第3話 憎悪と温もりの食卓


アリシアとフィリアはその日の仕事を終え、帰路につこうとしていた。

もう日も沈み初め、街は夜を迎えようとしていた。


アリシア「結局、術式解析を行ったが、原因は分からずか……」

 

アリシアは残念そうに呟く


フィリア「マスター、そんなに、気を落とさないでください。」


フィリアは宥めるように伝える。


アリシア「別にそこまで気を落としているわけではないさ、むしろ新しい可能性を感じられて楽しみだ。」


アリシアは新しい謎にぶち当たり、自然と笑みがこぼれていた。


アリシア「そうだ、今日は、久しぶりに外食でもしたいな、何処か食べに行くか」


フィリア「かしこまりました。マスターどこにされますか?」


アリシア「そうだな。あそこにするか」


アリシアが指を差した場所は意外なことに、高級料理店ではなく、大衆向けの洋食屋だった。


フィリア「よろしいのですか?あのような場所で」


フィリアは疑問を投げかける。


アリシア「構わんさ。いつも、変に気を遣わなくてはいけないような店に行くより、ハメを外せそうな店のほうがのんびりできる。」


アリシアは嬉々として語る。


フィリアが店の受付に話すと、席を案内された。

店内には仕事帰りの下級魔術師や中級魔術師やカップルの笑い声が混ざり合い、心地よい雑踏感を生み出していた。


案内された席は、少し小綺麗な一般席だった。


アリシア「久々だな、こういった大衆店は(笑)」


フィリア「私は初めて来ました。」


アリシア「ま〜いつも行くのは堅苦しい会食の店が多かったからな。たまには良いだろう。」


アリシアはハンバーグドリアを注文した。


アリシア「フィリア、お前も何か食べろ」


フィリア「私はホムンクルスなので、大丈夫ですよ」


フィリアは苦笑いで答える。ホムンクルスに取って食事を取ればある程度の魔力量回復は望めるが食事はそこまで大した意味はなさない。


アリシア「一人で食う飯はつまらん。時間を共に共有するものがいてこそ食事は楽しいんだよ。」


アリシアは笑顔を浮かべながら伝えた。


フィリア「では、主と同じ物を一つお願いします。」


フィリアは店員に頼む。


しばらくして、ハンバーグドリアが届いた。

チーズの焼き加減が絶妙で、その匂い嗅ぐだけで腹が減るような美味しそうな匂いだ。


アリシア「ん〜、美味い。フィリア、どうだ味は?」


アリシアは楽しそうに、笑った。


フィリア「はい、非常に美味しいです。」


フィリアに味覚を感じ取る感情はない、その場の空気に合わせて、主が望むであろう答えを返す。


アリシア「そうか、良かった。」


アリシアは友人と談笑するように答える。


食事を食べ終わり、ゆっくりしていると、フィリアが質問をした。


フィリア「何故マスターは、魔力を持たないものを嫌うのですか?」


アリシア「お前がそんな質問をするなんて珍しいな。」


アリシアが苦笑いしながら答える。


アリシア「ま〜いいさ。軽く答えるよ。

私は周囲からは、天才魔術師だの、色々と言われているが、私がここまで来るのに血の滲むような努力を重ねてきた。


私はクレイン家という名家で生まれてきて、幼い頃から英才教育を受けてきた。


逃げることすら許されなかった……


知っての通り大きな魔術を使う時には何らかの代償と痛みを伴う、幼い頃からその痛みに耐へ努力し、この国を発展させる研究を死ぬ気でしてきた。


嫉妬からの嫌がらせだの色々あったな。


そんなことも知らない連中はやれ天才だ、やれ神童だ、持って生まれたものが違うと、私を妬んだ。


私がどれだけのものを犠牲にしてここにいるのか、知りもせずにだ……


だから私は、何の苦痛も背負わずに、ただ手を伸ばせば与えられると信じている奴らが、私は心底、嫌いなんだ……!!」


アリシアの顔から今までの怒りと苦労が滲み出ているようであった。


アリシア「長く喋りすぎたな。すまないな……

こんなに長く喋ったのはお前が始めてだ。」


フィリアには、主の苦痛も怒りも理解できない。ただ、その瞳に映る孤独だけは、何故か胸を締め付けた。


アリシア「突拍子もない質問だったな。お前に人格でも芽生え始めたか?

私に反抗するな?。」


アリシアが軽く笑いしながらフィリアに伝える。


フィリア「それはありえません。ストレスを抱えているようでしたので、少しでも吐き出せたなら、私は嬉しいです。」


フィリアは笑いながら答える。


この日の二人はこのまま屋敷に戻り、感情の温もりを分かち合いながら、夜の闇と共に眠りについた。


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