第25話

「あら、かず君、子供たちが遊んでいるわ。可愛いわね」


 と、麗花の切長の瞳は、遊ぶ子供たちを見つけていた。

 彼女の瞳が愉しげに細められる。


「子供は少なくとも三人は欲しいわね。良いわよね、返事はイエスかはいしか求めていないわ」

「待って⁉︎」

「待つのは良いけれど、答えは変わらないわ」

「あぁ、もう……」


 麗花に口では勝てる気がしない。

 いや、容姿でも成績でも身体能力でも勝てる気はしないけど。ーーぴえん。


 麗花にはまだ好きも結婚しようとも言ってはいない。

 それなのに子供を求められるなんて。

 これも一種のマタハラとは言えまいか。マタニティさせろハラスメント。


 だが、以前の和彦であればここで押されっぱなしだっただろうが、今の和彦は彼女への気持ちを自覚していた。


 ーー俺も変わらないとな。


 そう思った和彦は、麗花のお腹に手を回して抱きしめた。


「おっほ♡」


 この女、好きあらば痴女って台無しにしてきやがる。

 だが、和彦は負けはしないのだ。頑張れ和彦!


「……そうだな、れーちゃんの子だったら可愛いだろうな」


 自分で言って頬が熱くなる。

 だが、ダメージは麗花の方が大きかったらしいのだ。


「らめぇ、かずくぅん……♡」

「何言ってるんだよ、先に言い出したのはれーちゃんだろ」


 そう言って和彦はぎゅっと抱きしめてやる。


「あふぅっ♡」


 そして耳元に唇を当て、囁いてやるのである。


「いいぞ、いずれだけど、三人な。れーちゃんのここから、俺の子供を産ませてやる」


 ぎゅっ、ぎゅっ。


「あへぇっ、あほぉっ♡」


 麗花が和彦に教え込んだ、三回ギュッであった。三回目には阿呆になる。

 それを下腹部に喰らった麗花はたまったものではないのである。


「排卵すりゅぅう……」

「ねえ、止めよ? お前が痴女だってことは知ってるけど、公共の場で排卵とか言うの止めよ? 完璧美少女の女子高生だよね?」


 麗花の痴態に和彦の牡モードが解除された。


「うぅっ、格好良いかず君もっとぉ……。私を、アヘらせてぇ……」

「止めろぉっ、なんか子供たちもこっち見てるから終了だっ!」

「やぁあん……」


 教育に悪いなんてもんじゃあないのである。


「ふぅっ、ふぅっ、かず君に公共の場で弄ばれてしまったわ……」

「ねぇ、これ悪いの俺? 俺なのか?」

「そうよ、私の心を奪ったあなたが悪いのよ」

「…………」


 なんか男として言い返せないワードを使われた気がする。

 女って狡いと、高校生ながらに和彦は理解した。


 和彦がゲンナリしていると、麗花は和彦椅子から隣に移動した。そして肩に頭を預けてきた。薫風が二人を包み、優しく撫でてゆく。


「私たちもああして遊んでいたわね」

「そうだな」

「それがこうして付き合えて、私は幸せよ」


 そう言って麗花は和彦に頬を擦り寄せる。


 可愛い彼女の可愛い仕草の筈だが、これまでの痴女っぷりを考えると、むしろ新鮮な驚きの方が勝った。

 だが、今言っておくべきだろう。


「そうだな、俺も……。俺もれーちゃんのことは好きだよ」

「え……?」


 麗花が目を丸くしてこちらを見てきた。

 その顔はとてもーー。


「可愛いな」

「ッ、かず君、そういうところは狡いと思うわ」

「じゃあお互い様だな」


 と和彦は笑う。


「そう、ね……」と麗花は再び和彦の肩に頭を預けてくる。「でも、かず君が私のことをちゃんと好きになってくれるのは、それにちゃんと好きって言ってくれるのももっと後だと思ってた」

「そんなに俺って頼りない?」

「ええ」

「…………」


 即答で実感が籠っていた。


「でも」と麗花は頬を擦り付ける。「そういうところもかず君らしくて好き」

「そうか……、じゃあ、俺もちゃんとれーちゃんが好きって言わないとだめだな。好きだよ、れーちゃん」

「んくぅっ、ちょっと、トイレでもいいから一緒にイかないかしら?」

「最初はそこって止めようなぁ!」


 今、普通に良い感じだったと思ったのに。

 どうやら彼女はそれを許してくれないらしい。

 ーーいや、和彦は気がついていなかったが、麗花の耳は赤くなっていたから、もしかすると照れ隠しの類だったかも知れない。


「まったく……」

「ふふ……」


 だが、この空間は心地良い。

 和彦はしばらく麗花と一緒に、穏やかな時を過ごした。



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レビューをいただきました!

たいへん励みなります! ありがとうございます!


言うならば、ここまでが一章でしょうか。

ぶっちゃけかなり行き当たりばったりのアドリブで書いている本作品ですがーーまだまだお付き合いいただければ幸いです!(ピンクと黒の渦巻きを見せながら)

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