第13話  魔の咆哮、正義の剣

魔術治安局に包囲されたマティアス。人数にして、およそ五十名。


??「観念しろ、マティアス・クロウ!」


淡灰色の短髪に、鋭い茶色の瞳。浅黒い肌の精悍な中年の男が、黒いローブを纏って前に出た。制服越しにも鍛え抜かれた体躯がわかる。


中年男「観念しろ、マティアス・クロウ! 魔術治安局巡査長、ダリル・ティアスが貴様を捕らえる!!」


その言葉に、マティアスの感情が爆ぜた。


マティアス「貴様らァァァァァ!!!!我が数百年に及ぶ悲願の時を……貴様らごときに邪魔されてたまるかァァァ!!!!皆殺しにしてくれようぞッッ!!!!」


その瞬間マティアスは黒い影達を召喚した。


黒い影達は呪詛を唱えようとした瞬間


ダリル「くっ………コルヴィエルか!! 全員耳を塞げ!!!」


それは“コルヴィエル”──闇の魔術師によって生み出された、呪詛を糧に生きる魔物。

その声を聞けば、肉体は麻痺し、最悪、魂すら呪い殺される。


ダリルが叫ぶも、わずかに遅かった。指示を聞きそびれた数人の隊員は、血を吐きながら床に倒れた。


その一瞬の隙を、マティアスは逃さなかった。


マティアス「■■■▲▲▲▲〇……………?…」


マティアスは詠唱し、スキュリドと呼ばれる魔物達を召喚した。


スキュリドは、虫のような黒い外骨格に覆われた頭部と、異様に発達した筋肉を併せ持つ異形の巨体。皮膚のあちこちから黒い体液が滴り、見る者の恐怖を刺激する。


スキュリドは一撃で、魔術結界を破壊するほどの力を有する。


スキュリド達が腕を振り下ろしただけで、展開していた結界が砕け散り、三人の隊員が吹き飛ばされた。骨が折れる音と共に、壁に叩きつけられた彼らは動かなくなった。


ダリル「くっ……… 結界で耳を防護しろ!!」


防護結界が耳を覆い、呪詛の言霊が届かなくなる。


ダリル「コルヴィエルを殺して、戦況を立て直せ!!」


結界で耳を塞いでいるため、指示は思念で伝えられた。



ダリルの判断は的確だった。耳に結界をはり、呪詛の効果は無くなったとはいえ、五感の一つが封じ込まれていては分が悪い、何よりコルヴィエルは呪詛特化型で肉弾戦は弱く容易倒せる為だ。


ダリルは杖を抜いた。その瞬間、コルヴィエルは後方に飛び退き、間合いを取ろうとする。


ダリル「肉体強化」


そう唱えた瞬間、ダリルが巨漢とは思えないスピードで一気にコルヴィエルの目の前まで、間合いを詰めた。

その瞬間、杖から青白い剣の形をした光が現れた。コルヴィエルは一刀両断され、濁った叫びを上げた。

「──グギィィィィ……ァァ……」

崩れ落ちるその身体は、黒い煙となって跡形もなく消えていった。


ダリルの使った“光の武器”は、魔力を杖に纏わせて作る攻撃魔術。形状を自在に変えられるため、状況に応じた戦闘が可能だ。


隊員「ダリル巡査長に続け!!」


隊員達が後ろから青白い魔力弾を放つが、コルヴィエル達は呪詛の言葉を放ち、魔力弾の軌道を変える。


ダリル「コルヴィエルに魔力弾は効かん!間合いを詰めて、叩き斬れッ!!」



ダリルは先陣を切りながら思念を隊員達に指揮を執る。


ダリルは次々とコルヴィエルを討ち取り、その動きに迷いはなかった。


スキュリド達がその背後に迫りくる。


隊員「巡査長!!!」


後ろの気配に気づき、一閃を交える。


ダリルは距離を取りながら、魔力弾で応戦する。しかしスキュリド達は軽やかに身をかわし──弾丸をものともしない。



ダリル「くっ……」


ダリル(……動きが素早いだけじゃない。筋力だけでなく、反応速度も強化されているか……)


ダリルが歯を食いしめ分が悪い顔をする。


隊員「巡査長!!お待たせしました!!」


隊員達が加勢に加わる。


ダリル「ふっ…… てめーら死ぬなよ!!」


ダリルは不敵に笑いながら隊員達に伝える


集団で、スキュリド達に挑む、ダリルがあえて隙を見せそこを他の隊員が切り倒す。

魔術弾を打ち込み、スキュリドの動きを限定した所に他の隊員が切り込む、隊員たちは正に共同体のような動きだった。


マティアス(……こやつら、思ったより連携が取れているな。ならば……奴らの連携そのものを崩せばいい)


マティアス「ならば次は!!」


マティアスは隊員達が魔物と交戦してる風景を眺めながら次の一手を考えていた。


マティアス「■■■▲▲▲▲〇……………?!?!〇▲…」


魔法陣が軋むような音を立てながら軋み、黒煙とともに現れたのは──頭から無数の触手を垂らし、全身から腐敗した瘴気を放つ、醜悪な老婆だった。


その赤い目がこちらを見た瞬間、空気が凍りついたような錯覚に陥る。


マティアス「ゆけ……!!!!」


マティアスは激昂しながら命令する。


魔物がダリル達の元へと向かった。


ダリルが冷や汗をかく

 

隊員「はーーーー!!!」


隊員が老婆の魔物に向かって走る。


ダリル「行くなーーーー!!!」


“それ”の名は、グライアス。

赤い眼を持つ、魔力を凍らせる“魔眼の魔物”。隊員は叫びすら上げられぬまま──スキュリドの腕が貫いた。


ダリル「……っ!」




ダリル「あいつの目を見るな!!」


周りの隊員達に、思念を送る。だが、目も耳も塞がれたこの状況でどう戦えというのか、


グライアスを見ないよう隊員達は戦おうとするも。視界が限定されてしまうことにより、次々とスキュリドによって殺されていく。



隊員「あっ……あっ…… ダリル巡査長」


血を吐きながら助けを懇願する隊員達


歯を食いしばるダリル


その時だった。

黒いボロボロのウェディングドレスに身を包み、白い髪をなびかせる、蒼い瞳のホムンクルスの女が現れた。






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