第27話
そういうわけで、腹も、ある意味胸もくちくなった和彦たちは、しっぽりできる場所ーー、もとい、別の喫茶店へと移動した。
落ち着いた雰囲気のレトロな喫茶店で、和彦たちに不躾な目を向ける者もおらず、しっぽりーーではなくゆったりと時を過ごすのにとても良さそうだ。
和彦が奥の席に座り、その隣に麗花がーーこれで和彦は容易には逃げられないーー。そして向かいに萌花と立花が座った。
流石にあのパンケーキショップ、あの雰囲気の中は駄弁るのに適した空間とは言い難かった。
ここならば落ち着いて話が出来るだろう。
ただし、話の内容が落ち着いたものならば。
「もう、本当に和彦君は麗花ちゃんに躾けられちゃってるんだね〜」
と、楽しげにのほほんと言ったのは綿津見萌花である。
バブみを感じる女性&おぎゃりたい女性ナンバーワンの二冠を欲しいがままにする圧倒的ママである。
その母性の象徴が、否が応でも和彦の視線を惹きつける。
だが、ママとは言え、まだ高校生である彼女が躾を口にするのはまだ早いだろう。しかも、その対象は友人カップルだ。
「えっと……」
和彦はこんなときなんと答えて良いのか分からない。
もはや自他共に認めるほどに麗花の
だが、ママは柔和に微笑み、和彦をロックオンしているらしかった。
「麗花ちゃんがずっと想い続けてきた彼氏ってことで、興味があったんだ〜。どんな人なんだろう〜って。それで昼ごはんも一緒に食べてたけど〜、やっぱりそれだけじゃ足りないなって思ったから〜。立花ちゃんもそうだよね〜?」
「おう、うちの麗花を預けるんなら、ちゃんとした男じゃねぇとな! だけどむしろ麗花が預かってるみたいだけどな」
そう言って快活に笑う。
それ、正解。
そしてなんだか人質チックに聞こえるのも、まあ間違ってはいないのだ。
「それで、どうだったかしら? 私の彼氏は?」
と麗花が訊いた。
その机の下ではさりげなく和彦の手を握り、彼を勇気づけていた。ーーいや、むしろ逃げないようにしている、弄ぶ準備をしている、と言った方が正しいか?
「ん〜、そうだねぇ〜」と萌香は唇に指を当てた。ママの唇はつやつやぷるんとしていて、和彦はそこにもまた目を奪われた。
「私しか見えないように、唇を塞いでやろうかしら?」
「ごめんなさいっ!」
和彦の手は麗花にしっかりと握られていた。
「ふふふ〜、仲良しさんだ〜」と萌香は微笑んでから言うのである。「そうだね〜。才色兼備、文武両道、綺麗でプロポーションも抜群の完璧美少女、高嶺麗花ちゃんに釣り合うかっていうと、ちょっと〜」
ですよね〜。
と和彦は遠い目になる。
「でも〜、ちゃんと誠実ではあるし、頑張り屋さん〜。頑張って麗花ちゃんについていこうとしているし、麗花ちゃんのことを大切にして、何よりも麗花ちゃんが幸せそうにしているから〜、問題はないよ〜」
「…………」
「良かったわね、萌花のお墨付きをもらえたわ。あら? かず君照れてるのかしら?」
「うっせ」
「ふふ、可愛い」
麗花と和彦が釣り合わないことは事実である。
しかし、萌香は、麗花を大切にして、そのために頑張っている和彦だから良いと言ってくれた。
正直、勉強や運動の手応えはこれまでとは変わりがない。テストもまだであるし。だが、せめて麗花が幸せにいられるようにと、彼氏としては奮闘してきたつもりだった。
麗花が求めるのならば首筋だって唇だって乳首だって差し出したし、ハグだってなんどもしてきた。人目を憚らないあーんだって頑張った。
突然部屋の中にいたり布団の中にいたりすることも、下着姿だけではないキワドイ写真を送られることも、それのどこが良かったか、どのように使って何回イけたかなどの感想を求められても、和彦は彼女の求めに真摯に答えた。
答えさせられたの間違いかも知れないが。
その頑張りを萌香は認めてくれたのだ。
和彦は心が温かく、嬉しくなった。ーーイイハナシカナー?
もちろん、流石に和彦がナニを頑張ったのか、具体的には知られたくはないのである。
……いや、知らない、よな?
和彦は急激に背筋が寒くなった。
女子同士の会話は明け透けで、男子よりも生々しいのだと聞いたことがある。
しかし、流石にどんなプレイをしているかなど、言うはずがない……と、言い切れないのが男子としては辛いところである。
ちなみに和彦はまだ童貞だ。
どうしてこれでまだ童貞なのか!
麗花に考えがあるのかーー和彦ではなくーー、或いはその一線を越えて仕舞えば、麗花の自制が効かなくなるからなのか。
麗花に訊いてみなければ分からないことだろう。
閑話休題。
と、和彦が自分たちのことがどれだけ赤裸々に話されているのか、心配になっていれば、萌花は慈愛のこもった表情で和彦を見詰めていた。
まるで、慈母のような……。
流石は校内バブみのある女性&おぎゃりたい女性ナンバーワン。
だが、その表情はクラスメイト、しかも親友の彼氏に向ける表情としてはあまりにも間違ったものではなかろうか。
そう和彦が訝しんでいれば、当のママはその艶やかな唇で奏でだす。
「ああ、良いなぁ〜。麗花ちゃん。和彦君みたいな可愛い彼氏がいて〜。もしも私が気付いて、麗花ちゃんみたいな子がいなかったら、私が全力で甘やかして
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お待たせしました!
ちょっぴりだけストックも出来ましたので、数日は連続で更新いたします!
……また間に合わなくなればごめんなさい。
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