能力者が跋扈する世界で、無能力者の私がこの世を統べる王になる

@rikizo

第1話

「速報です。先日行われた能力検定で中学3年生という少年史上最年少でスペシャルワン認定を受けるという偉業を成し遂げました。日本では5人目となり、名前は井上光君。能力は空気の‥‥ポチッ




 「ちっ。出発前にいらんものを見てしまった。スペシャルワンがな、なんだってんだ。こういうや、奴らは自分の能力棚に上げて弱者に力を振りかざすカスって相場が決まってるんだわ。ふひひぃ、そういう俺を無能と蔑んだゴミどもに認めさせるんだ!ほんとの無能はどっちかってなあ!ふひひひひぃぃ!」


 そういって彼は全裸のまま丈の余った全身コートを羽織り、足早に東京タワーへ向かって行った深夜の2時。

 

〜〜〜



「ついに来たこの時が‥俺の存在を知らしめるために手始めに東京タワーの爆破だ。毎日ちまちま爆弾を仕込んだ成果が報われる時が来た。今夜革命が起きる。貴様ら罪人への裁きの鉄槌だ! 能力発動!!!」


   ‥‥シーン‥‥


(あれ、発動しない?なぜだ!?ここまで万全なチェックを行いミスはなかったはずだ!)


「能力発動ってこれのこと?」

 

筒状の爆弾をぼとぼと落としながら突如現れた少年は言った。


「これを着火させたかったみたいだけど、先に水で濡らしといたから無理だと思うよ。ってなにその格好!気持ち悪りぃぃ」


舌を出しながら不快な表情をする少年にに困惑する。



「な、なんだお前どっから来たんだ!なぜ俺のやろうとしたことをしっているぅぅぅ!!」


「最初に爆弾を仕込んでいた時から知ってたよ。暗くて分かんなかったけど、そんな気持ち悪い格好してるとは思わなかったなぁ」



(俺の計画をめちゃくちゃしやがってぇぇ、絶対に殺す!)



「のこのこ俺の前にでてきたことを後悔させてやる!しねぇぇ!!」


そういって内側のコートから爆弾を取り出し、少年に向かって投げつけた。


(お、俺に喧嘩売るからいけないんだ。計画は狂ったが、人殺しも手始めとしては悪くない。少し戸惑ってしまったが、いずれ行うことなんだ!迷うな!)


爆弾が徐々に発光しだす。


「これが俺の全力だぁぁぁ能力発動ォォ!!」


ギュイィィンギュイィィィィィ

ジュッ


彼がキャッチした爆弾は、赤ん坊が突然泣き止むように急激に発光が消え去って行った。


(え、なんの音?火消えたん?) 


「あー今の最高火力?なんか、ごめん。」


(腐っても俺は2級だぞ!?なんだこいつ、ただもんじゃない!?)


「説明難しいんだけど俺さ、ちょっとだけ空気操れるんだよね。」


頭をかきながらバツが悪そうに彼は言う。


「まあ、いい暇つぶしにもなったし、礼を言うよおっさん。刑務所でも腐らず頑張ってね。」


そういい、露出狂の視界から消えたと思ったのも束の間、ゴンッという音とともに意識を失った。



「スペシャルワンねえ、これからは行動も制限されるだろうし、遊べるのも今の内かな。」



パトカーの音が聞こえると同時にその少年は空のどこかへ飛び去って行った。
















  

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