「警察なのに毎日アウトです」

稲佐オサム

第1話TikTok職質大炎上事件

朝8時、渋谷スクランブル交差点。


新米警官・雨宮レイナは、今日も緊張の面持ちで交番に出勤した。


理由はひとつ──。


「おーっす!今日も職質ついでにバズりに行くぞォ!」


そう、今日も先輩の猿田猛が制服のままリングライトを担いで交差点に立っていたからだ。


「ちょ、猿田先輩!?それ、何してるんですか!?」

「え、TikTok撮影。最近、職質しながらダンスするシリーズが再生伸びててさ〜!」


その瞬間、彼は真正面から歩いてきた金髪の若者に向かって、


「お兄さん、ちょっといいかな?…そのファッション、最高ッ!ハイ、カメラ見て!3・2・1──職質ダンスッ!」


そう叫ぶと、なぜかサンバのリズムで腰を振り出した。


「ヤバい警官いる!ってバズるだろ?しかも職質って社会性高いし!」


「いや逆です!炎上の未来しか見えません!!」


案の定、その日の午後には「渋谷交番で職質ダンス」動画がトレンド入り。

署長は頭を抱え、動画には10万件のいいねと5000件の苦情コメントが殺到した。


「猿田!貴様は何を考えてるんだ!」

「署長、考えてやってるから質(しつ)があるんです!職質だけに!」


「もう帰れェェッ!!」


夕方、雨宮は疲れ果てながら、猿田の背中を見てつぶやいた。


「この人、もしかして…令和最大の公害なのかもしれない……」


しかし翌日。

交番の前に、動画を見てやってきた外国人観光客の列ができていた。


「イズディス、ダンスポリスマン?」

「オー!クレイジー、ジャパン!」


署長はさらに頭を抱えた。


「こいつ、人気出ちゃったよ……」



🚨エピローグ:


その夜、猿田のアカウント名【@パトポリ猛】は、渋谷限定の地域情報ランキング1位になっていた。



次回予告:


第2話「交番にAI猫カフェ爆誕」

警察が猫を飼って何が悪い!?

迷子猫の保護から始まった、小さな事件(と大きな騒動)。

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