第16話 金髪美少女とテスト終わり

「うう~やっと終わったよぉ~」


「お疲れさん。手ごたえはどんな感じだ?」


「まあまあかな。80点は超えてて欲しい」


 五日間にわたって行われたテストが今さっき、ついに終わった。

 周りのクラスメイトの顔も晴れ晴れとしていてみんなこれからやってくる土日を心待ちにしているかのようだった。


「そういう瑠衣君はどうなの?」


「今回は結構頑張ったからそれなりにいい点は取れたんじゃないかな。まあ、テストが返ってくるまではわかんないけどさ」


「そんなこと言って。絶対かなりいい点数取ってるでしょ」


 呆れがちに愛夏にそう言われるけど、その指摘はあながち間違っていないかもしれない。

 今回のテストは膝枕がかかっているということもあってかなり本気で勉強した。

 いつもならある程度やって終わらしていたテスト勉強を今回に限ってはかなりやった。

 家に帰ってからもずっと勉強してたし、土日も愛夏と二人で勉強していた。

 正直、今回のテストでわからない問題は一つもなかったが、ここで絶対いい点を盗れると思って取れなかったらかなり悲惨なので言わないでおいた。


「そんなことよりも、せっかくテスト終わったんだし、帰りにどこか行くか?」


 今日のテストは二時間で終わったため、今はちょうどお昼時だ。

 愛夏とどこかに食べに行くのもいいだろうし、どこかに遊びに行ってもいい。

 とにかくテストが終わったこの解放感に身を委ねたい。


「だね! でも、今日はちょっと疲れちゃったかも。あはは~」


 見てみれば愛夏の目の下には深いクマがあった。

 きっと、昨日の夜は徹夜をしたんだろう。

 であるならば、アクティブな遊びはするわけにはいかないし、ゆっくりできることをしたほうがいいだろう。


「なら、普通に帰るか」


 明日から土日だし、遊びに行きたいなら土日に行けばいい。

 わざわざ無理する必要もないしな。


「え? 良いの?」


「無理して遊びに行くことないしな。愛夏、徹夜しただろ?」


「ぐ、ば、バレた?」


「クマが出来てるぞ。せっかく可愛い顔してるんだからあんまり徹夜とかしない方がいいと思うぞ」


 愛夏の頭にポンと撫でてから先に教室を出る。

 すぐに後ろから愛夏が走って追いかけてきた。


「瑠衣君……ああいうの、反則だから……」


 耳まで真っ赤にした愛夏は俺の背中を叩きながらそっぽを向く。

 やっぱり可愛い。


「ははっ、いつも愛夏にあんな感じに攻められてるからな。たまにはお返ししとかないと」


「むぅ~そんなお返しは求めてないよぉ~」


「そうかい。ほら、カバン貸してくれ」


「いつもありがとね瑠衣君!」


 ここ最近、帰るときはいつものように愛夏のカバンを持っている。

 愛夏に頼まれるからでもなく、普通に俺がやりたくてやっていることだが。

 こういう風に感謝されるとやっぱりうれしい。


 ◇


「今日も上がっていく?」


「いや、今日はやめとくよ。愛夏も疲れてるだろうし、たまにはゆっくりしなよ」


「それもそうだね。明日は一緒にどこかに行こ!」


「もちろん。それはスマホで話し合うか」


「だね! 送ってくれてありがとう瑠衣君!」


 いつものような太陽みたいな笑みで愛夏は手を振ってくれる。

 俺は愛夏に見送られながら自分の家に帰る。

 今日は二人とも仕事だから誰も家にいないと思っていたのだが……


「なんで家にいるの? 今日仕事じゃなかったっけ?」


「いや、今日は私の会社は休みよ? それよりおかえりなさい瑠衣」


「ただいま。母さん」


 家にいないと思っていた人物である母さんがリビングでくつろいでいた。

 最近は土日に家に居なかったから、こうして話すのも少し久しぶりな気がする。


「今日でテストは終わりだったかしら?」


「うん。やっと解放されたよ」


「今回は珍しく頑張ってたものね。何か理由でもあるの?」


「……別にそんなのは無いけど」


 嘘である。

 なんなら理由しかない。

 ぶら下げられたニンジン(愛夏の膝枕)につられて必死に勉強していただけである。

 まあ、そんな理由を母さんに説明できるわけないんだけどさ。


「絶対うそでしょ。まあ、言いたくないのなら深く詮索はしないけど。それよりも、最近穂乃果ちゃんとは違う子と遊びに行ったり一緒に居るみたいだけど、どんな子なの? 女の子? 好きなの?」


 目をキラキラ輝かせて俺に詰め寄ってくる母さんはとても生き生きしていた。

 どんなに歳をとっても恋バナが好きなのは変わらないらしい。


「女の子ではあるな。好きかどうかはノーコメントだ。って、なんでそんなに嬉しそうなんだ?」


「だって、瑠衣がやっと穂乃果ちゃん以外の女の子の話をしてくれたから」


「そうだったか?」


「そうよ。あなたは興味のある人に関しては話してくれたり、態度でわかるけど興味がない人にはとことん冷たいじゃない」


 母さんは呆れたようにそう言ってくる。

 俺としてはそんなことをしている自覚症状は無いんだけど、母さんがそういうのであればそうなんだろう。


「まあ、そうかもしれないけどさ。多分その子と明日遊びに行くと思う」


「じゃあ、うちに呼んだらいいじゃない! 瑠衣、その子の家に何度もお邪魔してるんでしょ?」


「それは、そうだが……」


「でしょ! じゃあ、決定! その子に連絡しなさい! 今すぐ!」


「えぇ」


 こうして土曜日の予定が母さんによって決められたのである。


 ◇


「そう言うわけで、明日は俺の家に来ないか? 迎えに行くからさ」


「良いの!? 行ってみたい!」


 どうやら、愛夏も一度は家に来たかったみたいで喜んですぐに了承してくれた。

 果たして、母さんと愛夏を合わせてもいいものなのか。

 悩ましいところではあるけど、決まってしまったものは仕方がないだろう。

 というか、どんどん外堀を埋められていっている気がする。

 でも、それを嬉しいと感じる俺も大概ではあるがな。


「じゃあ、明日の九時くらいに迎えに行くよ。昼も家で食べて行けばいいからさ」


「わかった! ありがとう」


 電話越しでも顔が想像できるくらいに元気な声で愛夏は返事をした。

 どうやら、浮かれているらしく普段よりもかなりテンションが高い。

 俺もまあまあに浮かれているわけだが。


「じゃあ、また明日な。楽しみにしてる」


「うん! 私もすっごく楽しみにしてるね!」


 こうして俺たちは明日に家で遊ぶ約束をした。

 母さんが何をするか不安ではあるけど、それ以上に愛夏と一緒に過ごせるのが楽しみで仕方なかった。

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