一時的な帰還
一時的な帰還
「ああ、お帰り、鼎、あれから丁度三〇年ぐらい。」
「…。」
「どうしたの鼎、出迎えたのが文(わた)香(し)だったことがご不満?」
「大いに不満だ。帰ってきて早々にお前の尊顔(そんがん)があるのかと思うと…みじめで…。」
「いっぺん鼎とは穏便に話をつけなくちゃならんな。」
「見つかったのか、男と子供さんは。」
「両方とも見つかっていない。」
「私が飛んだ土地はあっていたが時代が違っていたんだ。」
「まずどこの土地だったの?」
「中国だ。」
「へー、そこが不時着を最初に起こした場所?」
「…らしい…今回飛んだのはそれから約九〇〇年後の世界だった。」
「探している男も子供もいない。」
「モノリス見して。」
文香はモノリスを手に取って覗いた。
「あら、山が見える。それに山賊がいっぱい。で、時代は?
―北宋(ほくそう)末期(まっき)、ちょうど水滸伝(すいこでん)の頃だね?梁山泊(りょうざんぱく)登って来れた?」
「そこで何回か姐さんを殺した男の顔は見てきた。」
「え、なに?」
「何でもない。」
「それよりも行きたいのはそれからあと九〇〇年前の時代だ。」
「北宋(ほくそう)末期(まっき)から約九〇〇年前はおよそ、2~3世紀に当たる。」
「ジーザスが生まれてからおよそ二〇〇年から三〇〇年てとこだね。」
「日本はマジで倭と呼ばれている頃で邪馬台国が多分あって卑弥呼いたよ。」
「肝心の中国では国が三つに分かれてる頃だねぇ。」
続けて文香は言った。
「たぶん鼎が最初に不時着したのは恐らく三国志の頃の時代の中国だね。」
「―ほう―。」
「ねぇ、答えてくださるん? どんな男性でどれぐらい素敵な人だったのん?」
文香は鼎の神経を逆なでするように甘ったるく言葉を紡いだ。
「ああ、そうだな、赤い甲冑を着ていた…。」
「―ん? 赤い甲冑? 」
鼎は木刀で文香の顔を殴った。
「まて、暴力はやめよう、まじめに答えるから…木刀をしま…。」
鼎はさらに雷の効いた木刀を腰に叩きつけた。
「あのー殴っても最近のガチャみたいに私の鼻からは男も子供のドロップしないぞ。」
「鼻からお前のダブリを出してみろ、本気で殺してやろうかオカチメンコめ。」
文香はモノリスを鼎に返した。
「あの時代で中国、赤い甲冑を着た軍は魏軍(ぎぐん)ぐらいなもんだろう、例の甲冑の軍は徐州(じょしゅう)、小沛(しょうはい)、許(きょ)昌(しょう)をくまなく探せば絶対に会えるぞ、今度こそ良い旅を。」
「ありがとな、文香。」
鼎は再びモノリスを持って古代の中国へと旅立った。
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