2日目

 翌朝。同じ場所に水溜りができていた。

 なんとなく量が増えた気がする。

 昨日と比べると、ほんの少し濁って見えた。ちょっと酸っぱい匂いもある。

 天井の染みは、少し離れた場所にもうひとつ浮かび上がっていた。


 それらをスマホで撮って証拠を残しつつ、回していなかった洗濯機から昨日のタオルを引っ張り出して、水を拭き取る。生乾きだったけど、どうにか吸い取れた。

 いちど洗面台で搾ってから、再び洗濯機に戻した。


 なんだか、体がだるい。会う約束をしていた地元の女友達に断りの電話を入れる。小中学校まで同じで高校は別だったが、成人式で再会したとき連絡先を交換していた。


『なんか達也たつやくん、声めっちゃ疲れてる』

「ちょっとだるくて。引っ越しで疲れたのかも」

『そういえば、あの新しいマンションに入ったんだっけ? すごいね』

「いや全然。……あ、なんなら部屋に来る?」

『……ああ、うん……まあそのうちね……』


 地元に帰ると伝えたときはテンション高めに誘ってきたくせに、なんなんだ。

 愚痴りつつ、ネトフリで海外ドラマの新シーズンが配信されたのを思い出し、だらだらとそれを見て過ごした。

 食欲もあまりなく、食事は買い置きのカップラーメンで済ませた。


 夜。水溜りの位置が映るようにスマホを立てかけ、動画撮影を開始する。

 撮影のため蛍光灯は光量を落とすだけでベッドに入る。また洗濯機を回し忘れたけど、明日にしよう。

 体のだるさもあって、すぐ眠りについた。



 ぽたん


 ぽた


 ぴたん



 ──水音は、昨日よりも近くで聞こえた。


 目が覚める。時計を見るとまだ四時前だ。

 そして吐き気がした。他人が出た直後のトイレみたいな異臭が漂っていた。

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