いやりがあったため村じゅうの人々から愛されるようになり、一方で、少年はますます
心のさびしさは増していく。悪意のあるものへ、つけ入る
大きくなるにつれて少年は悪に惹かれるようになり、とうとう闇の世界グルモグと交わるところまで
グルモグは、エオファイラの永遠の敵である、闇と苦痛と憎しみの世界だ。
エオファイラにある十二の秘宝。これこそが、グルモグの権力者たちの欲しているもの。
エオファイラじゅうを満たしている強い魔法の力は十二の秘宝によるものである。
グルモグはエオファイラよりも小さな世界だが、秘宝の力をつかい、ほかの全ての世界を支配することを
エオファイラはそれを
そのグルモグの権力者のひとりが、少年に目をつけた。彼の心の闇を利用して、エオファイラに、呪いの種をまかせたのだ。
それは、少年が十五歳、いとこの双子たちが八つの年のことだった。
この日のできごとは、のちに、大人になった双子たちが記憶を頼りに書き記している。
よく晴れた夏の日だった。双子の少女たちは、家の裏庭で花を摘んで遊んでいた。そこへ、あの少年が歩み寄って来た。
「やあ、いい天気だね」
少年の声は、いつになく優しかった。
「今日は、君たちに贈りものがあるんだ」
双子は、嬉しくなって顔を見合わせた。ずっと仲良くなりたかった、 “いとこのお兄ちゃん”からのプレゼント。少年のいつもと違う態度を、怪しいだなんてこれっぽっちも疑わなかった。
「ほら、ごらん」
少年が差し出したのは、
とても美しいものだった。
少女たちは歓声をあげて、それを受け取った。
「気に入ってくれてうれしいよ。でもね、ただじゃあげられないものなんだ」
少年は笑みを浮かべた。
「君たちの五百年後の運命を、僕にくれないか?」
双子には、少年の言うことがよくわからなかった。
五百年後?そのころ、自分たちが生きているはずがない。なんでそんな、変なことを言うんだろう。
しかし、それ以上は深く考えずに「うん」と返事をしてしまった。すっかりひめゆりの美しさに魅了されていたのだ。
呪いは、かけられた本人が死んだあと、その
しばらくして、少年は村から姿を消した。双子は悲しみ、彼が残していった水晶のひめゆりを、いっそう大切にするようになった。
(続く)
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