20年越しの再会と心の灯
@otomenogisan
第1話 雨の夜に出会って
夏の終わり、季節外れの雨が降る夜だった。
友人に誘われた合コンに、僕はなんとなく気乗りしないまま参加していた。
3対3。店の照明は柔らかく、テーブルには料理とお酒が並んでいた。
その中に、ひときわ静かで、でもどこか気になる女性がいた。
彼女には彼氏がいると聞いていたけれど、友達に誘われて来ただけだという。
それでも、彼女の笑顔には少しだけ影が差していた。
食事が進み、カラオケに移動したころ、ふと気がつくと、彼女の姿がなかった。
トイレかな? そう思いながらも気になって外に出ると、ビルの隅で彼女がひとり、しゃがみ込んで泣いていた。
「……どうしたの?」
声はかけなかった。ただ隣に座り、雨に濡れた地面を見つめながら、彼女の涙が止まるのを待った。
どれくらい経っただろう。ようやく落ち着いた彼女は、少し笑って言った。
「……彼氏に振られちゃった」
本当は、もっと泣きたいほどつらいんだろうな。
でも彼女は、笑おうとしていた。
「なんかできることあったら言ってね」
その言葉を残して、僕は先に部屋に戻った。
数分後、赤く腫れた目の彼女も戻ってきた。みんなの歌を聞きながら、僕はただ彼女の隣に座り続けた。
それが、彼女との始まりだった。
⸻
合コンの数日後、幹事をしていたヒロミから「気になった子いないの?」と聞かれ、僕は迷わず「泣いてた子」と答えた。
彼女の名前はまだ知らなかった。でも、僕の中で何かが動き出していた。
連絡先を教えてもらい、電話をかけてみた。
ドキドキしながら、彼女の声を聞いた夜のことを、今でもはっきり覚えている。
それから、毎晩のように電話をした。
保育士をしていること、子どもが好きなこと、少し愚痴もこぼすようになって――僕はどんどん彼女に惹かれていった。
ある夜、2人で会うことになった。待ち合わせ場所は彼女の家の近くのコンビニ。
1秒1秒がやたら長く感じられる。緊張でコーヒーが喉を通らなかった。
やがて、彼女が「おー、ひさしぶりー」と笑顔でやってきた。
ドキドキを隠せなかったけれど、ただ隣に座って、たわいもない話をした。
彼女の家はすぐ近くだった。だから、帰る時間が近づいても、ずっとそのままでいたかった。
「もう帰ってきなさい」
彼女の携帯に届いた、母親からの電話。
「ごめんね、たのしかったね」
彼女は手を振って、振り返ることなく帰っていった。
その夜、彼女から「今日はありがとう、また会おうね」とメールが届いた。
僕はそのとき、自分の中で始まった恋に、ようやく気がついたのかもしれない。
⸻
それから週末になるたびに、彼女・ヒロミ・僕の3人で会うことが増えた。
公園でおにぎりを食べたり、バトミントンをしたり。日常のひとつひとつが輝いて見えた。
そんなある日、ヒロミから電話があった。
「ねぇ、彼女のこと好きでしょ?」
図星だった。恥ずかしくて言葉に詰まる僕に、ヒロミは言った。
「彼女も、あんたのこと好きだと思うよ」
その言葉が、僕の背中を押した。
でも、なぜか彼女と2人で会う約束をすると、「ヒロミも一緒に」になる。
それが何を意味していたのか、その時の僕はまだ気づいていなかった。
ある平日、久しぶりに2人だけで会うことになった。
待ち合わせは、あのコンビニ。
早く着いた僕に、彼女は「ドライブしよっか」と微笑んだ。
嬉しくて、心の中でガッツポーズをした。
でも、僕は彼女の住む隣の県の道を知らなかった。ナビもない。
そんな僕に、彼女は「道案内するね」と、優しく言ってくれた。
星の綺麗な夜。
僕はハンドルを握りながら、彼女の声を頼りに、少しずつ、彼女の世界へと足を踏み入れていった――
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